あらすじ
職場の同僚と女の子のかわいさについて語り、グラビア誌の「永遠のセクシー女優名鑑」に見入ってしまう実加。美術大学時代の友人たちの行く末を思いつつ、自宅で催した女の子限定カフェなど、今ここに一緒にいることの奇跡のような時間をみずみずしく描いた表題作をはじめ、著者の世界が凝縮された作品集。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
中編程度の長さがある表題作と2作の短編「六十の半分」「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」を収録。
「主題歌」
「寝ても覚めても」や「フルタイムライフ」などと設定が似ている。いつもの柴崎友香らしさ全開。
実加中心の三人称かと思って読むと、ときどき視点が揺らぎ、別の人物の心の中が語られたりする。意図的なのかどうなのか分からないが不思議な感覚である。
女子を見て可愛がる女子たちが何人も出てくる。確かにそういう感覚ってありそう。逆に男子が同じように思うことはあまりなさそう。なぜだろうか。
主題歌というタイトルは何だろうか。
友人の結婚式で歌われた歌が、内容は会に合っていないが、歌っている本人は切実で、聞いている皆も良いと思っている。新婦も感動している。この歌がここで歌われたことは消えず、まるで主題歌のように皆の記憶に残っていく、ということだろうか。
「六十の半分」
30歳の登場人物たちが、親の年齢の半分だと思い、中学卒業時の倍だと思う。
自分も、街行く高校生を見てはちょうど倍になってしまったなと感慨にふけったことがあった。40代までは何かの半分だなとギリギリ思っていられるけど50になったとたんに急にそうでなくなる感覚がある。
「ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド」
色を見つけきれなかった。
Posted by ブクログ
ぼんやりとただ文字を追うだけで読んでしまうタイプの人は、この作品が味気ないように感じるかもしれない。
事件は何も起こらないし、何よりオチがよくわからない。
日常のワンシーンを切り取ってきたような話だから、例えば登場人物たちの全く別の日を描いてもきっと成立してしまう。
だからこそ、面白いんだと思う。
私たちの生活は、期待するほどの事件は起こらない。朝起きて会社やら学校やら行って、ちょっと嫌なことがあればイライラして、面白いことがあれば笑って、美味しいものを食べて満たされて夜は眠り、週末は出かける。
作品は、まさにそんな感じ。
場面や人物は違うけど、まるで自分もそこにいるような錯覚。
で、この作者柴崎友香さんは、とにかく色づかいが綺麗。白い紙に綴られた黒い文字から、鮮やかな世界がもくもく舞ってくる。
主人公目線で話はすすむのだけど、時折別の人物視点に切り替わるのも巧い。あ、こんなふうに見えてるんだ、と。
本作は3編の話で出来ている。あたたかい関西弁ですすむ物語、やはり私は表題作の女の子限定カフェの場面が好き。
他愛ない会話の連続。
なんとなくぼわぼわ生きてる日常が、実は面白いしみどころあるんじゃん、と改めて気づかされる、きらきらした物語。
Posted by ブクログ
■主題歌
三人称。視点も固定せず。という柴崎友香にしては珍しい文体。
かわいい女の子談義が好きな主人公が、この人をあの人に紹介したいと思う機会が増える。
いっそのこと友人を呼んでその場で交流できるような女の子限定カフェを一夜限り開くことにする。
旅行や移動はないが、メディア的な存在になるといういつものテーマが、こういうかたちで実現されている。
なかなか悪くない。
ただしわからない人感じられない人には、ただの女子会に過ぎないだろうとも想像できる。
この人の魅力の理由をまだ把握しきれずにいる。
■六十の半分
三人称だが、視点人物が1で香奈→2で敬一→3で亜矢→4で再度敬一、と変則的。
それなりの図式がありそうだが、そこまで深追いできず。
■ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド
夜通しの飲み会のあと雑魚寝したメンバーが、翌日どうするか。