あらすじ
幼い頃、毎年家族ぐるみでサマーキャンプをすごしていた7人。その思い出は輝かしい夏の大切な記憶だ。しかしキャンプは、ある年から突然中止になった。時は経ち、別々の人生を歩んでいた7人の中で一人が「あの集まり」の謎を探り始める。――このキャンプは何だったのか、なぜ突然なくなったのか。そして7人が再び会って衝撃の「真実」を知ったとき、彼らが選んださらなる道は――。すべての命に祝福を捧げる物語。
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Posted by ブクログ
7人それぞれが出生が原因で心に問題を抱えているが、紗有美に関しては特に描写がひどくて、読みながら心が痛くなってしまった。どことなく自分と重なる部分があるからだと思う。そんな紗有美ですら、最後は希望を持って終われてよかった。読んでるこっちも救われた。
設定は特殊ではあるけど、読むすべての人に、変わっていくこと・何か新しいことを始める勇気を与えてくれる物語だと思う。
↓以下覚え書き
「…きみがいなければ、きみの見る世界はなかった。それだけのこと。…だれの世界とくらべて欠落なんだ?大根なんか、どう食ったっていいんだよ」
「何かをはじめるって、今まで存在しなかった世界をひとつ作っちゃうくらい、すごいことだなって、思う。だってさ、もし私たちの両親が、子どもをほしいって思わなければ、子どもを作ろうって思わなければ、私たち、ここにいないんだよ。」
「でもさ、弾、何かをはじめることでできるのは、結果じゃなくて世界なの。いいことだけでできた世界も、悪いことだけでできた世界もないと思わない?」
「…どう生まれたかじゃなくて、どう生きるか、つまるところそれしかないんじゃないですか。…」
「結婚って、…閉じこもっていた自分の場所から、世界に続く扉をエイヤッて、二人で開けて行くことなのかなと思ったんです。…」
(もし私がいなければ、あの美しい歌も、すてきな式も、聴けなかったし見られなかった。私がいなければ存在しかなったことになります。だから、私、私がいてよかったとはじめて思った。)
Posted by ブクログ
第一章のキャンプが行われていた数年間からもうぐいぐい先が気になって、のめり込むように読み終わりました
読み終えてから、これは家族の話だなと思った
ひとりひとりがキャンプが行われていた背景や、事情を知ったあとの自分との折り合いのつけ方に性格を感じる
非配偶者間での人工授精、真実は言葉にすると短いけれど”父親が、ひいては父方の親族が誰も分からない”というのは自分のアイデンティティの根源を揺るがす事態だと思う
雄一郎が、父からの悪意によって思春期の大事な時期に嘘の告白をされ、それによって無気力な人生を歩んできたのがどうにもやりきれない悲しさがあった
エピローグで、皆前を向いて少しずつ歩いてるというのをさーちゃんが『おとうさん』に向けて書いた手紙のような形式で終わっているのもよかった
さーちゃんも少しずつ変わろうとしている最中なんだろうな
Posted by ブクログ
登場人物が多くて、誰が誰で何をしたか、途中こんがらがってしまったのと、結構重いテーマのお話だった。
幼少期のキャンプが、何の繋がりの集まりだったのか解き明かされていく過程が面白かった。
また、エピローグで、波留の歌の説明の部分、初めて行った海外(パリ)で、最初は、困ったことが起こらないようにホテルに閉じこもっていたけれど、困ったことが起きるかもしれなくても、助けてくれる人がいたり、わくわくすることに出会えるかもしれないと思えてホテルを飛び出すことができたというエピソードで、ネガティブ思考な紗有美が、「そこに居続けたら、明日も、世界も、ずっと怖いまんまだよ。怖くなくしてくれるすばらしいものに、会う機会がすらないんだよ」と言われた気がすると解釈しているところが、読んでて前向きになれて良かった。
Posted by ブクログ
子供の頃毎年集まっていた子たちが、ある時から集まらなくなり、それぞれの人生を歩み、大人になり、あの集まりはなんだったんだろう、、、というところから始まる話。
何の集まりだったのが気になってそれがオチかと思いきや、それはまだ半分。この時点で、やっぱ角田光代の小説は内容のメッセージ以前に読んでて気持ちいいなぁと思う。
その集まりがなんだったかがわかってからが後半。これに対するそれぞれの反応。その反応の背景にある親の子に対する気持ちや家庭環境、子を持つ親として身につまされる。
オチとなる「肝心なのは愛情」ていうのは、言ってみればありきたりなんだが、一冊かけてここに持って来られて大納得する感じ、これこそ小説の醍醐味、角田光代は外さない。
Posted by ブクログ
各々の女性の心情描写はさすが。ひとつの共通点をもつ子どもたちにも全く別の想いと生き方がある。難しい人工授精云々の話題に多くの主要キャラクターの人生を用いて議論する形。よくまとめたなー。すごい!
