あらすじ
大叔父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。天涯孤独になった勇介は、過去を彷徨う大切な人の魂を救うため、危険な旅路に出る。パートナーは碧い瞳の不思議な学芸員枇杷。「命綱」は堅くつないだ手。この手が離れれば二度と現代には戻れない。過酷な旅が今、始まる。新感覚ミステリー長編。(講談社文庫)
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中世魔女狩りの恐ろしさ。
感情移入しやすい描写や幻想的な雰囲気、そして恐ろしさ。他の初野先生作品を読んだ時も感じたものですが、恐ろしさは今回が一番でした。
中世の魔女狩りの、あまりに理不尽で残虐な事実・・・。そんな過酷な場所に大切な人の魂が迷い込んでしまったらと思うと血の気が引きます。
知識を武器に過去の時代で戦うというのはよくある話ですが、こんなに苦労するタイムスリップはあまり多くない気がします。信じられない程の苦労をしたのに上手くいかないことの方が多く、気軽に時間旅行なんて行きたくなくなっちゃいます(><)
枇杷と勇介がとても優しく、かつ勇気もあるので「主人公のエゴ・保身を見せつけられる」という類のストレスはありません。ですが自らを省みず人を助けようとする結果、傷ついていく姿にはハラハラしました。それでも、枇杷はいつもきちんと考えて行動する知恵を持っており、勇介は他にない特技を持っているため、「きっと大丈夫」と思わせてくれる頼もしさもありました。
最後の枇杷と勇介のやりとりが良かったです。子供たちが大喜びする姿が目に浮かびます(^^)
Posted by ブクログ
面白い。一気読み。
初野晴さんの作品では「水の時計」を読んだけど、これも脳死をテーマに描いた作品。初野作品では人を一途に思う気持ちをとても強く感じる。そしてそれをストレートに表現する青春ラブストーリー要素も沢山ある。
それに所々涙が出そうなシーンがある。感情移入しやすい自分としては涙ぐみながら、鼻をすすりながら読んだ。
それにしても、脳死というテーマをこのようなファンタジーにしてしまうなんて凄いの一言。この発想が斬新ですぐに惹き込まれてしまった。
初野作品、今後も期待してます!
Posted by ブクログ
脳死状態になった少女の魂は過去の別人物へ飛ばされ、その人物が死ぬと少女が目を覚ます可能性も潰えてしまう。
少女の魂を救うためタイムトリップする枇杷と、命綱となることを決意した勇介。
ファンタジーだけどダーク気味。楽しい時間旅行じゃなく、物凄い痛みを伴う命を賭けた救出劇。
自分を慕っていた6歳の子が、自分に会いに来ようとして事故にあったって聞いたら堪んないよなぁ…
魔女裁判が行われていた中世、人を生きたまま焼き殺して喜ぶ愚かしさ…人間の醜悪さの塊のような行事。
小さな子の魂が宿りこの子を守ろうと奮い立ってきた老婆アルドゴンド。自分だけが死ぬと伝えられナナを連れていかないでくれと懇願する所、ナナとアレフを必死で助けてくれる所 拭いても読み進める度に涙が出てきた
Posted by ブクログ
片岡勇介
養護施設で育つ。如月教授の姪の子。
如月
勇介の大伯父。大学教授。勇介を引き取った三日後に、交通事故で死去。
ナナ
養護施設の子供。六歳。
枇杷
学芸員。日本人とドイツ人のハーフ。
牧村道夫
財団法人暁埜博物館学芸部門学芸課長。
七海
勇介の里親を引き受けた。博物館の庶務を務めている。大学時代の大伯父の後輩。
カブ
鏑木哲。がっちりした体格で鉤鼻の持ち主、顎には無精髭、さして見事なまでの禿げ頭。
ヤギ
柳沢博人。目が落ち窪み、骸骨が服を着たような痩せぎすの青年。
ジェイク
宗次朝生。学芸員。樽のように太った方。
エルウッド
宗次星志郎。学芸員。ノッポ。
マシュー・ホプキンス
魔女狩り将軍。
ジョン・スターン
魔女狩りの助手。
メリー・フィリップス
魔女狩りの助手。
ジョン・コール牧師
魔女狩りの反対勢力でプロテスタントの牧師。
アレフ
アルドゴンド
信仰深く、妖術の風評がつきまとう寡婦。
Posted by ブクログ
勇介と枇杷の綺麗事で終わらない旅を、枇杷の姉と邂逅するまで見届けたかった……!
続きがもっと読みたくなる、でもよかったなと思えるラストでした。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
大叔父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。天涯孤独になった勇介は、過去を彷徨う大切な人の魂を救うため、危険な旅路に出る。パートナーは碧い瞳の不思議な学芸員枇杷。「命綱」は堅くつないだ手。この手が離れれば二度と現代には戻れない。過酷な旅が今、始まる。新感覚ミステリー長編。
【感想】
Posted by ブクログ
『水の時計』における人の死(ここでは脳死)、『漆黒の王子』における「上の世界」と「下の世界」(本作では現代と過去)、『1/2の騎士』にあるSF的(ファンタージ的とも)設定を活かし、主人公が魔女狩りの吹き荒れる中世イギリスの魔女探索人に挑む。SF的、ファンタジー的なようでいて、いちおう謎解きミステリの構成をきちんととっているのは流石。最後のひねりも秀逸で満足。惜しむらくは、主人公を支える、一人一人が実に個性的な学芸員たちの掘り下げが、主人公とナナ、時間旅行先の老婦人と少年との間に焦点が当てられているためか、やや足りなく感じられたことか。ただ、この作品は、枇杷の姉の設定もあることから、続編が予想できる点、今後に期待したい。