【感想・ネタバレ】ひとを愛することができない マイナスのナルシスの告白のレビュー

あらすじ

果たして、ほんとうの愛とは何なのだろう? 愛に不可欠の条件、愛という名の暴力や支配、掟と対峙し、さらには自己愛の牢獄から抜け出すために――。闘う哲学者の体験的「愛」の哲学!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

こんな家庭環境の人もいるのだなぁという感じだし、解決法が提示されていないので後味が微妙ですが、本題以外で印象的なところをいくつか。

・ある心的状態が愛であるために不可欠の条件(一)相手の個体に向かっていること。言いかえれば、ほかの人とは交換不可能であること。
(二)相手の肉体のみならず、ひろく心と呼ばれているものに 惹かれていること。言いかえれば、心ある肉体としての相手に惹かれていること。
(三)相手の姿を見たい、その声を聞きたい、その肌に触れたい等々、その人を感じたいと欲望すること。
(四)相手の諸属性を、その固有のあり方においてよいものとみなしている

・愛する側に立つ人間は、たえず攻撃をあらたにし、相手の価値をせりあげなくてはならないのにひきかえ、反対に、愛さない側に立つ人間には、まっすぐな一本道を、苦労せずに、のうのうとたどってゆける。
より少なく愛している者は拷問者である。言葉の一つ一つが、態度の一つ一つが、目配せの一つ一つがより多く愛している者の肉体をえぐり、切り開き、悲鳴を上げさせる。しかも、相手の苦しみはいかなる同情も呼び起こさない。彼(女)は淡々と拷問を重ねるのである。

・われわれは真剣に誰かを愛するとき、孤独になる。なぜなら、愛とはまさにその人個人を愛するからであり、ほかの誰とも交換不可能であって、基本的には誰にもその思いをわかってもらえないからである。

・愛する者は愛される者の表象を支配できるが、その存在を支配することはできない。
世界全体が愛される者(土屋)の表象=観念と化してしまい、森羅万象は愛される者の香りに満たされる。しかも愛する者(節子)はそれが表象であること、つまり実物ではないことを心の底で知っている。彼女は、この表象界において、愛される者を神のように自由自在に創造することができる。いかなる微細な現象にも愛される者のしるしを刻み込むことができる。寄せる波の一つ一つに土屋を見ることができる。

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2022年04月05日

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