【感想・ネタバレ】経済大国インドネシア 21世紀の成長条件のレビュー

あらすじ

リーマンショック後の二〇〇九年秋、欧米の格付け会社が、インドネシアの持続的成長能力と財政的安定を評価し、国債の格付けを引き上げた。以来、インドネシアの有望性は世界が注目するところとなる。二億四〇〇〇万近い人口と豊富な資源を背景とした潜在的な国力は、二〇〇四年、ユドヨノ政権になって以降の政治的安定によって、さらに強固な成長要因となっている。中国、インドに続く"アジアの大国"のこれからを展望する。

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Posted by ブクログ

今度は経済の面から見た時のインドネシア。外資、華人、地元民など資本が入り乱れている様子など、興味深い。変わりつつあるというのが、キーワード。

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2019年06月02日

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少し古いが、著者の目的通り、インドネシアの今を政治経済の角度から的確に伝えている良書。インドネシアでビジネスする際には頭に入れておきたい。
更なるアップデート版を期待する。

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2016年10月15日

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インドネシア現地調査に行くためゼミの輪読本として読んだ。
インドネシアの政治・経済・文化が章ごとにまとめられている。インドネシアの全体像を把握するのに役立つ。
興味のある分野を深く調べて、深い知識の習得を続けていきたい。

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2015年08月03日

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インドネシアに関係する日本人必携の便利な本。ユドヨノ政権になって以降の政治的安定の歴史的背景、成長率6%の意味、人口ボーナスの成長促進効果など、インドネシアの過去、現代、未来を考察するのに役立つ。また、現在、インドネシアで活躍する主要人物、政党、財閥、企業がかなりの割合で網羅されている。ガユス事件を取り上げている日本の書物はこれだけと思う。知ったかぶりに便利な図版豊富。数年後に改訂版が出版されるのを願う。また、索引をつけてくれるとありがたいが、これは贅沢か。

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2012年07月19日

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インドネシアに関して非常に内容の濃い良書だと思います。ぜひこちらのカンボジアミャンマー版も欲しいです。以下備忘録。

2011年5月インドネシア経済開発加速拡大マスタープラン
➡インドネシアが目指すべき将来像

グローバルな食糧安全保障の基地であり、農業、農園、水産業の各産品と鉱業エネルギー資源の加工センターでありそしてグローバルロジスティクスセンターであるインドネシア

➡国内大資本はパーム油や石炭輸出の担い手。一方重工業からは足を抜きつつある。オランダ病現象。

➡新興企業家 ハイルル タンジュン
パラグループ

➡ 2004年に民主主義を確立する。政治体制の安定。
2030年かけてインドネシアは人口ボーナスの効果が最も大きくなる時期に差し掛かる。

タイやベトナムとの違い
➡人口規模の違いから、経済規模が違う

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2012年05月29日

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一度はBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)に、もう一つの「I]を加えるかとまで云われたが、スハルト政権以後の民主化のうねりでインドネシアは混沌とし(赤狩りで大虐殺があった)、結局経済発展をする機会を逸してしまったインドネシア。今ではVISTA(ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチン)の1つとして数えられる。
インドネシアは二億人を超える人口大国であり、東西の広さはアメリカ合衆国を超える広さを持つ。またイスラム教国として有名であるが、キリスト教やヒンズー教、仏教も抱える多民俗・多宗教国家である。それが故のコンセンサスによる政治がなされ、今では日韓台に続く民主国家であるとまで云われる
。ただ腐敗はまだまだ多いようで、これからの改革が求められる。
今までは成長のモデルは「外資導入」であったが、むしろインドネシアは国内資本の育成にも力を注いでいる。華人の商人がいたこともあるが、やはり自由化が進むインドネシアの上で、「外資・内資」という形はもうないのかもしれない。たしかに外資導入を促進した国家は、維新体制の韓国と戒厳令下の台湾であった。インドネシアモデルは、これからの経済発展の道標かもしれない。

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2012年04月05日

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手元に置いておくと、新聞が読みやすくなる1冊。

国がどういった条件でなら、成長していくかがよくわかる。

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2012年01月31日

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インドネシアの近代を経済的視点から俯瞰した良書。
2011年発刊だが、今尚大いに参考になる。

経済成長が続くインドネシアであるが、実際に訪れるとジャカルタには近代的なビルが建つ一方、裏通りには低所得者層の居住区がある。その格差・落差に驚かされる。タイトルに
『経済大国』とあるが、感覚的には買い被り過ぎ。

