あらすじ
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
ワイヤ駆動のヒューマノイドが、実はウマにそっくりだった! 自走するお掃除ロボットは「生きた化石」に酷似していた! ガラスを割らずに掴むロボットハンドが似てしまった、人体の意外な一部とは? 技術の粋を詰め込んだ先端ロボットが、なぜか生き物の体構造に近づいていく――。工学の視点から初めて見えてくる「生体」の精巧な力学構造を解き明かし、生き物の限界を超えるロボット機構学の挑戦を語る。(ブルーバックス・2012年4月刊)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ロボットに携わるエンジニアには非常に興味深い内容。似せることから始まったロボット研究。その構造は力学的と幾何学の制約に支配され、結局は生物と同じような機構をとらざるを得ない。しかし・・・。生物、つまり神がつくったものを真似るのではなく、それを超えることができることに気付く。例えばモータの存在。生物がもっていない(バクテリアの鞭毛モータがあるが)回転機構は、例えばジェットエンジンの様に生物の力を超えるものができる。生物は38億年の歴史の中で進化し現在の機構に変化してきたが、四肢系と六肢系に分かれた以降はマイナーチェンジである。材料も細胞分裂という現地生産が基本のため、不安定な材料を使わざるを得ない。馬の骨は速く走るために強度を高めた結果、再生ができない。生物がロボット化した場合のわかりやすい例であろう。一方でロボットは、フルモデルチェンジが可能な点で、生物と大きく異なるのである。我々は神の作った生物から謙虚に学ばせて頂く一方で、ロボットの独自の方向性を考えていく必要があるだろう。結果的に生物と同じ進化に行きつくのかもしれないが・・。部分的には神を超えたロボットがこの世にどのように存在していくのか。生物はカンブリア紀(5億4200万年~5億3000万年前)の間に突如多様化した。科学技術はひとつの発見や発明がきっかけで大きく展開するもの。ロボット工学も一挙にカンブリア紀に突入するかもしれない。将来どのようなロボットとの社会が待っているのか楽しみでなりません。
Posted by ブクログ
科学者が一生懸命知恵を絞って考えたロボットの構造が、実は既に生物に備わっていたという例が元文系の私にも分かりやすい言葉で書かれてて面白く読めました。
Posted by ブクログ
神様が作ったロボットである生物と、人間の設計者が作ったロボットの
類似点、相違点をまとめている。ドラえもんの手のような機械など、コンプライアンスの高い機械はワクワクする。ロボットについて学べると同時に人体の仕組みも学べ、そちらにも興味がわいてくる。
Posted by ブクログ
著名なロボット工学者の鈴森康一先生の著書。鈴森さんの研究は25年以上前に一度学会で聞いて大変面白いものだと思い、その後はたまに論文を読む程度だったが、現在私が進めている競走馬のことにも触れていて興味深い。発想を転換する、なぜそのようなメカニズムになっているのか?の根本的な理由を考える、ということにおいてとてもためになった、
Posted by ブクログ
切り口がよく、非常に理解しやすい内容でよかった。専門外の人でもすんなりと頭に入ると思う。ロボットのメカニックな視点ではなく、生物との対比で話がずっとすすむという説明は今までに見聞したことがなく、より入り込めたのかもしれない。ご愛嬌文も若干あり、はずしている?かもしれないものの、2時間程度で読めて、しかもさわりを味わえる本としてお薦めしたい。
骨が圧電アクチュエータ的であるということは知らなかった・・・。
Posted by ブクログ
ロボットと生物がなぜどう似ているのか、力学的、幾何学的に簡潔に解説されている。工学的技術的な解説も多く含まれるが、生物の形や動作は日常の知識や体感でわかるので、その辺りの分野に詳しくなくても読みやすい。特に、似ていない点(なぜ生物には車輪構造がないのか等)に関しては、類似点に比べ話題になりにくい点でもあり、新鮮で興味深かった。脱線するが、J・P・ホーガンの「内なる宇宙」を読み返してみたくなった。
Posted by ブクログ
生き物に似てしまうロボット
力学と幾何学の制約
力学・・・サイズと強度(大きさが増えると断面積は2乗倍、重量は3乗倍)、歩く時の重心(支持多角形の内側に重心を納める動き)
幾何学・・・関節の自由度、人間の関節の冗長度
腕の先端を決めるのに3次元+先端の向きを決めるのに3次元でつごう6次元がマジックナンバー。人間は1次元多いので腕の先端の位置を変えずに肘を動かしたり出来る。
筋肉がモーターで腱がワイヤー
ロボットに真似させたい生き物の特徴
筋肉・・・出力高い、やわらかい動き ロボットは電磁モーターか空力が多い。
微細構造・・・構造色とか、水を撥ねたり
やわらかい動き、コンプライアンス
コンプライアンスがないせいでロボットは中腰のまま立てる。人間は筋肉が疲れてしまう。
筋肉は増速機を使っている(逆梃子)。バックドライブによる微調整⇔ロボットは減速機のギアで電磁モーターの回転からトルクを高める。
冗長な二関節筋、しかしそのおかげでキャッチボールが出来る
MEMSや自己組織化で段々と模倣が可能になってきた
それでも違う生き物とロボット
金属やプラスチック・・・生物は現地生産方式なので使えない。ロボットは高熱や圧をかけて材料を加工できる。
車輪・・・末端部への栄養補給が。。。
Posted by ブクログ
生体模倣についてロボット分野の視点からまとめた本.生物の例を挙げて比較しているが,「どうしても似てしまう」という帰結へは,そこまで説得力はない.
Posted by ブクログ
宇宙戦艦ヤマトの世代の私にとってガンダムシリーズになどにみられるヒト型ロボットはなぜか胡散臭く感じられたことがあった。今はそれほど思わないが、かつて戦艦や戦闘機などの兵器は人間とは別の形状であるべきであると考えていたのである。それは人間のようなやわな存在と宇宙での戦闘という関係が、たとえファンタジーであったとしても結びつかないからだった。
しかし、ある時からその考えが変わってきた。人間が自分の思っていることを直接に実行するためのインターフェイスはやはり自分の身体の延長としての道具ではないかと考えるようになったのである。自在に動かせる鋼鉄の腕や脚があれば、転換するのに時間がかかる戦艦や戦車よりいいに決まっている。たとえば、あの事故を起こした原発の中に直接入り、修理ができるロボットができるとしたら、ヒト型以外には考えられない。
本書はそんな私の妄想に、直接に届くロボット工学の話である。研究者が開発するロボットは生物の模倣をしようとしなくても自然にそれに似た要素をもってしまうという事例がさまざまな写真や図とともに分かりやすく述べられている。進化の過程で生物たちが勝ち取ってきた身体の仕組みがいかに合理的なものであるのかを証明することになる。
ただし、本書の末尾にはロボット工学が生物の進化に追いつき、やがてはそれを超えるものになるという展望を示している。あくまでも楽観的な将来像は技術者の言としてふさわしいものだ。
ロボットの技術はおそらくこの後も日進月歩だろうが、それを操る人間の知性はそれを上回ることができるのだろうか。ここでまた私の妄想のスイッチが入るのである。