あらすじ
かつてチャイルド・ポルノ疑惑を招いて消えた映画企画があった。それから30年、小説家の私は、その仲間と美しき国際派女優に再会。そして、ポオの詩篇に息づく永遠の少女アナベル・リイへの憧れを、再度の映画制作に託そうと決意するのだが。破天荒な目論見へ突き進む「おかしな老人」たちを描く、不敵なる大江版「ロリータ」。『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』改題。
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Posted by ブクログ
まず、表紙裏の解説には「老人たちの奮闘記」てなことが書いてあったけど、私は全くそうは感じなかった。
虐待にあった女性が傷へ向き合い、再生へ。
それが「ミヒャエル・コールハース計画」を通して語られている。
主人公は大江自身を思わせる作家であり(私は大江作品を初めて読んだのでいつもこうなのか定かではないが)どこまでが現実なのかどこからがフィクションなのかわからなくなる。その境界から、読み手はいつの間にかフィクションの世界に誘われていくのか。
でも私は全くフィクションのほうが入り込みやすいな。
こういう設定だと書き手は人物設定が簡単で済みそうな気がする。
きっと、木守は映画の完成を待たずに亡くなったのではないかな。
でも主人公の書いたシナリオですべてを見届けた心持ちで満足して逝ったのだろう。
色々と頓挫した計画だったが、最後はハッピーエンドだったに違いない、と私は思っている。