人口ボーナス、民主化の進展、経済テクノクラート(人材)や華人財閥・プリブミ企業の規模拡大など、経済発展の素地は整っており、政治の安定・適切な経済政策がなされることでインドネシアの経済発展はより強固なものになるだろう。

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2017年01月12日

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政治的な問題が取り除かれつつあること、人口ピラミッドが適した状態にあることから、インドネシアが今後10年以上発展し、経済大国となる可能性があることを分かりやすく説明している。

今までインドネシアという国についてほぼ無知であった(アメリカより横幅が大きいということすら知らなかった)が、非常に平易で読みやすかったおかげでかなり詳しくなれた気がした。

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2013年05月25日

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ネタバレ

JETROアジア経済研究所の方が書かれています。

やはり,政治,自然災害,治安問題,環境問題,金融市場など,条件と役者は,
組み合わせとタイミングが重要であると感じた.
インドネシアにおいて,これからの10年,20年がどのように変化するのか,
長期的な成長と安定にむけて,どのような努力を今インドネシアが重ねているのか,
ここに到るまで,どのような足跡があったのか.
非常に精細で,とてもよくインドネシアのいまがわかる本だったと思う.

スハルト時代のインドネシアに関する本(20年弱前のもの)を読んだ後だったので,
変化するインドネシア,という印象が非常に強く残りました.

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2013年03月13日

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インドネシアの政治、経済、文化的な現状を概説する一書。
文章は平易で細かくまとめられており、あまりにもインドネシアに対し
無知であった自分にとってよい入門書となった。
インドネシアの現状を記した上で、日本との関係を描き
終章できれいにまとめる構成も飲み込みやすい。

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2012年08月03日

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インドネシアの魅力について、マクロ的に各国との比較感を持って理解ができる良書。
読むとインドネシアが政治も含めてまともでバラ色の国のように思えるが、実際に当地に赴いている方に話を聞くとそうでもないとのことなので、話半分に考えておいたほうが良さそうではあるが。

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2012年07月12日

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佐藤百合著「経済大国インドネシア」中公新書(2012)
リーマンショックの後2009年秋、欧米の格付け会社がインドネシアの持続的成長能力と財政的安定を評価し、国債の格付けを引き上げた。以来、インドネシアの有望性は世界が注目することとなった。世界代4位の2億4000万人近い人口と豊富な資源を背景とした潜在的な国力は、2004年、ユドヨノ政権になって以降の政治的安定によって、さらに強固な成長要因となっており、中国、インドに続く、アジアの大国へと成長している。

*インドネシアの有望性をいち早く発券したのは、証券市場関係者であった。2009年6月、モルガンスタンレーは『BRIC'sにもう1つ「I」を加えるか』と題したレポートを発表。7月にはアメリカ系投資機関が「チャインドネシア」という造語をつくり、中国、インド、インドネシアの3カ国がこれからの成長国だというメッセージを発信した。
*インドネシアは世界最大のイスラム人口大国にして、民主主義国である。今インドネシアで起きている変化はムスリム世界において、最も刮目に値する進化である。権威主義から脱したインドネシアは、民主主義国家として社会文化的に活気づき、経済的に繁栄しうることを証明した。
*インドネシアが成長を持続するための2つの条件として、第一は、人口動態である。これから20年、インドネシアが成長のチャンスを迎えることを人口ボーナスという考え方がある。第二は、政治体制の安定化である。

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2012年04月30日

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ネタバレ

現在のインドネシアについて知りたい時、この本を読めば間違いない。
中公新書だけあって中身が濃い。

インドネシアの成長条件
①人口ボーナス(2030年まで)
②政治体制の安定とフルセット主義ver2.0

インドネシアは日本に親しみを感じている。
これをうまくやればインドネシアといい関係を築けるはず

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2012年04月26日

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成田空港で目につき購入し、インドネシアに向かう機内と着いてから読んだ。

インドネシアの国の成長というのを、過去や現在の政治体制や人口動態などから分析。
経済という視点でインドネシアの可能性を知れて、旅行く前に読めて良かった!

