あらすじ
真岸悟は、ある事件を起こした志田智明への復讐を弟に約束していた。約束の日である五年後、復讐を促すメールが真岸に届く。志田の税理士事務所で働き始めた真岸は、最初は冷たい男だと思っていた志田が不器用なだけの優しい人間だと気づき、惹かれ始める。そんな真岸のもとには、復讐を忘れるなと念を押すようなメールが届き……。
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Posted by ブクログ
中盤からドキドキが止まらなかった。
どうなるの?どうなるの?と続きが気になって仕方なかった。
伏線の見事な回収手腕に、無駄のない話の進め方と、心理描写の繊細さに心を打たれましたね。
本当に素敵。素晴らしい。
被害者×加害者という立場の二人が、たどたどしく恋愛に至るまでの過程が、もう!!たまらんのですよ。
どこまでも高潔である受が、哀しくて、愛しくて、いじらしかった。
何度読んでも感動する。胸がいっぱいになります。
早くも2010年で1位なBLかな?ってくらい心を奪われました(笑)
Posted by ブクログ
BLとしてはどうかと思う表紙だったが、中身はちゃんとBL(当然)。大切な人を殺した相手に復讐するはずが、その人となりを知るに従い惹きつけられていく主人公。その複雑な心理を読ませる手腕はさすが砂原さん。ハッピーエンドに至るためのちょっとしたどんでん返しも、ちゃんと伏線が張ってあって物語としても楽しめた。雰囲気はあるが、表紙のダークさがつくづく惜しい。
Posted by ブクログ
シリアスサイドの砂原センセでした。
小さい頃兄弟で懐いていた近所の爺がひき逃げされて死んでしまった事件が、物語の発端です。
爺が死んだのは、兄弟の兄である真岸悟が大学生になっていた10年後のこと。その裁判で真岸は颯爽として身なりもいい税理士の志田を知り、彼に対して復讐することを胸に誓います。
そして5年後、志田の事務所にバイトとして入り込んだ真岸が目にしたのは、想像していたのとはまったく違う志田の実像で。
復讐劇というよりは、もっと独りよがりな思いから志田を懲らしめようとしている気がする真岸です。
その手段として、志田が大切にしている人なり物なりを奪ってしまおうと考えた真岸ですが、蓋を開けたら志田はそんなのはとっくの昔に失っていて、だったら自分が彼の「たいせつなもの」になって、それから全てをぶち壊してやろうと思いつき、実行することに。
この二人どうなるんだろう?と事の始まりを思い返すと非常に気を揉みました。
憎い相手が果たして愛する相手になりえるのか、愛されていると思っていた相手が実は自分を憎んでいたことを許容できるのか、現実的に考えるとシビアです。
しかしながら、そこは物語ならではの鮮やかな展開で感動できる決着のつけ方になっていて、うるっときてしまいました。
憎いけれど、いとしい。そういう真岸の気持ちがただ、いとしいだけに変化していく様がとても自然に受け入れることができました。
それは、やはり志田のキャラが大きく影響しているといえるでしょうね。彼は、とても砂原センセらしい受キャラだと思いました。
無垢で、自分に正直で、ひどく不器用に生きている男。そして、淋しい男です。
だからこそ、高潔であり続けていることができるのかもしれません。
ほんとに、真岸でなくても側にいてあげたくなるくらいさびしい生き方をしているんです…
真岸も、およそ他人である爺のために5年の間復讐しようなどと思い続けていたのがまた律儀だし、ちょっとありえないかな?とも思っちゃいましたが彼もまたそういう意味では高潔なのかもしれません。
弟の感覚の方が普通なんですよね。真岸も実はそのことに気付きながら、正義に忠実であろうと努力してあがいていたようで、痛かったです。
切なくなったけど、甘い結末に癒されました。エロ的には、ちょっとSな真岸の攻め方に萌え。エロの描き方がうまい作家さんです。
Posted by ブクログ
砂原さん初読みです。エピソードの表面を覆うものとその奥から読み取れるものとのギャップが面白くて引き込まれました。復讐劇の体裁を保ちながらも、自分の感情とのズレに気づく真岸自身が『復讐』という言葉に縛られていることに葛藤してます。弟が登場したあたりから真岸が開放されていきますが、その前後の彼の心情が切なかった。的外れな正義のヒーローであろうとすることの無意味さを真岸自身、心の底では気づいていたのでしょうね。志田も不器用ですが真岸もまた不器用な男です。
Posted by ブクログ
初めての砂原さんの本。無駄のない構成に思わず唸った。これは伏線だなと思ったものは綺麗に回収されてスッキリした。
素直に楽しめて、設定もキャラもとても好みで、とても萌えました!
Posted by ブクログ
真岸悟は、今、ある作戦を決行しようとしていた。
それは――復讐だった。
昔、真岸の家の隣に住んでいた老人がいた。
老人は、どこからともなくごみを集めてきていて、家はごみ屋敷となっていた。
そこにおいてあったものに興味を惹かれた弟に付き添うように、真岸は、その老人の家に出入りするようになった。
ところがある日、その老人が轢かれて殺されてしまう。
ひき逃げだった――
酔ったまま路上で寝ていたところを轢かれた不幸な事故だったが、相手の男が三日経って出頭してきたこと。
その直後に週刊誌に男が酒を飲んでいた、と居酒屋の店員が証言したことから事件はワイドショー等で大きく取り上げられることになった。
当初は、老人に同情的な報道が相次いだけれど、老人の家がごみ屋敷だったこと、普段から泥酔状態で路上で寝ることを繰り返していて、近所でも迷惑に思われていたこと――が記事になると、今度はその老人ばかりが悪くかかれるようになった。
真岸は弟と一緒に裁判を傍聴し、判決が言い渡されるのを聞いた瞬間、男が笑ったのを見た気がした。
相手の男に下されたのは、執行猶予付きの判決。
そして真岸は、男に対する復讐を決意する。
という感じのストーリーでした。
実際は、そんな後ろ向きのドロドロした話ではなくて。
真岸は、たまたま相手の男・志田智明がアルバイトを募集している記事を見て、彼の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこむことに成功する。
けれど、そこにいたのは真岸が長い間思い描いていたような男ではなくて、うまく感情表現ができない不器用な男であり、今となっては何も持っていない男だと気がついて、真岸は逆に志田に惹かれ始める。
そんな話でした。
正直、賛否両論あるなー……と思うんですよ。
何かそれによって被害を受けたことのある人からしてみれば、到底受け入れられない話だろうし、かといってこれが「ダメ」っていうわけでもないなとは思います。
でも結局のところ、理想論だなー……と思うんですけど、その理想論が文学を作っているのも確かなので、それはそれでありだなー……とも思います。
悪い話ではなかったですが、テーマがテーマなだけによしあしです。