あらすじ
市井の噂話から千代田のお城の秘密まで。硬軟とりまぜた事件の顛末を情報として商っている「だるま屋」の秋月伊織は、関所を破って江戸に入った女のその後を調べるため、岡場所へ向かった。苦界に生きる女の矜恃と、思いもよらぬ大事とは? 心に迫る表題作他4編、人気沸騰の文庫書下ろしシリーズ第2弾。(講談社文庫)
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伊織、勘当扱いで家を出る
秋月伊織と浪人、土屋源之助、元目明かしの長吉が、だるま屋吉蔵が書くかわら版の見届け人を務める。見届け人は記事内容の正義と正確さを判断する異色の仕事人で、危険な調査では刀を抜くこともある。だるま屋は古本屋だが、吉蔵のかわら版は人気で、店には姪のお藤と手代の文吉を働いている。
第1話「寒紅」は、播磨小原藩から江戸に来た侍2人と団子屋の奉公人で同郷の娘の話しである。すすり泣く地蔵の話しを錦団子屋で奉公人として働くお波が、だるま屋の吉蔵に持ってきた。
お波は、故郷の播磨小原藩の町娘だが、昔、通りで泥棒呼ばわりされて困っている所を、通りがかった厚田淳一郎に助けられた。だが今は江戸で厚田が筆職人になっていて、金のことで不自由している。それを救いたいお波。特ダネを売って小金を渡して助けたいと考えたのだ。泣く地蔵の話しは甚兵衛橋近く地蔵堂にあるという。
小原藩は財政逼迫を解決するため、三十数名家臣を放逐した。厚田もその一人で、江戸に来て筆職人としての生業がある。厚田は、ある居酒屋で昔の上司栗原平助と偶然会い、その際妻の病で生活に困っていることに同情して、仕事の前金として受け取った10両をまるごと貸したのだった。
ところで、地蔵がすすり泣くという話しは、地蔵の裏手で泣いていたのは、博打打ちの弥太郎と言う無法者の弟弥吉であった。弥太郎は博打場で喧嘩をして相手に大けがをさせて、裁きで所払いを言い渡された。それだけではなく、油問屋山城屋に仲間2人と押し込み金を盗んでいた。
奉行所の同心蜂谷が、見届けん人の一人長吉を引き連れ調べを担当していた。地蔵堂の場所全体が掘り返され、弥太郎の亡骸が掘り出された。
お波は、ほんの数日前たまたま、出前の帰り道弥太郎とは、甘酒の屋台で会って言葉を交わした。以来、お波も狙われた。どうやら、盗賊たちがある浪人に殺人を頼んだのである。その浪人とは、厚田の元上役の栗原だった。下駄職人の又蔵とたばこ屋の倅三之助、そして弥太郎の3人が押し込み強盗の犯人であった。そして、弥太郎は口封じのために仲間2人に依頼された栗原に殺される。また、お波も栗原に切られて重傷を負い、介抱の甲斐もなく亡くなるのだった。
残り3話も江戸下町の人情味にあふれ、銀座を含めた今の江東・墨田・台東を舞台にする。盛り場が多く、無法者にも住むのに好都合な場所だ。だるま屋吉蔵には語る材料が尽きないだろう。