あらすじ
供給が過剰となり、従来的な手法だけでは容易にモノが売れない時代を迎えている。企業にとっては生活者や顧客との関係をいかにデザインするかが喫緊の課題となっている。市場に向けて、どのような戦略を練るかというマーケティング・マネジメントの見直しが必要だ。これからのマーケティング像を描いた、実践的入門書。
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Posted by ブクログ
マーケティングマネジメントに関する本。
SMP MMというフレームワーク的な話ではなく、
顧客を見たもっと本質的な点から話が展開されている良本。
<メモ>
・市場をの関係を自分の意思が反映できるよう、マネジメントできるようどうデザインするか。そのためには戦略上の工夫、組織上の工夫が必要。
・市場関係のデザインは 1生活者顧客志向の戦略づくり2戦略に合わせた組織づくり3市場接点のマネジメント4組織の情報リテラシーの確率の4点で構成される。
・スプーンとはそもそも何かという根本的な価値から考える。
・向き合う消費者を絞り、彼らの欲しい価値を知るところからビジネスは始まる。生活者はドリルを求めているのでなく、穴を求めている。
・生活者の深い理解に立った事業の定義が重要。
・誰のために何をするのかという事業ミッションに加え、どう実現するのかが必要。
・例えば顧客層、技術、提供価値機能で三軸で考えてみる。
・緑茶はどういう飲料でありたいのかという夢から戦略がスタートする場合もある。
・チャネルを持つとそれを維持する必要が生じる。複数製品の継続的な供給など。製品ラインも広げる必要がある。
・コーポポレートブランド戦略は1広い製品と多数の製品ブランドの保有、2新製品導入サイクルの短縮化、3コーポレートブランドのアピールが必要。チャネルを通じた顧客関係の構築を行っている。
・商品ブランド戦略は商品ブランドを通じた顧客関係を構築しており、選択と集中でメガブランドづくりとポジショニングが重要要素となる。
・ブランド別組織か機能別組織かによって、新たなブランドへの取り組み方が異なってくる。機能別だと調整が先に生じてしまい、新たなものが育ちにくくなる
・商品と顧客の関係を変えるコマーシャルイノベーションという試み。キットカットの例。
・ブランドを拡張すると拡張した商品に引っ張られてブランド自体の価値が下がってしまうことなども起こりうる。
・確立したブランドでも都度市場変化に合わせてブランド統合、ブランド拡張、新規ブランド導入という選択肢を選びなおす必要性がある。
・ブランド拡張にはコストとリスクがある。拡張した先の分野でメガブランドと競合する可能性。うまくいかないとブランドエクイティが毀損しうる。
・ハイチオールCがターゲットを変えて新市場を創造したように、これまでになかった切り口で新しい市場カテゴリを作り、そこで一番になることを考える。そして新しいカテゴリとブランドとの絆を強化する。人類初に女性という切り口を入れ、女性初という見方を作り出したことからアメリアエアハート効果という。
・これまでの市場カテゴリと対応するブランドに強い絆を作り出す。生活者の頭の中の特定市場カテゴリにおいてブランドをポジショニングするやり方。ファブリーズなど。ポジショニングのこの工夫こそが長きに渡るブランドエクイティを確立する方策。企業が長きに渡る成長を可能にする方策。
・市場に向けた事業の成長の方向として、二つの選択肢がある。ポジショニングによる成長。生活者の頭の中に自社のブランド製品カテゴリとの強い絆があることを刻み込むやり方。当該製品分野の定番商品となること。さらには少しずつポジショニングを変えて、自身お属している製品市場カテゴリの着実な拡大に努めること。
もう一つの選択肢はブランド拡張。確立したブランドエクイティを他製品に拡張するやり方。
・ポジショニング方式を徹底してやり続けると、どうしても新ブランドの導入が増える。あまりにリスクとコストが大きい。それを避けるべくブランド拡張方式が選ばれる。成長期にはポジショニング方式、成熟期にはブランド拡張方式と市場状況の変化に合わせて慎重に成長対応を考えなければならないということ。
・一つのブランドにいくつものキャンペーンが時間を経て実施される。これはブランドエクイティを育てていることに違いない。今回のキャンペーンにおいてはどの層に訴求すべきなのかを決めることが重要。顧客規模縮小時には新しい生活者を狙うだろうし、ブランド自体のアイデンティティが弱っているのであればヘビーユーザー向けに改めて高いロイヤルティを維持・高揚すべくコミュニケーションを図るだろう。
大事なことは自分のブランドの目指す層を定めることである。
・ブランドパワー測定の最大のメリットはそれによって改善すべき点がわかる。
1生活者との長期にわたる交流の架け橋となるブランドを構築する
2ブランドの健康診断を行う
3その架け橋に悪いところがあれば、そこだけをピンポイントで改良していく。
・メーカーのチャネルマネジメントの重要要素
チャネル営業のプロセスマネジメント 売上利益は様々なマーケティング活動の成果。営業のみの成果ではない。商品を売るのではなく、商品を置いてもらう状況を作るのが営業の仕事であったりする。営業は組織の仕事であり、市場を創造すること。
・マーケティングマネジメントとは、情報をしまう棚を作り(指標化)、センサーを備え付け、羅針盤を作る(打つ手を準備する)こと。
・組織に上がってくる情報は市場調査を通じて、営業から、お客様相談室の三つ。
・市場関係のデザインは市場に向けた戦略づくり(誰に向けて価値を提供するのか)、戦略に合わせた組織体制作り、市場と組織の接点のマネジメント、組織の情報リテラシーの確立から成り立つ。
Posted by ブクログ
第6章の「コーポレートブランドを経営する」と第8章「ポジショニングを通じてブランド・エクイティを確率する」が面白かった。ソニーとパナソニックの戦略の違いも興味深かったが、中でもP&Gの、「ニッチを狙ったファブリーズの市場導入」の部分が、今の仕事にも為になりそうな内容だった。
確かに消臭剤と言えば、「ファブリーズ」と自然と出てくる。これは考え抜かれたP&Gの戦略、ということがうなずける。
更にカルビーのポテトチップス、コカ・コーラ、フジッコのおまめさん、明治ブルガリアヨーグルト、アサヒスーパードライ、なども、同様に生活者に確固としたポジションを築いている。
だけど、ファブリーズはそれに留まらず、「布の臭いをとることで、部屋の臭いをとる」とメッセージを工夫して新たな商品と生活者との関係を築いた。
「きっと勝つ」にかけた「キットカット」もその例、とのこと。
そして、技術上のイノベーションと対比させ、そういった試みのことを「コマーシャル・イノベーション」と言うらしい。
メーカーのマーケッターは日々こういったことを考えているんだろう。どんなところにヒントが隠れているかわからない。けれど、自分が関わった自社製品って思い入れがあるんだろうな。そこが代理店とメーカーとの大きな違いだ。サービスと商品は、目に見えるか見えないかで大きいし。