実際に2010年夏と2012年冬に行ったことで本書の内容の一部も肌で感じたり、友人から聞いたりした。

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2012年02月22日

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インドネシアの入門書として読んだ。経済が詳しければもうちょっと楽しめたはず。仕事絡みの読書だったが、この国の資源、人口を含めた潜在力を痛感させられた。まだぼやけた印象だが、再読する機会があるはず。

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2012年02月19日

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ネタバレ

日経新聞の紹介で購入。著者の佐藤百合氏は上智⇒インドネシア大⇒アジア経済研究所。
感想。日本人のビジネスマンが知りたい今のインドネシアのことをわかりやすく教えてくれました。あとがきのコメントの通りです。今までインドネシアのことは、イスラム過激派や東ティモール独立のこととかで、行くのはとても考えられないを思ってましたが、そうじゃないんだよ、と気づかせてくれる本でした。
備忘録。
・大国だ⇒人口、資源、国土(海洋も含め)、貿易拠点になりえる
・人口ボーナス⇒(生産年齢人口÷総人口)で計算される比率が上昇される局面。生産物が国の成長に充てられる成長期。でも増加する生産年齢人口が雇用と結び付かないとむしろピンチ。中国、韓国、タイは人口ボーナスがすでに終了。日本はとうの昔に終了。インドネシアは2030年まで続く。
・民主主義体制の安定:スハルトは反共を徹底し、国の開発に大注力、でもアジア通貨危機で国の経済状況は崩壊。そのあと紆余曲折あり、今のユドヨノ政権は長期安定政権となっている。汚職を排除し、国内の融和にも務めている。
・経済:現政権は全方位工業の発展(軽工業、重工業、資源加工業)を狙う。特に資源加工業は重要項目。今は内資は農業、外資は工業。資源を輸出し、加工品を輸入している。
・課題:インフラの未発達。この理由はアジア経済危機の後の対外債務圧縮によるもの。アジア危機の大打撃は、国内資本は失敗の少ない農業に注力する理由にもなっている。
・宗教:イスラム大国。でもヒンズー、キリスト教各派も共存。インドネシアの建国理由はオランダからの独立。その目的の一致が大事だった。
・対日本:今は日本文化大人気。でもかつては日本軍の侵略あり。

そんなとこ。

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2012年02月19日

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最新のインドネシアを俯瞰する良書。

スハルト以降の経済面におけるインドネシアの歩みを、政策・市場・要人といったポイントから多面的に解説している。

インドネシアの成長が人口ボーナスの恩恵によるものであることは広く理解されているところではあるが、その負の面として6%以上の成長を達成しないと労働人口を吸収しきれない、という点はインドネシアのマクロ経済を観察する上で重要な点だと思う。

第6章において産業界のキーマンについて記述されているが、華人が大半を占める点に驚かされる。この点についても、歴史的・政策的背景が記されているので理解が進む。

一方、広範なインドネシアの各地域性についての記述は第2章において一部触れられているのみで、実際のビジネスを考える上では更なるレポートが欲しいところ。

昨今のインドネシアへの注目度を考えると、版を重ねることは確実なので、今後のアップデートにも期待したい。

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2012年02月07日

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インドネシア経済の専門家によるインドネシア経済論。インドネシアが今後経済的に有望であることが論理的に述べられている。インドネシアの学生論文を取り上げ、日本の占領時の残虐さや従軍慰安婦を問題視しているところ(p231)は、中韓によりでっち上げられた米国内の論調を根拠にしていると思われ、真実ではないと思われる。
「インドネシアの人口ボーナス期間は、タイ、韓国、中国やベトナムよりも長く、2030年まで続くと見られる」p36
「インドネシアの外交戦略に特徴的なのは、特定の大国の影響下に入らない、二大グループのいずれにも与しない、という思考法である」p95
「(インドネシアの渋滞が激しいことから)一日の1/3はベッドの上、1/3は職場、残りの1/3は道路の上」p102
「総人口に占める生産年齢人口の比率が上がると、第一に、労働の投入量が増え、成長を促進する。第二に、所得を手にする人口が増え、貯蓄率が上がる。貯蓄が投資に回って資本の蓄積量が増加し、成長が促される。第三に、出生率が低下すると子供一人当たりにかける教育投資や保健衛生サービスが増える。就業者の教育や健康状態が改善され、技術などの生産性が向上して成長を後押しする」p132

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2018年11月13日

Posted by ブクログ

刊行から時間が経つが(2011年12月刊行)、インドネシアの「今」と「これから」を知る上で、役に立った。内容はやや専門的で、学術的なところもあるが、わかりやすく解説されていると思う。内容の濃い新書だった。

