あらすじ
真岸悟は、ある事件を起こした志田智明への復讐を弟に約束していた。約束の日である五年後、復讐を促すメールが真岸に届く。志田の税理士事務所で働き始めた真岸は、最初は冷たい男だと思っていた志田が不器用なだけの優しい人間だと気づき、惹かれ始める。そんな真岸のもとには、復讐を忘れるなと念を押すようなメールが届き……。
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Posted by ブクログ
真岸悟は、今、ある作戦を決行しようとしていた。
それは――復讐だった。
昔、真岸の家の隣に住んでいた老人がいた。
老人は、どこからともなくごみを集めてきていて、家はごみ屋敷となっていた。
そこにおいてあったものに興味を惹かれた弟に付き添うように、真岸は、その老人の家に出入りするようになった。
ところがある日、その老人が轢かれて殺されてしまう。
ひき逃げだった――
酔ったまま路上で寝ていたところを轢かれた不幸な事故だったが、相手の男が三日経って出頭してきたこと。
その直後に週刊誌に男が酒を飲んでいた、と居酒屋の店員が証言したことから事件はワイドショー等で大きく取り上げられることになった。
当初は、老人に同情的な報道が相次いだけれど、老人の家がごみ屋敷だったこと、普段から泥酔状態で路上で寝ることを繰り返していて、近所でも迷惑に思われていたこと――が記事になると、今度はその老人ばかりが悪くかかれるようになった。
真岸は弟と一緒に裁判を傍聴し、判決が言い渡されるのを聞いた瞬間、男が笑ったのを見た気がした。
相手の男に下されたのは、執行猶予付きの判決。
そして真岸は、男に対する復讐を決意する。
という感じのストーリーでした。
実際は、そんな後ろ向きのドロドロした話ではなくて。
真岸は、たまたま相手の男・志田智明がアルバイトを募集している記事を見て、彼の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこむことに成功する。
けれど、そこにいたのは真岸が長い間思い描いていたような男ではなくて、うまく感情表現ができない不器用な男であり、今となっては何も持っていない男だと気がついて、真岸は逆に志田に惹かれ始める。
そんな話でした。
正直、賛否両論あるなー……と思うんですよ。
何かそれによって被害を受けたことのある人からしてみれば、到底受け入れられない話だろうし、かといってこれが「ダメ」っていうわけでもないなとは思います。
でも結局のところ、理想論だなー……と思うんですけど、その理想論が文学を作っているのも確かなので、それはそれでありだなー……とも思います。
悪い話ではなかったですが、テーマがテーマなだけによしあしです。