【感想・ネタバレ】河内源氏 頼朝を生んだ武士本流のレビュー

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Posted by ブクログ 2011年12月27日

1 河内源氏の成立
2 東国と奥羽の兵乱
3 八幡太郎の光と影
4 河内現時の没落
5 父子相克-保元の乱の悲劇
6 河内源氏の壊滅-平治の乱の敗北
むすび 頼朝の挙兵

痛快な通史である。

10世紀なかばの承平・天慶の乱からはじまり、治承・寿永の争乱の幕開けとなる頼朝挙兵に終わる河内源氏の栄枯盛...続きを読む衰の物語が本書である。

中世の武士ほど、中等教育までの教科書と歴史学研究の乖離がはなはだしいものは少ないのではないか。武士とは貴族である、と本書は至るところで主張する。それすらも乖離のごく一例である。詳細はぜひ手にとって読んでいただきたい。

本書を読めば、評者をはじめとする素人が、いかに通説的理解に染まっているのかがよく分かる。

本書でもたびたび引用される『愚管抄』に、保元の乱以降は「武者ノ世」だという有名な一説がある。恥ずかしながら『愚管抄』も『吾妻鏡』も読んだことがない。しかし、高校の日本史の授業や大河ドラマなどを通じて、鎌倉時代になってから記された古典を源流にした「源平観」や「誇張された武士像」に多かれ少なかれ影響を受けている。

そのすり込まれた武士像を、厳密な史料批判によって再構築・再解釈していくのが本書の最大の魅力である。

とにかく饒舌に時代背景を説き、人脈の広がりを示し、舌鋒鋭く通説(とくに東大の先生の)を斬って捨てる。とにかく早口でまくし立て、ノートが追いつかないほどのスピードで黒板に書きまくる元木先生の講義そのものである。

一読すれば、普段この時代に興味関心の無い評者のような人間に対しても、好奇心をかき立て、歴史書を手にとってみようと気にさせるという点で、歴史学の新書として期待される最大の役割を果たしていると言えるだろう。

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Posted by ブクログ 2011年12月16日

源氏のみならず、武士の発生から鎌倉幕府成立直前までの武家の変遷を、まったく新しい視点から洗い直した一冊。大河「平清盛」放映前にこれを読めたことは幸運と言うほかなし。「源氏の血は荒っぽい」などと情緒的な見方は一切排除した推論方法はほかの時代にも応用出来そう。

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Posted by ブクログ 2022年12月02日

源頼朝は治承四年(一一八〇年)八月一七日に挙兵した。頼朝は後白河法皇の皇子である以仁王の平家追討の令旨を大義名分とした。但し、頼朝は令旨を四月に受けたが、しばらくは動かなかった。八月に挙兵した動機は様々な面がある。

第一に平家が令旨を受けた諸国の源氏追討を計画しており、討伐される前に挙兵したとする...続きを読む。この説に立つ場合、頼朝には奥州平泉に逃亡するという選択肢もあった。逃亡ではなく、挙兵を選択した理由が問題になる。北条政子らの伊豆での生活を失いたくなかったという理由があるだろう。頼朝自身にも一所懸命の鎌倉武士のマインドがあった。

第二に後白河院の密命が下ったとする。後に後白河院を「日本一の大天狗」と罵るが、頼朝は後白河院に恩義があった。頼朝は平治の乱で捕らわれて殺されるところを清盛の継母の池禅尼に助命された。しかし、これは池禅尼自身の慈悲心よりも後白河院の姉の上西門院の意向を反映したものであった。

「後白河院とその姉上西門院は、平治の乱で彼を救った恩人である。その後白河が、今や平清盛の暴虐によって幽閉され、院政を停止されていた。頼朝が奮い立つのも当然かもしれない」(元木泰雄『河内源氏 頼朝を生んだ武士本流』中公新書、2011年、206頁以下)

