あらすじ
《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
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Posted by ブクログ
最後の義輝の話を読んで、君子は美しいものが大好きな純粋な少女だったのだろうと思った。
美しいものの為なら悪意なく人を蹴落とせるし美しく魅せる為に平気で嘘もつけるという異常性をもっている。
悪びれもせず金や土地を奪う被害者にとってはそれは悪女にしか見えないだろうし、君子が美しく見せようとしている相手には潔癖で綺麗な所しか見えない。
鬼婆のような窃盗癖のある母親は美しくないので実の親ではないと嘘をつき、義彦が美しくない附子の嫁を貰う事を許せない。
元から飛び降りる動機はあったものの、
二十六人目の話を読むに年齢を若く美しく偽らずに適切な治療を受けていれば、死ななかった可能性が高い。
しかし最後に美しく死ねたので君子にとっては最高の結末だと思う。
Posted by ブクログ
公子のことを清く正しくいい人という人ととんでもなく嘘つきで悪い人という人がいる。
私も、とんでもなく頭が良くて、感心するほど計算上手な悪女だと思った。けれど、公子の幼なじみがそろばんを習ってたよねって言った時に公子は全く覚えていない様子なのがずっと引っかかってた。嘘をつけば済む事なのに覚えていない、人間違いだと言い切ったところに、もしかして双子かなりすましで2人いるんじゃないかと思ったくらい。そういうふうに私は本当は高貴な家の生まれなのにという作り話もそういうふうに本当に信じ込んで生きていくしかなかったのかな、その時その時で別人格を生きているのかなと思った。ドラマでは、公子がもし自殺だとしたら、人生の幸せの絶頂で終わりたかったのかなといっていたけどそれもそうなのかもしれないなと思った。
Posted by ブクログ
有吉佐和子文学忌、有吉忌
1978年に週刊朝日で連載された有吉佐和子の『悪女について』は、1週ごとに1人、計27人が“悪女”富小路公子について語るという構成がユニークな作品。同時期にドラマも放映され、毎週少しずつ人物像が立ち上がってくる感覚は連載ならではだと思う。テレビ朝日系ドラマと週刊誌連載が、ほぼ同時進行だったとは、それは凄すぎる。
読んでいて思い出したのが、芥川龍之介の『藪の中』や、塩田武士『朱色の化身』。どちらも、複数の証言から一人の人間像を描こうとするが、語り手ごとにまったく違う顔が浮かび上がる。『悪女について』でも、公子を天使のように言う人もいれば、冷酷な計算高い女と決めつける人もいて、いったい何が本当なのか、最後まで見えてこない。
しかも、公子の死は自殺なのか他殺なのかも明らかにされず、ドラマでも結末はぼかされたままだ。だが、そこがこの小説の本質で、魅力でもある。「悪女」は、本当に存在するのでなく、語る人の思いや偏見が作り出す残像なのでは。