あらすじ
ピカソ、モディリアニ、マチス…世界中の画家が集まる1920年代のパリ。その中心には日本人・藤田嗣治の姿があった。作品は喝采を浴び、時代の寵児となるフジタ。だが、日本での評価は異なっていた。世界と日本の間で、歴史の荒波の中で苦悩する巨匠の真実。第34回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
美術館で絵を見た。年譜に沿って進む展示された絵は、年を追うごとに表情が変わっていた。添えられた彼の紹介文には、いつも別の名の女性が居た。移り気な画家なのだろうか。フランスで若かりし時を過ごしたかと思えば、メキシコやアメリカや中国を見る。面白そうな人生だ。そう感じて知りたくなり、手に取った本だった。
読み終えて感じたのは、彼は人生を通して芸術に真摯だったということ。それ故の変化であり、大胆に見える行動であり、いで立ちであった。彼を知ることができてよかった。それだけで嬉しいと思ってしまった。わたしがまだ、彼のエコール・ド・パリを過ごした年齢ほどであるからだろうか。
彼が見た日本と、フランス、そして世界は、絵を通してであったが、それがまごうことなき世界そのものであった。この本を通じて垣間みることができ、貴重な体験をしたように思う。
Posted by ブクログ
国立近代美術館での絵を見るために備えた本。フランスでの成功と日本での低い評価、戦中は戦争画に協力し、戦後は戦争協力を理由に日本を追われ、再度渡仏した画家の生涯。戦争画の是非は別にして、誤解を受けることが多かった藤田について、藤田の未亡人も含め、丁寧に取材されています。
Posted by ブクログ
芸術や音楽分野とは「良い」と評価されれば良い物となり、「否」と評価されれば悪い物となるのはいつの時代になっても変わらず、時代と共に日常がひんやりとしている時期には人々の心が真っ黒に焼けこげていくのが、かの有名な画家たちからも伺え、誰もが時代の荒波に強制的に巻き込まれていったのだろうと思うと、良くも悪くも環境は心の内に変化をもたらす材料になり得るのであろう。
彼の生涯の断片を読み終わると、非常に孤独が嫌いでありプライドが人一倍あるが、それをひた隠しにしたくて仕方がなく人に優しくし、静かに自身の思う心の安寧を求めて、戦争に翻弄された人間の生き様のように見え、時折鬱蒼とさせるような面白い本であった。