第三に三浦氏や千葉氏ら有力東国武士団の後押しである。平家は多くの国を知行国とし、目代を派遣して東国の直接支配を進めた。在地の武士団は圧迫を受けており、平家に対抗する神輿を望んでいた。

鎌倉幕府は伝統的な歴史観では朝廷の支配下で低い身分に甘んじていた武士が自立したと説明される。しかし、既に東国は朝廷の支配が弱まり、東国の武士団は元々自立していた。ところが、平家政権が成立すると平家が京から全国の武士を統制しようとした。これに対して東国武士団は反発した。朝廷への反発よりも平家への反発であった。

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Posted by ブクログ 2022年03月01日

河内源氏の祖頼信から、鎌倉幕府を開く頼朝の父である義朝までの河内源氏に関する通史。従来の研究では、平氏政権を打倒した源頼朝と東国武士との結びつきから遡行して源頼義・源義家との東国武士の絆が強調する「武家棟梁論」が支持されてきたが、その「武家棟梁論」に対する批判について多く書かれている。

「武家棟梁...続きを読む論」とは、広汎な東国武士を組織した河内源氏の武将は、多くの地方武士を組織する武家棟梁となり、その発展によって鎌倉幕府が樹立されるストーリーだが、前九年合戦では東国武士の参戦はわずかに過ぎず、安倍氏に惨敗する程度の武力しかなかったこと、出羽からの清原武則の支援でようやく勝利できたことなど、東国武士の組織化で勝利など行われていないようだ。筆者によると、武家棟梁論の最大の根拠は、『陸奥話記』と『吾妻鏡』であるが、『陸奥話記』は文学的修辞が多く、単純に事実とはみなしがたい。また、『吾妻鏡』が頼義をことさら取り上げるのは、平直方の子孫北条時政の女婿として鎌倉幕府を開いた頼朝と平直方の女婿の頼義の共通性を強調する作為がある。つまり、単に『吾妻鏡』によって、頼朝と東国武士の結びつきが過去に遡行されて、頼義と東国武士との結びつきが捏造されているに過ぎないとしている。

また、後三年合戦において、源義家に恩賞がなかったのは、義家の強大化を恐れた貴族の抑圧があったという説があるが、これを停戦命令無視の私戦であるので、当たり前のことであるとバッサリ。また、後三年合戦は清原氏一族の内紛であり、統率した武力の多くは清原氏一門に過ぎず、多数の東国武士の参戦を規定するのは困難であるとしている。

他にも為義と摂関家の関係、藤原信頼と主従関係を結んでいたゆえに、平治の乱で信頼と「心中」せざるを得なかった義朝などが書かれていて面白かった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月05日

坂東という田舎に、源氏の貴種が来ただけで
ははーっと従うイメージで、ふわっとしてた
実際は、何代もの開発領主が領地でモメなが
ら中央の政局に振り回された結果、以仁王の
令旨の出た時点で、蜂起せざるを得ない武士
団がそこかしこに生まれていた(´・ω・`)

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Posted by ブクログ 2020年05月27日

骨肉の争いをしながら、繁栄と没落を繰り返した河内源氏について描かれている。
頼朝助命の理由など色々なところで今まで自分が知っていたこととは違う解釈も多く面白かった。

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ネタバレ購入済み

武家の棟梁?

2020年05月02日

王権と自力救済の間で揺れ動きながら、栄光と没落、凄惨な骨肉の争いを経験した、実に劇的な一族河内源氏。

源頼信が平忠常の乱、源頼義が前九年の役、義家が後三年の役を平定。→東国武士を結集し、「武家の棟梁」と称される地位を確立。→院や貴族に脅威を与えた河内源氏は、院と結んだ平氏による源氏勢力削減政策...続きを読むにより不遇を極め、保元の乱と平治の乱を経て没落。→先祖が築いた基盤をもとに頼朝が鎌倉幕府を開いた。
こういった歴史の教科書に載ってるような通説に対する検討をされています。

