【感想・ネタバレ】創るセンス 工作の思考のレビュー

あらすじ

かつての日本では、多くの少年が何らかの工作をしていた。しかし、技術の発展で社会が便利になり、手を汚して実際にものを作るという習慣は衰退し、既製品を選んだり、コンピュータの画面上で作業することが主になった。このような変化の過程で失われた、大切なものがある。それは、ものを作ったことのない人には、想像さえつかないものかもしれない。「ものを作る体験」でしか学べない創造の領域、視覚的な思考、培われるセンスとは何か。長年、工作を続けている人気作家が、自らの経験を踏まえつつ論じていく。【目次】まえがき/1章 工作少年の時代/2章 最近感じる若者の技術離れ/3章 技術者に要求されるセンス/4章 もの作りのセンスを育てるには/5章 創作のセンスが産み出す価値/あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「何が問題の本質なのか」をつかむことが大切
・珍しく?森先生が危機感を持っているように見える。アナログからデジタルへの転換によって生じたギャップが、技術の神髄や技術の核心的「センス」の伝承を阻み、「何が問題の本質なのか」をつかみ損ねた現場で「どうして上手くいかないのか」という問題が起こっているのだ。「考える工作」のプロセスでしか生まれない「もの作りのセンス」が図面通りに作らされるという労働によって、失われたのだ。工作という行為と共に失われたのは「人間の凄さ」である。「人間の凄さ」は、周囲の人に影響を与え、組織の文化や卓越した技術集団をつくるのだ。

・私は、森先生と同世代なので、工作マニアにこそなりませんでしたが、絵を描いたり、接着剤の必要なプラモデルを作ることを楽しみながら育ちました。その中で経験したことは、確かに、モノの成り立ちを知るためのヒントだったり、木材や金属、プラスチックの性質だったりしました。カンナのかけにくい木、錆びにくい金属、接着剤が効かないプラスチック…そうした経験が智恵に繋がる?

・まえがきにの要旨の一つは、「そもそも技術の神髄、核心的“センス”は、文章で説明できないものである。ただしかし、技術を“技道”にせず、数字や言葉に置き換え、マニュアル化することで、教え、伝えることができるものにすることが“工学”“テクノロジィ”の姿勢である。」ということだと……

・私の仕事は、お客様から寄せられる苦情に対応することなのですが、森先生は「トラブル発生は規定内」という項で、「経験ある技術者の解決方法は、上手く行かない動作を何度も繰り返し観察することから始まる」と書いています。当り前のことですが、トラブルを解決するためには、ます原因を確かめなければなりません。そして、観察を地道に繰り返すことが、トラブルを未然に防ぐための技術に繋がるのだと思います。

・工作(手作り)は、中々上手く行かなくて、嫌になってしまうことが多かったのですが、森先生の話を聞いているうちに「上手く行かないからこそ楽しい」というぐらいの感覚がないと「智恵も技もつかないのかもしれない」と思ってしまいました。最初からパーフェクトを目指さずに、少しずつレベルアップしていこうとする姿勢が大切なのかもしれませんね。何度も試作を重ねて本番に挑む東山魁夷画伯の仕事を思い出しました。

・森先生は、イラストには自信がある、と仰っていますが、工作も、イラストも、毎日少しずつでも作ったり、描いたりし続ければ、徐々に客観的にも見られるものになるはずです。また、どちらも、自分で手を動かす前に、既にあるものを観察する力が求められるのではないかと思います。

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2020年05月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

\(^o^)/わーい、工作の本だー。

◆学んだこと
〇「幼さ」という能力ってなに?
好奇心というものは、育てる必要がないと僕は個人的に考えている。なにか自分でできることはないか、と探しているのが子供のデフォルト(基本指定)なのだ。小さいときほど、子供は好奇心旺盛である。それが、成長するほど抑制される。周囲から「これは駄目」「そんなこと考えるな」と遮断される。目の前に面白そうなもの、美味しそうなものがつぎつぎに現れて、「こちらを見なさい」「これがやるべきものだ」というふうに育てられる。好奇心というのは、教育すればするほど失われるものといえる。だから、もし好奇心を育てたいのなら、教育をやめるべきだ。教育という行為自体が、「アンチ好奇心」的な操作なのである。教育者はここに気づくべきだ、と僕は思う。(P147)

・・・ぼくも、そうおもう!

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2011年10月20日

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