【感想・ネタバレ】民法改正 ――契約のルールが百年ぶりに変わるのレビュー

あらすじ

明治期に制定された「民法」。われわれの経済活動の最も基本的なルールを定めたこの法律が抜本改正されようとしている。なぜ、ルールの変更が求められているのか。具体的に何がどう改正され、生活にどんな影響がもたらされようとしているのか。市場の世界化を見据えた契約法モデル策定の動向を、第一人者が平明に説く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読まなきゃ読まなきゃと思って、ずっと積読にしてしまっていた。もっと早く読めばよかった。
民法改正の細かい内容の解説ではなく、なぜ改正すべきなのか、法制史や比較法等法学的見地から、前半で詳しく丁寧に説明されているところがよかった。さすが現在の民法学の第一人者の一人である内田先生の書かれた本だけのことはある。資格試験の勉強などではどうしても上っ面な知識だけをなめがちになるところ、改めて法学の根幹的な部分を認識させてもらったのがとてもよかった。
そもそも出来の悪い学生ではあったけど、ただ、どうしてこんなことになってしまうんだろうと当時からモヤモヤしていた部分(例えば、細かすぎる消滅時効の規定は、フランスの慣習(職業差別に由来)をそのまま持ってきてしまったから)がすっきりできたのもよかった。当時の先生は説明してくれてたっけかな・・・説明してくれてたのに、私が寝てたりサボってたりしていただけかもしれないけど^^;。日本民法の特徴+出来の悪い私の相乗効果で理解不能になってた部分が多々あったのだわ、とちょっと安心したところも。
プロがわかってればいいとか、体系的なバランスを崩すべきでないとか、そういう改正反対派には私も同意できない。憲法同様、なんで法律を宗教の経典みたいに考えてしまうのか。市民のための法律ならばなおのこと、古くなってしまった内容はどんどん変えられるべきで、確かに新しい内容を覚え直すのは大変だけど(^^;)、立法機関たる国会はぐずぐずしていないで、改正民法の議論を深める等ちゃんと仕事してほしい。

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2015年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

法務省の民法改正作業に従事している内田貴先生による民法改正についての本です。内田先生は法学部生にとっては「内田民法」としておなじみですね。

 現行民法の問題点について指摘し、なぜ民法を改正すべきであるのかを述べています。

 とてもわかりやすく書かれており、法律に全く触れたことのない人であっても読みやすいはずです。また、法律が社会において果たす役割の重要性も感じて頂けると思います。

 普段普通に過ごしている分には感じにくいと思いますが、法律は社会を公正妥当に機能させる上でとても重要です (過剰規制などに見られるよう悪い効果が出てくることもありますが)。曲がりなりにも法律を勉強して約二年がたちますが、どれほど人が法律により支えられ、保護されているか感じることがよくあります。

 そんな大事な法律なので、とっつきにくい印象があるとは思いますが、一度手にとってその世界に触れてみてはいかがでしょうか。

 第4章くらいまではさくさく読めるのではないかなと思います。

 
 法律を勉強しても知識が頭の中で散り散りになっている私の様な人間にとっては、知識を整理する上で効果的でした。民法改正の必要性だけではなく、なぜ授業でいちいち「起草者の意思」が出てくるのか、判例法理や裁判所の条文解釈をいくつも覚えなくてはならないのかなども理解できました。

 以下各章の内容について軽いまとめ。

◆第一章◆
 民法改正の現状説明

◆第二章◆
 民法の構成、果たす役割についての概要説明

◆第三章◆
 他国における民法の位置づけと改正状況の説明を通し、円滑な取引を実現するためには統一された契約法を市場が持つことが重要であること(「ひとつの市場にはひとつの契約法が要請される」)を述べる。
 また、ウィーン売買契約への日本の批准が遅れた結果日本が被ることになったコストを指摘した上で、契約法の国際標準をめぐる競争のなか日本はどのようなスタンスをとるべきかと論点提示。

◆第四章◆
 日本民法の成立・運用過程を辿り、なぜ現在のようにシンプルな少数の条文から成り細かい適用基準を解釈に依存する「国民にとってわかりにくい」民法が出来たのかを説明。その上で、透明性の高い法的ルールに基づき紛争を処理しようとする指向の高まりに合わせ、法典外に存在している条文解釈や判例法理を法典に書き市場ルールを明確化し、「国民にとってわかりやすい民法」を作る必要性があることを述べる。

◆第五章◆
 「わかりやすい民法」とはどのようなものであるか、また、それをどのように作り上げていくべきかについて、実際の判例や実務家の意見をあげつつ具体的に述べる。

◆第六章◆
 ①消滅時効、②法定利率、③約款、④サービス契約、⑤自然災害にからむ法律関係 を例にあげて現行契約法が現在の社会・経済状況に対応できていないことを指摘し、「わかりやすい」だけではなく「現代の社会・経済状況に対応した」民法を作る必要性があることを述べ、かつ具体的な改正指針を示す。

◆第七章◆
 契約法を中心とする民法改正のメリットについてのまとめ(法務コストの削減、国際競争力の強化、国際基準定立・運用における日本のプレゼンス発揮)。また、今回の改正対象外の論点について述べる。

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2013年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

かなり面白く興味深く読めた。民法の改正内容が分かると言うよりも、現在の民法の設計思想、そして改正後の設計思想がとても良く分かった。

重要ポイント:

現実があまりに複雑であるとき、人間はその複雑さを縮減したシステムを作り出して対応しようとするというのがルーマンの社会学が教えるところです。経済学は、財と財が需要と供給のバランスの中で交換されるという市場モデルを作り出して、現実を理解しようとしました。なぜなら、経済学は、価格決定のメカニズムに関心を集中したから

これに対して、民法は、この複雑な取引社会の現実を権利と義務という概念によって表現しようとする

経済学のもっとも単純な市場モデルには、二つの財だけが登場する。これに対して民法が想定するもっとも単純なモデルは、三人の人と二つの物(財産)が登場する

権利の侵害者を常に想定するところが、民法の特色

人が誰からも干渉されることなく、物を自由に使用・収益・処分できる権利として所有権が観念されるにようになったのは近代になってから

民法は、贈与、売買、賃貸借、消費貸借など12の類型を用意し、それぞれの類型ごとに、権利義務についてのルールを置いている

日本には、民法典の外にもう一つの民法があるといえるほど多くのルールが解釈論として存在している。少なくともそのうちの安定した原則については、それを条文の形に明文化することが、民法の透明性を高める観点から望ましい

サービスを内容とする契約は、民法の典型契約の中では、委任、請負、雇用、寄託という四つの契約類型がある。

拡大する現代のサービス契約に適用できるような規定が、民法にはほとんど用意されていない

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2012年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

17年8月、再購入…まーったく記憶なく。
法律苦手なので、記憶拒否していたのか。

なんとなく内田さんの名前に覚えがあり、何かで読んだのかなあとか思ってましたが、これで2冊か3冊目の複数回購入。

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2017年08月08日

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