・貴族と武士は同じ支配者層であり、貴族と武士が対立関係にあったのではない。
・頼朝の隆盛の基盤は源平争乱の結果で得た領地であり、先祖からのものではない。
・当時の武士の第一人者とされてはいたが、彼らを反乱の主役に押し上げたものは、卓越した戦闘技術や、武士の組織力、そして中央との政治的連携。

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Posted by ブクログ 2019年10月19日

河内源氏の歴史を頼朝の挙兵まで概観する一冊。院や摂関家との歴代の関わりなど、平安後期における武士の在り方などが窺い知れて興味深かった。保元の乱や平治の乱の理解を深めるにも丁度良い内容でした。

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Posted by ブクログ 2017年07月19日

源平の戦い以前の源氏のことを知りたかったので購入。平安後期からの源氏の事情がかなりよくわかってためになった。何箇所か他者の言説を必要以上に貶める記述があったのはちょっと気になった。

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Posted by ブクログ 2017年06月25日

歴史の教科書では源氏は東国、平氏は西国と教わるが、それはある意味、東鑑史観の賜物であり、筆者は頼朝に至る源氏の一族を「河内源氏」と呼んでその常識を覆していく。
10世紀以降、地方で私田が開墾され、開発領主または荘園管理人という立場の在地武力が形成されると、地方と中央の権門貴族を繋ぐ軍事貴族というモデ...続きを読むルが立ち現れる。彼らは京の近郊に拠点を構え、平時においてはその武力を持って権門貴族に近侍し、地方の反乱など有事には鎮圧に赴き、地方にも勢力を張った。

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Posted by ブクログ 2014年10月22日

そもそも武士とは何かということが気になって手に取った本。源氏に代表される武士は中央の権力と密接に結び付く中で発展してきたことが理解できた。本書は頼朝の挙兵で筆を置いているが、せっかくなら源氏滅亡まであると良かった。

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Posted by ブクログ 2013年07月15日

河内源氏は有名人を輩出しているメインの血筋なんですね。義家の実像は、今東光の「蒼き蝦夷の血」でも、同様に描かれていましたよ。義朝の焦りと束の間の栄光!ドラマチックです。保元・平治の乱から頼朝旗上げまでの武士の置かれた状況が良く整理できました。

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Posted by ブクログ 2013年06月29日

河内源氏は本格的武士政権の創始者・源頼朝を生んだことで、
一貫して源氏の嫡流だったという印象を多くの人が持っているのではないでしょうか。
しかし、それは結果から見た歴史でしかありません。
頼信の時代には頼光ほかの兄弟がいましたし、
義家にも義綱がいました。
平家と違い、血で血を洗う争いが耐えないイメ...続きを読むージがある源氏ですがまさにその通りで、
嫡流を争う骨肉の争いがあったのです。
頼朝が叔父や弟たちを攻め滅ぼしたのも、
そんな嫡流をめぐる争いの一つに過ぎないのでしょう。
この本は、決して源氏の嫡流が一本の太い線で受け継がれてきたようなものではなく、
その中に様々なドラマがあったことを教えてくれます。

嫡流でなくても河内源氏は、
新田、足利、武田、小笠原と多くの支流を生み出し、
歴史の流れを作っていく存在の一つになりました。
その根元ともいえる河内源氏のどらま。
楽しめる一冊です。

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Posted by ブクログ 2012年08月18日

現在の大河ドラマも同時代を背景としており、なんとなく読んでみた。
ドラマ同様、登場人物が複雑で取っつきにくいのだが、読み進めるうちに徐々になれてきて、面白くなってきた。
歴史書だけを参照しては浮かびあがってこない人物の生きざまが描かれているところに、引き込まれていくのではなかろうか。
武家も貴族の一...続きを読む派であるという理解だけで、清和源氏、桓武平氏の意味するところや、豊臣秀吉が将軍ではなく関白に就いた経緯が推量でき、歴史への興味も湧いてきた。
読み終わった後、不人気といわれる大河ドラマが面白くなったことも付け加えておきたい。