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2017年03月19日

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イスラム教と民主主義。日本にいてはイメージがわかないその結びつきをアジアにおいて成し得ている国が、インドネシアだ。

アジアの大国、中国やインドの影に隠れつつ、日本の二倍の人口と五倍の国土を持つインドネシアの今とこれからの経済力とはいかほどのものなのか。近年の数値と国の政策から読み解く新書。

生産年齢人口比率が高まる人口ボーナス。
資源依存体質からの脱却。
民主主義体制の確立。
投資と開発の政策支援。
経済学者と実業家の政治参加。
そして日本との関わり。

主題はインドネシアの改善の歴史であり、筆者はインドネシアの広報担当なのではと疑うほどに成し得たことへの賞賛と、明るい未来が語られる。

国家経済を語るにしては読みやすいとは言っても、本書を読んで投資に乗り出す人はいないだろう。新書なので、一意見として流し読んでおくには悪くないと思える一冊。

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2018年10月20日

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政治と経済政策が主題でおもしろかった。
次は地方州の実態と展望も気になる。
大統領選ももうすぐ行われ、もうほぼ次は決まったけれど、ユドヨノの残した安定と成長の路線を進めていけるか、不安ながら期待したい

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2014年05月01日

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国主導としてのインドネシアの経済発展の流れが掴めた。しかし、ジャカルタを中心とする都市部と、美しく多様な文化をもつ地方、経済発展の波及は逃れえないけれども、どう共存していくのか。私の興味の観点はそこにある、と感じた。

文学部として、多様であって美しくてひとが幸福だと感じる社会は、経済発展によって実現可能か。とりあえず、インドネシアに行って、色々なものを見るのが楽しみ。

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2013年07月02日

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インドネシアが経済大国である理由、それは人口構成がピラミッド型であり人口ボーナスの恩恵を受けられるから。そして政治が安定していることが成長の要因である。

インドネシアだけを扱った本ですが、本書の結論は新しくありません。人口が伸びるから市場が大きくなるにつきます。扱っている範囲は経済だけでなく政治についても詳しく書かれています。また、英語を直訳したような文章になっているので読みにくく感じます。

第7章では日本とインドネシアの関係が述べられていますが、日本の存在感が薄れてきている現実があるので、フローではなくストックで見た日本が強調されています。このあたりは日経新聞と同レベルの事しか書かれていません。

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2013年04月02日

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経済大国インドネシア
スカルノ大統領からスハルト体制へ。経済成長年7%×30年。その代わり自由と政治参加は制限された。
スハルト後、
大統領直接選挙が成功。晴れて民主主義国となる。
国民の80%はイスラム教。
首都ジャカルタは渋滞地獄。

外交
インドネシアは、ASEAN議長国。ASEANとしてポジションを取ることで、アメリカやヨーロッパ、新興国群と渡り合う。
関税撤廃か否かを謳うTPPのような枠組みよりも、サンパウロラウンドのような折衷案というか、柔軟な立場を好む。
2004年、国民選挙による初代大統領にユドヨノが選ばれた。
彼は優秀な教授肌の人間で、蔓延していた汚職を減らし、アチェ問題を終局させ、国際会議の場にインドネシアの地位を築いた。
ユドヨノの任期は2014年で切れる。
2011年5月、ユドヨノは「インドネシア経済開発加速・拡大マスタープラン2011~2025年」を発表した。この冒頭で、インドネシアが目指すべき将来像を以下のように示している。
「グローバルな食糧安全保障の基地であり、農業・農園・水産業の各産品と鉱業エネルギー資源の加工センターであり、そしてグローバル・ロジティクス・センターであるインドネシア」
明快。

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2012年08月26日

Posted by ブクログ

インドネシアの政治・経済の状況が詳しく書かれている。
筆者の言うように、今後長期にわたってインドネシアが政治的に安定し、経済運営を順調に進めることができたならば、経済大国となる日も近いかもしれないと思った。
一方で、資源・人口・優秀な指導者が揃っていても、国民全体での教育・学術水準の向上にはまだまだ時間がかかるとの印象があるので、先進国化するのは遠い未来のようにも感じた。

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2012年07月28日

Posted by ブクログ

政治、経済などなどざっと幅広くインドネシアのことがわかる新書。一人あたりの名目GDPがどんどん近づいてくるいく昨今、人口数が経済規模となる、って話しは当たり前すぎるけど、ずきゅーんと響きました。インドネシアには行ってみたい。

