あらすじ
本はなぜ必要か。どうすればもっと「伝わる」のか。強靱でしなやかな知性は、どのような読書から生まれるのか――。ブログ「内田樹の研究室」と、各媒体への寄稿記事より、「読書」と「表現」に関するものを厳選、大幅に加筆・改訂。21世紀とその先の生き抜くための、滋味たっぷり、笑って学べる読書エッセイ!
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Posted by ブクログ
本のガイドというよりも、引用した上での思考哲学といったほうが正しい。しかし、いつもの論評よりはテンポが軽めなのでさくさく読める。
ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』やケストナーの『飛ぶ教室』ってそんなにおもしろいのか、読んでみたくなった。
読みやすい本のコツとは、コミュケーション・プラットホームの構築。読者に対してゆっくりと理解を得ながら進む文章。目から鱗が落ちる指摘。いい本を書く人は本に対する感性が鋭い。
著作権に関する論評も納得。質を問わずに数だけ捌こうとする出版ビジネスにうんざり。
Posted by ブクログ
【私の本棚】p22
小説を読むというのは(哲学でも同じかもしれないけれど)、別の時代の、別の国の、年齢も性別も宗教も言語も美意識も価値観も違う、別の人間の内側に入り込んで、その人の身体と意識を通じて、未知の世界を経験することだと私は思っている。
私の場合はとくに「未知の人の身体を通じて」世界を経験することに深い愉悦を感じる。
【ジュンク堂と沈黙交易】p81
インターネットでお買い物というのは「沈黙交易」の今日的な甦りであるという仮説。
【非人情三人男】p96
「苦しんだり、怒ったり、騒いだり、泣いたりは人の世につきものだ。余も三十年の間それをし通して、飽々した。余が欲するのはそんな世間的の人情を鼓舞するようなものではない。俗念を放棄して、しばらくでも塵界を離れた心持ちになれる詩である」(夏目漱石『草枕』)
【マルクスを読む】p105
「労働者が骨身を削って働けば働くほど、彼が自分の向こうがわにつくりだす疎遠な対象的世界がそれだけ強大になり、彼自身つまり彼の内的世界はいっそう貧しくなり、彼に属するものがいっそう乏しくなる」(カール・マルクス『経哲草稿』301頁)というのは単なるレトリックではない。
【歩哨的資質について】p177
私たちの世界は「存在しないもの」に囲繞されている。
宇宙の起源を私たちは知らないし、宇宙の果てに何があるのか(というより「何がないか」)も知らない。時の始まりを知らず、時の終わりを知らない。
【140字の修辞学】p375
長く書いて、かつ飽きさせないためには、螺旋状に「内側に切り込む」ような思考とエクリチュールが必要である。
【補稿 「世界の最後」に読む物語】p401
私たちは文学を通じて、今の自分と違う身体のうちに入り込み、こことは違う世界で、こことは違う空気を吸い、想像を絶した快楽を享受し、想像を絶した苦痛に耐える。今いるこの世界から抜け出し、他者たちのうちに入り込む。その経験がもたらす解放感と快楽ゆえに人類は文学を必要としているのである。