あらすじ
謝罪の場面で真意が伝わらず怒らせる、誤解を与える、だらだらと長く続く言い訳文、空気の読めない発言、どこか変な敬語…。コミュニケーションの行き違いを生じさせる言い方や表現は、実は言語学的な理由がある。「まずい」具体例を取り上げながら、言語学的に分析していく。知っておきたい表現の落とし穴とは!?
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Posted by ブクログ
日本語学者であり「語用論」の専門家である著者による、「我々はなぜ相手を怒らすことを言ってしまうのか」をアカデミックな視点から解説した本。
著者によれば、我々が普段生活していて不愉快に感じる発言には必ずそのロジカルな理由があるという。相手の言葉に微妙に現れている感情や思いを感じ取って不快に思う。
著者の説明はわかりやすく、また納得できるものが多かった。例文も多く載っており実用性に優れる。
これまでに持たなかった観点から日本語というものを見つめ直すきっかけになった。
特にロゴスとパトスの解説は秀逸。
アリストテレス等の著書でこれらの概念は一通り理解していたつもりだったが、ロゴスは結局向こう側(一神教)の概念で、汎神的な世界で生きる我々にはやはり腹落ちし難いものがある。だが、本著の解説はその分かりにくさを日本語の特性を前提として克服する。
つまり西洋的な句読法は論理的にロゴスを表すことに優れているが、単文を切ることを嫌う伝統的な日本語はパトスを表すことが得意である。
われわれは非常に高度で繊細な使い分けを無意識的にやっているのだと理解できた。これを知っておくことで普段の言動にも注意を払うことができるし、冷静に相手の言葉を捉えることができると思う。
日本語というものをロジカルに捉え直すことができる良書。
Posted by ブクログ
予想以上に実践的な内容。目から鱗。
「なぜ、その言い方は人を不快にするのか?」を、心理学や経験則からではなく、言語学的に分析していて新鮮。
「他者のパトスを断定しない物言い」の重要性に大いに納得。
ロゴスの正当性だけではなく、パトスへの共感が必要」という主張を、この本自体が損なわないように、著者が配慮しながら書いているように感じた。
福島原発事故で、東京電力がなぜ世間を怒らせるのかも理解できたような気がする。東電の上層部は一読した方がいいかもしれない。
Posted by ブクログ
タイトルだと啓蒙書っぽいけど、実際には言葉(主に日本語)について分析した一冊。
ロゴスとパドスについて、そして実際の使用法について記述している。
長くなるので詳細は割愛するけれど、その中で「全然おいしい」や、「お越しになられました」みたいな二重敬語は必ずしも間違いではないと書かれていた。
論拠として、「全然おいしい」は明治以前から使われてる表現だし、二重敬語もたとえば謙譲語と尊敬語の混じったものなどはTPOによるものだとしている。
自分が聞くと違和感がある表現はとかく切り捨てるみたいな風潮があるけれど、言葉は生き物だから時代によって変わっていくものだし、ある程度ゆとりをもって接していきたい。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
謝罪の場面で真意が伝わらず怒らせる、誤解を与える、だらだらと長く続く言い訳文、空気の読めない発言、どこか変な敬語、…。
こうしたコミュニケーションの行き違いを生じさせる言い方や表現は、ニュアンスや印象論で語られがちだが、実は言語学的な理由がある。
本書では、「まずい」具体例を数多く取り上げながら、言語学の中でも文脈を科学する新しい分野である語用論を背景にその理由を分析していく。
知っておきたい、日本語が陥りやすい表現の落とし穴とは。
[ 目次 ]
序章 なぜうまく伝わらないのか?
第1章 ことばの危機管理
第2章 誤解されることば
第3章 ロゴスとパトスを使いこなす
第4章 読むべき空気と読まざるべき空気
第5章 敬語よりも配慮
終章 時代の求めることばのありかた
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
「え~~~ほんとにこの日本語間違っているの?」「ちょっと不自然、ちょっと変」知らないうちに使ってる。感覚的に変だというのではない。言語学的見地からの解説
Posted by ブクログ
言葉遣いで、印象が代わって、上から言葉になったりしたり。そういうと敬語ばかりに着目しがちだが、敬語以前の言葉選びにも、印象を考慮してチョイスすべき。普段着にしない言葉の印象が細かく検証されていて面白い。
Posted by ブクログ
仕事で思うところがあり、手に取った本。書き言葉ではなく、話し言葉について中心に書かれています。『火に油を注ぎかねない「は」』とかうなずきながら読んでしまいました。。ただ、最初のほうは結構面白くてぐいぐい読んで行けたんですが、最後のほうになってちょっと減速。。。そこで少し点数を下げました。それでも、人前で話をする機会が多い人は一度こういう本を読むべきでしょうね。
Posted by ブクログ
語用論の参考書?として読みました。
「日本人は~」とか「日本語は~」とかの表現が多いですが、
あまり海外との比較・対照がないように感じました。
内容はわかりやすかったです。
ただ、個人的には、もっと専門的でもいいかなぁと思います。
Posted by ブクログ
前半には 身近に見られる引っかかりを感じる言葉遣いを例にあげながら、どの様に意思疎通の失敗が起こるのかを解説。
後半は筆者の専門領域である語用論に踏み込み、前半の様な誤解が起こる仕組みを、ロゴスとパトス、「空気を読む」などと言われる話者や場の了解事項などの枠組みで捉え直し、どうやって気持ちを害さず言いたいことを的確に伝えられるのかを検討している。
敬語の誤用に対する筆者の立場は非常に大らかで、巷の言語系クイズ番組にも批判的。
ちょっとした言葉のアヤで関係がこじれがちな仕事に携わる者として、誤解や不快感をできる限り回避しようとする、言葉の危機管理の方策は参考になった。