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2012年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

インドネシアという国については、資源が豊富で、人口が多いという表面的なことは中学の地理の勉強で知っていましたが、本書を読んでみると、この国の経済成長の可能性の高さを改めて認識することができました。
また、多様性を受け入れる民族性や、日本とはかなり親密な関係にあったことは本書を読んで初めて知りました。
構成が時系列にはなっておらず、時代が行ったり来たりするので、個人的には若干読みづらかったのですが、インドネシアのことを知るには、一度本書を読んでみるとよいと思います。

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2012年04月24日

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 国際関係では、欧米以外には、中東と東南アジアが気になる。

 中国、タイ、ベトナム、インドなど短期間ではあるが滞在したり、本を読んだりして、基礎勉強をしている。これに対して、インドネシアはバリ観光だけで、勉強が基本的に不足している。
 
 佐藤さんは、JAICAの次長さんで、経済、政治などの観点から、最新のインドネシアの分析を提供してくれている。

 気になった点。

(1)スハルトが倒れ、政治的混乱、経済停滞を経て、2004年からのユドヨノ政権で、政治の安定、経済成長が復活してきた。(p17)

 その背景には、人口ボーナスがある。人口ボーナスの効果をあげるための、出生率の低下、生産人口への就職口の確保も比較的うまくいっている。(p38)

(2)従来の日本ビジネスマンの資源提供国、製品売りつけ先という見方を変えて、日本の高品質のサービス、消費財の販売先とし、インドネシアは有望。(p233)

(3)インドネシアのソフトパワーは、民族、言語、宗教を融合した多様性。(p243)

 なお、インドネシアでは、都市と農村の格差が問題になっているようであり、都市計画上の課題も多いと想像するが、この本での記述はない。

 インドネシアの経済社会分析としては、骨太だと思う。

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2012年03月10日

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資源国、2億を超える人口、高い経済成長。
インドネシア経済の今後には漠然とした期待があり、また日本はこの国と密な関係を持つべきだとこれまた漠然とした意識が以前からあった。
すべては投資関連の2次的、3次的情報が元であったが、今回本格的専門家の研究に触れてみて、何がその根拠でありどう期待できるのかを具体的に知ることができた。(正直専門的すぎて難しい部分も多かった)
すべての源泉は2004年に確立したこの国の民主主義である(それには多くの犠牲を必要としたが)。
高い経済成長を実現しながらこの点到達していない中国、ベトナム、マレーシアなどが今後に抱える不安はインドネシアにはないのかもしれない。
人口の面では2億4千万という、労働力提供地であり市場としてとてつもない規模の数そのものに目が行くのだが、注視すべくは人口動態研究の視点であるという。人口動態からのアプローチは最近読んだ経済関係の本でも多く見かける。やはり納得いく説明を得ることができる。
とくに「人口ボーナス」の考え方。総人口に占める「生産年齢人口」の割合が上昇していく局面が経済発展に欠かせないという。すなわち、生産に従事しない従属人口(年少人口+高齢人口)を生産年年齢人口が背負う負担が軽くなっていく局面である。
インドネシアは1970年から人口ボーナス期間に入っており、その終点は少なくとも2030年、あるいはそれより遅い可能性もあるとされている。
ちなみに日本のそれは1990年頃にすでに終了しており、2010~15年の間にタイ・韓国・中国が相次いで終了する。ベトナムは若干遅く20年頃まで続くとされるが、インドネシアはこれらの国よりさらに長く続く。(インドネシアよりも長く続くのはインドとフィリピン)(そしてこの考え方からすれば当然、この人口ボーナスの後にくるのは少子高齢化時代だろう)
日本から純粋に物理的な距離とイスラムという心理的な距離があるインドネシア。けれどやはりこの国は日本にとって今後ますます大事になっていく国になるだろうという考えは本書を読んで確信に変わった。
今世紀半ばにこの国は日本の人口の三倍になり、その頃のGDPは日本を抜いて世界7位になるだろうとされる。本書でも書かれていることだが、日本は戦前から続く考え方を改めてこの国と付き合っていかなくてはいけない。
※本書の主たる主張ではないが、人口規模、国土、民主主義、そして人口ボーナスという要素からすると今後長く成長する真の主役はやはりインドではないかという考えにも読後に至った。

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2012年03月02日

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