あらすじ
古典文学の名作に数えられている『おくのほそ道』だが、芭蕉にとって紀行文を書くことは趣味であり、修練の一つであったにすぎない。芭蕉は、「俗」を対象とする俳諧を、和歌や連歌と同等の文学に高めることに苦心したが、生前それが叶うことはなかった。本書は俳諧師の名乗りをあげた『貝おほひ』以降の作品を丹念に読みながらその足跡を追い、「俳聖」としてではなく、江戸を生きた一人の人間としての実像を描く。
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Posted by ブクログ
松尾芭蕉の生涯をたどり、その実像にせまっている本です。
芭蕉は「俳聖」と呼ばれ、「歌の聖」と称された柿本人麿に比される存在として神秘化されてきました。とくに彼の前半生については史料が乏しいことも、その実像が知られないままになった理由でもあります。著者は、『芭蕉―転生の軌跡』(1996年、若草書房)や『芭蕉―二つの顔』(1998年、講談社選書メチエ)において、とりわけ芭蕉の前半生について従来の説をくつがえすような実像を明らかにしました。さらに『全釈芭蕉書簡集』(2005年、新典社)を手がけたことで、芭蕉を取り巻く背景について多くの知見に触れることになります。
これらの仕事を経て、「従来示されてきた芭蕉像とは少し異なった芭蕉像が、私の脳裏に形成された」と著者は本書の「あとがき」で述べています。本書には、芭蕉を取り巻くさまざまな事実に通じた著者によってえがかれた、おそらく芭蕉の実態に近いと思われる姿が、わかりやすく解説されています。
実証を重視する歴史学者のなかには、世間に流布してきた「虚像」をあばき立てることに情熱を燃やすタイプの研究者がときに見受けられますが、著者は実像と虚像の乖離に意識的でありながらも、等身大の芭蕉の前半生と、俳諧にあらたな芸術性を求めて格闘した芭蕉の後半生の双方に対して、バランスのとれた目くばりをおこなっているように感じました。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
古典文学の名作に数えられている『おくのほそ道』だが、芭蕉にとって紀行文を書くことは趣味であり、修練の一つであったにすぎない。
芭蕉は、「俗」を対象とする俳諧を、和歌や連歌と同等の文学に高めることに苦心したが、生前それが叶うことはなかった。
本書は俳諧師の名乗りをあげた『貝おほひ』以降の作品を丹念に読みながらその足跡を追い、「俳聖」としてではなく、江戸を生きた一人の人間としての実像を描く。
[ 目次 ]
第1章 江戸へ出るまで
第2章 江戸俳壇と芭蕉
第3章 失意と転生
第4章 旅の始まり
第5章 『笈の小文』の旅
第6章 『おくのほそ道』と『すみだはら』
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