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Posted by ブクログ 2012年08月04日

頼信vs平忠常、義家vs弟たち、為義vs一族など他の本では触れられていないところに興味があった。
一族内の抗争がよくわかる。なんだか鎌倉時代の北条と似ているな。
結局義朝が頼朝に残したものとは後白河とのコネということになるのかな。
面白かった。

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Posted by ブクログ 2012年01月15日

河内源氏は源頼朝を輩出した清和源氏の一門。その歴史を経基王の時代から延々と解説している。

三点ほど要旨というか参考になるものを抜くと

・王朝を警護するのが軍事貴族としての勤め
・戦役の成否は在地武士の動員に依存。
・貴族から武士へという『必然の前提』にとらわれすぎて前提を見誤っていた

この在地...続きを読む武士の動員が必要、というものが以前九州の南北朝時代についての本を見たときに何故戦争が長期化したか、について考えた時にでてきた疑問をふと氷解させた。

(日本史全般だが)平安時代は意外と自分のなかで盲点だったためテストが終れば少し調べてみる。

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Posted by ブクログ 2011年12月20日

頼朝を生んだ河内源氏の人たちのことが漠然とした知識しかなかったが、よく理解できた。
頼朝が偉大だったために、その祖先たちも多分に美化されて伝えられたのだと思う。
頼朝の祖父である為善が意外に問題児だったのも初めて知った。
頼朝が義朝の嫡男だったのも初めて知った。
また、歴史を見る目が変わる。
登場人...続きを読む物が複雑すぎて、分かりにくい点もあったが、為になった。

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Posted by ブクログ 2011年12月04日

源氏の本と言うと、義朝もしくは頼朝以降で考えてしまいがちですが、この本は頼朝に至るまでの河内源氏について書かれたものです。

平治の乱における、清盛と義朝の関係は、対等と見られがちだけれども、位階からしても対等であるはずがなく、清盛対義朝ではなく、清盛対信頼であるということはもっと広く知られるべきこ...続きを読むとのように思いました。慈円の認識で理解していることを思い知りました。

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Posted by ブクログ 2013年04月14日

≪目次≫
はじめに
第1章  河内源氏の成立
第2章  東国と奥羽の兵乱
第3章  八幡太郎の光と影
第4章  河内源氏の没落
第5章  父子相克
第6章  河内源氏の壊滅
むすびー 頼朝の挙兵

≪内容≫
「河内源氏」は一般に言うところの「清和源氏」のことである。通説とは違う河内源氏の各世代の棟梁...続きを読むを詳説している。特に義家、義朝の話は面白かった。
著者のいう、武士も貴族の流れであり、当時の支配層に臣従するなかで、特に受領、地頭として生活をしていることと、平安後期から院政期の政治的流れ(戦乱など)に翻弄されていった様子がよくわかった。これを授業に取り入れるのは、ちょっと大変だが…

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Posted by ブクログ 2011年12月24日

平安後期の河内源氏の実態を描く。「武家の棟梁論」を中心とする発展段階的な河内源氏理解を一蹴し、軍事貴族として王権・摂関家とも深い関係を持ちつつ、自力救済という側面もあわせ持ち、盛衰を繰り返すという等身大の河内源氏像を提示している。保元・平治の乱当時、源氏と平氏はまったく対等な立場ではなかったという指...続きを読む摘は新鮮だった。対立説への痛烈な批判が随所に織り込まれているのも、ある意味興味深かった。河内源氏を通して、平安後期政治史の良い復習になる一冊だった。

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Posted by ブクログ 2011年11月10日

あらためて関連書籍を紐解きたくなりました。
歴史は楽しい。
興味を引く事で溢れていることを感じます。

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