【感想・ネタバレ】死者の奢り・飼育のレビュー

あらすじ

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自分は、この人の作品の良さを確かに感じ取って読んでいたがそれが何なのかうまく説明することができない。
死者の奢りにみられる、死体処理というモチーフの独特さ、だけではなくて、そのモチーフと作者の叙述が示す直接文章には現れない抽象的なものがうまく読み取ることができなかった。その抽象的なものが根底を支えているから、この話はただ死体処理をする不思議な話、では終わらない。自分はそこを読み取る力が足りないと思う。ここが分かるようになればもっと面白いものが見えてくるに相違ない。
モチーフ、及び作中世界の描写がなまめかしい程に鮮明で一種の活力を帯びている。それが戦前の文学とは一線を画したような世界に見えた。
飼育における「僕」たちと異邦の者である黒人兵との関わりは、本能的な緊張感をはらんでいた。それは互いに言葉を交わすことができないから、意志疎通を言語によるものではなくもっと直感的なものに頼らざるを得なかったからなのか、もしくは「敵」と「味方」という立場の違いによるものなのかは分からないが、そこには義理や人情といった複雑な人間関係はなく、ただ純粋な「楽しみ」を中心とした人間関係が描かれていた点で衝撃だった。人と人との関係はこのようにも描けるものなのかと思った。

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2026年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者が書いた初期作品を収録した本。どの作品も人間の惨たらしさ、醜悪を生々しく書いており、日本人であろうと外国人であろうと容赦ない。残酷な描写ばかり続くが、一方で本作に収録された作品は戦争と密接な関係を持っており、戦争が招いた人間の凶悪的な様が嫌というほど読者に見せつける。

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2026年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現代の価値観と違い過ぎて物語の繊細さが理解できなかった。

水槽に沈む死体に対して湿度の高い激重感情を頭の中で炸裂させる文学青年、身体や足が動かなくなる病に侵され希望なく暮らす少年たちの元に現れた両足骨折の青年、病棟内を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して健常者の世界へ戻っていく無責任さ、黒人兵士を家畜のように世話をし交流するグロテスクさ、屈辱感に必死に耐えようとする人に付き纏う傍観者の行き過ぎた正義感と加害、外国人兵士の通訳をする日本人が日本人を見下す滑稽さ。

誰もが持っている陰湿な部分をチクチクされるような話

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2025年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「死者の屠り」
「物」になる過程と、「人」が産まれる前の描写が印象深い。死と生のあわいに位置することとなった語り手が、生者の幾つもを死側から向ける冷ややかな目線が妙に生々しくて、良かった。

「飼育」
捕虜となった黒人と、語り手含む少年少女との関係は、飼われる者と飼う者であった。それは事実としてあって、子供は彼をいかにも「人間的」な生き物として扱い、子供と同じ遊びに混ぜて快楽を得た。硬い表皮の外からやってきた自身らとは異なる生物は、子供の関心を総なめするには充分で、加えて飼育する立場にあるのだから、尚更だろう。人々は、捕虜という立場を忘れ、愛玩対象として黒人を扱うことに慣れてしまった。本来の彼は敵であって、今の飼育関係においてもそれは不変であるはずにも関わらず、語り手含む村民はそれが分からない。戦禍の真っ只中、人的な感情を表に置いてみせた黒人に、愛着が湧いたのか。戦争によってこの村にやってきた黒人は、戦争によって語り手との立場が逆転する。黒人が上に這い上がるというよりは、語り手が堕ちてくるというのが正しいかも知れないが、その事を語り手が分かっていなかったというのが大切だと思う。語り手は戦争によって、大人になり得る。自らを踏み躙った存在は、戦争によって生まれた大人であって、黒人であったからこそだろう。それでも、弟に対する愛や、友人に対する情は捨てて欲しく無いと思えるからこそ、好きな一篇だった。

自らの世界の外からやって来たものは、どんな形であれ自らに多大な影響を及ぼし、それは望んでいたものかはたまた逆か、何れにせよその過程を描いた本書は面白い。戸惑いや昂りが、とんでもない筆力で描かれるのだから、閉塞的な世界が好きな自分は熱中せざるを得ない。上記以外の作品なら、「人間の足」が印象深い。語り手に自らを預けることとなった故、私に似た視点が楽しめた。
本書のように、文学界の中でも屈指の名作を読んだ時、私でも楽しめるのだなとどこか安心する。読解力や、文学性の有無の判断力は全くといって無いような私でも、素晴らしい作品だと分かるからこそ、時代を超えて多くの人々に愛されるのだなと思う。

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2026年08月17日

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