Posted by ブクログ
前半は出生の秘密についての流れだったからすごく前のめりに読めてたけれど、後半に行くに連れ面白かったけれどちょっと失速してしまった。なんでだろう。
ただ7人の子ども達の視点から書かれる自身の出生の秘密を知りたいという望みと知った後の葛藤は考えさせられるものだった気がします。
ふと思ったのが、男性を選別する時に、自分よりも良いように良いようにと考えることが否定的とまではいかないかもだけれど、あまり良いようにとらえらえていない印象だったが、子どものために考えるそれも立派な愛で間違いではないのではないかなと考えた。
Posted by ブクログ
長く積読していたけれどAIDを軸にした話だったとは…ミステリーというよりは社会問題、道徳的な問題の提起だったと感じる。不妊治療は今は一般的になってきているというが実際に抱えた人の心理はなかなか理解するには難しい。子供が欲しいという欲求は男女間でも異なる感情のような気がする。母親にとっての子供、父親にとっての子供とは?色々と考えさせられる話だった。
Posted by ブクログ
前半おもしろくよんでいたが、出生の秘密が分かってからは少し冷めた目で見てしまった。不妊治療は一般的だし、養子も海外では普通で、それを以って人性を覆されるほどアイデンティティが揺らぐものかな??
親子は産まれてからの歩んだ日々で絆が生まれるのでは??
血縁が全てという前提でのお話で、どうにも違和感がありました。
Posted by ブクログ
また精子提供の話かと思って途中で落胆した。
川上未映子さんの夏物語がそこまで好きではなかったのを思い出して微妙な気持ちに。
わたしは出自を知らないことへの不安に想像力があまり及ばないから、そこまで入り込めないだろうなあと
読んでみた結果、そこまで感情移入できなかったし最後不自然にポジティブだったのがもやもやするけど
不完全ながらもみんな今を生きてるんだよなあって
感じられる物語だった
読んでよかったと感じる
大人って自分よりずっと色んなことがわかっていて
成熟していて、頼れて、ってそんな風に考えていた子供時代。
今考えると両親も今の私と同じくらい
幼くて何にもわからなくて不安定な存在だったのかも
時間を重ねて振り返ってみた時に、まだまだ子供だったよなって思うような時期をこれから死ぬまで繰り返していくんだろうな
無敵な気持ちの女性
好きな表現です
さーちゃん、明るい気持ちになれて、よかった。
私はプラスがたくさん増えるよりもマイナスがない方が好きだなと思っているから、ハルのスピーチにはそこまで感動できなかったけど、さーちゃんが元気になってよかったよ。
自分がいなければ世界はないっていう
ずっと感じてきた思いと似通う内容もあり
同じ考え方でもこうも前向きになるんだと、少し驚き。
自分がいなければ世界はないから、世の中の不公平なことも不快なことも不平等なことも全てなくすために、その世界を媒介している自分自身を消したいっていう風に考えてしまうけど、
波留のように前向きに考えることもできるね。
あと、角田光代さんは、心の中で不満を抱えこみ不平を積み重ねながらも死ぬほど我慢している女性の心情を書くのが上手いなあと思いました。
いい子、を書くのがすごく上手い