あらすじ
私は内気な女子です――無言でそう訴えながら新しい教室へ入っていく。早く同じような風貌の「大人しい」友だちを見つけなくては。小学五年の律(りつ)は目立たないことで居場所を守ってきた。しかしクラス替えで一緒になったのは友人もいず協調性もない「浮いた」存在の塚本瀬里奈。彼女が臆病な律を変えていく。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
今まで読んだ村田沙耶香さんの作品の中ではマイルド。終わり方も爽やか。
クラス替えのイヤなドキドキ感、スクールカーストのリアル感、女3人の歪さ。小学生のころ特有の苦しさを思い出した。自分自身、小学生時代の人間関係が一番苦労したから特に抉られた。
役割を与えられているときは堂々としていられるというところはわかる。何者でもない自分自身として話すのはすごく難しい。仕事とかで何をしなきゃとかが明確だと楽よね。
「瀬里奈がそんな性格で許されてるのは、綺麗だからだよ。」
こんな風に考えてしまう気持ちわかっちゃう。
でも、人の目を気にしながら、人畜無害として過ごすのも悪くはないと思う。みんなが思うがまま好きに生きてたら、世の中めちゃくちゃだろうし。人に迷惑かけない生き方をして他人にバカにされる謂れはないよな。
Posted by ブクログ
【くるみ割り人形を読みたくなる本】
くるみ割り人形につながっていて面白かった
律が瀬里奈を例えたクルミ割り
律が瀬里奈に読んだくるみ割り人形の本
瀬里奈がなりきっていたマリー
律を動物に例えるとマウス
最初は奇妙に思っていた相手が、大学生になってからも親しい友達でいるってすごい
Posted by ブクログ
上手く周囲が溶け込めるが故に臆病なマウスとして悩む律と、物語の世界のマリーになることでしか溶け込めない瀬里奈。
瀬里奈は言わずもがな、律も腫れもの扱いされている瀬里奈を走って追いかけたりと、意外と大胆で突拍子もないところがある気がしました。正反対のようでいて、実は似ている部分を2人は持っている。だからこそ、お互いがお互いの「息つぎ」できる居場所になったのだろうなと思います。
一度大きくぶつかったからこそ、強固になった2人の関係。物語終盤の本当に気が合う、親しい間柄の人といる時の特別であたたかで穏やかな空気感が素敵でした。
ふと、小学生の一時、仲のよかったあの子はどうしたかなと懐かしくなりました。まだSNSもそこまで普及してなかったから、今は本当に繋がりがないあの子。繋がろうと思えばSNSで探せそうだけれど、変わった姿を見たい気持ちとともに、変わらないままのあの子と会いたくて、おぼろげな輪郭を記憶の中でなぞりました。
村田沙耶香さんの作品が好きなのですが、他作品と比較して本作は初めての人におすすめしやすいと感じました!
Posted by ブクログ
地味でスクールカーストの中の下あたりにいて、三人組の中でもあぶれそうになっている律。クラスにいる異様な雰囲気の女子、瀬里奈。
瀬里奈はすぐ泣いてどこかに行ってしまうし、泣いて誰かに助けられてもお礼のひとつも言わないので、いつも仲間はずれにされている。
律が瀬里奈が泣いてどこに行くのかを突き止めれば、話のネタになるだろうと跡をつけたことがきっかけで、瀬里奈に思わぬ変化をもたらし、やがて律自身も……というお話。
瀬里奈が「マリー」になってからは、ホラーみたいな話になるのかと思ったが、全体的には女子の友情物語だったので安心した。
イケてない女子の複雑な心理描写がとてもリアル。私はアホだったのでスクールカースト的なものをさほど感じず生きていたが、イケてるグループとそうでもないグループなどは歴然と存在していたなあと思い出す。もちろんイケてない方にいた。
自分の殻を破ってちょっといつもと違うことをしてみると、それまで交流のなかった人との縁ができたり、世界が拡がったりしていくのがいいなあ、青春だなあ、などと思った。
Posted by ブクログ
2025年1冊目
読みやすかった。周りと摩擦することをアイデンティティーにしてしまう人もいれば、人と合わせることでとにかく摩擦を避ける人もいる。
マウスと呼ばれる主人公にすごく思い当たる節があって、もっと周りを気にせず飄々と生きられたらと思った。
特に真面目でいると馬鹿にされるからわざとアホそうだったり、怒られない程度の真面目と不真面目の間を狙って周りに溶け込もうとしていた中学生時代を思い出して歯痒くなった。不真面目さを敢えて取り入れているうちに本当の自分がどれなのかわからなくなってしまったかもしれない。
Posted by ブクログ
女の子をリアルに描いた作品でした。
律の周りの目が気になって、どうしようもない気持ちがとても共感できました。
瀬里奈と律が巡り合うことができて良かったなと思いました。
Posted by ブクログ
クラス替えで臆病な背の高い爬虫類顔のすぐ泣く女の子が目に付いたが、クラスのみんなはその女の子を嫌ってる。ボールが近くを通ったりプリントが落ちたり些細なことで泣いてしまう女の子、そんな女の子が教室から出てったところをおいかけてみた主人公、1度目はトイレに入ったと頃で見失ったが2度目に掃除用具入れのドアを開けたら排水機に座った例の女の子がいた。セリナは脳内で灰色の部屋を作りその中にいる時がいち番楽しいというが主人公はそんなものはつまらないもっと楽しい世界はある、と「くるみ割り人形」を読み上げたら絵本の中のマリー様(せりなの解釈により温和で優しいマリーではなく凛として厳しつよいマリー)の様になった。
元々背も高く容姿が優れていたせりなは気丈に振る舞えるようになった事でクラスのカースト1位になり、主人公は自分と同じく臆病だったセリナが快進劇を遂げることに自分を重ね満足していた。
そうするうちに遊ばなくなったが9年後に同窓会で再開(主人公は通り掛かっただけ)一段と美しくなり、いかにも一軍という容姿になっていたせりなに劣等感を感じていた主人公。毎日ゼリーで食事を済ませてるセリナに対し自分の働いてる店に食べに来てといい、そこからまた交流が始まる。何度か会ううちにせりなにくるみ割り人形を読まずに外に出る訓練を遂げた。
小学校の頃思い出して懐かしくなれた