あらすじ
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇……ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第5回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理。《週刊文春》ミステリーベスト10国内部門第2位をはじめ各種ミステリ・ランキングの上位を席捲、本屋大賞にノミネートされるなど破格の評価を受けた、大型新人のデビュー作。
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Posted by ブクログ
私は異国ミステリーが好きなのよ(๑♡∀♡๑)
特に好きだったのは⤵︎ ︎
「砂漠を走る船の道」
「凍れるルーシー」⇽イチオシ
「叫び」
「凍れるルーシー」は「火蛾」好きには堪らん(*´﹃`*)
そして評価低くて読むか迷ってる方は是非読んでみてください!私的には大好きでした♡
Posted by ブクログ
2008年にミステリーズ!新人賞を受賞した作品を含む5編からなる短編集。初めて読む作家だったが、その素晴らしさに驚いた。
ジャーナリストとして世界を旅する青年が旅先で殺人事件に遭遇する。思いもよらない動機に驚かせられる。
美しい文章で、各地の風景が心に浮かんでくるよう。
やはり、受賞作品の「砂漠を走る船の道」が一番よかったと思う。
2編目の「白い巨人」は、謎解きはあるものの他の作品に比べて軽い感じで、全体の流れの中で違和感があったが、最後の「祈り」でつながってきて納得。
兼業作家だそうで、作品数は多くないようだが、他の作品もぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
旅とミステリー。5つの作品がおさめられている。個人的にはこれらの物語そのものに魅力を感じた。そこにミステリーの要素が加わり、より深いものになっていると思う。
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読み終わって、思わず溜息をついた。それは話がつまらないだとか、とんでもないトリックにどっきりした、とかではない。純真たるミステリー小説において、ここまで文章を美しく書けるのかと驚く、感嘆の意である。
こういうとなんだか語弊があるような気もするので大前提としていうと、もちろんストーリーそのものも面白かった。後付のようで申し訳ないが、ミステリーはミステリーとして面白くなければ文章がいくら美しかろうとよい作品とはいい難い。なのでストーリーが面白いのはあくまで前提。そのストーリーを彩るスパイスとして、文章の美しさがある。それにしてもこの作品にはそのスパイスがとびっきり効いていた。
主人公は海外に関する雑誌を発行する出版社に勤めいている斉木。その彼が取材として訪れる国の先々において巡り会う謎が物語を形成する。
中でも砂漠のキャラバンに襲いかかる連続殺人の謎を描いた『砂漠を走る船の道』、死後250年経っても死体の腐らぬ修道女リザヴェータのいる修道院で起きた悲劇にまつわる『凍れるルーシー』。この2つは是非とも読んで欲しい。読み終わったらつい溜息が出てしまうだろうから。ただ読まなきゃわからない作品価値が魅力のほとんどを占めているので、ストーリー紹介はこんなとこにしておこう。
この作品の何が凄いって、作者の文章力が織り成す色彩の豊かさだ。計5つの話が入っているのだが、これら全部の色が違う。色々な国々での、という設定がこれほど生きた作品はない。登場人物たちと共に思わず色々な国を探検した気分になるのは、脳内にその豊かな色彩のおかげで無意識にでも情景描写が思い浮かぶからだろう。
さらに肝心のミステリーのテイストも全然違う。古典派謎解きものから叙述トリック、人間の精神からなるちょっとしたホラーテイストまで上手い案配で配置されているからズルい。これがデビュー作品だというのだから梓崎優、恐るべし。
残念ながら、2016年現時点において、梓崎さんの作品はこの『叫びと祈り』と『リバーサイド·チルドレン』の2つしかない。しかしこれだけの文章力を持つ作家だ。いつかミステリー界を唸らせる大作を引っ提げて来るに違いない。それまでに、是非ともこの作品を一読してみては如何だろうか。
Posted by ブクログ
五つの短編ミステリが掲載されている連作小説。
広大な砂漠、情緒あふれる風車の風景、秋の美しさとほの暗さを感じさせるロシア、熱帯の不快さと未知の不気味さ。異国の趣を流麗に描いた筆致がエンタメミステリとしてだけでなく、文芸としての読み応えを増させている。
ロシアを描いた「凍れるルーシー」は、読者の気付かぬうちに事件が起こり、突然の解決パートに入る独特な手法。
そもそも何が起きていたかの解説と解決が同時に行われる新しいパターンだった。
どの作品も、その国、その場所だから成り立つトリックや事件ばかりで、読みながら未知の扉が開けていく感覚だった。
建物や風景の説明が細かく、若干読むのにもどかしい思いをしたり、わかりにくかったりする部分もある。しかしそれを差し引いても、じっくり読む価値のある小説だった。
Posted by ブクログ
海外の動向分析の雑誌を発行している会社に勤務する男性の、海外で出くわした出来事の連作短編ミステリ
海外の動向分析を主な内容とする雑誌を発行する会社に勤務する青年 斉木
NPOや政府関係機関も一目置く情報誌の質を維持するためには相応の取材が必要なめ
多言語を操る彼は海外を飛び回る生活を送っている
年間百日以上を海外で過ごす彼が巻き込まれた、様々な出来事の謎解きのお話
収録は5編
・砂漠を走る船の道
・白い巨人
・凍れるルーシー
・叫び
・祈り
砂漠のキャラバンに同行した際の連続殺人事件
風車に入って消えた人の謎
朽ちない聖人の遺骸調査への同行
エボラ出血熱と思われる感染症で滅びかかっている南米の部族
療養施設らしき場所に入院させられている「男の子」とその子を見舞う「青年」とのちょっとした推理ゲーム
ミステリなので、フーダニット、ハウダニットも描かれているけれども
この作品の特筆すべきところはホワイダニット
海外を舞台にしているのにもちゃんと理由があり
日本とは異なる文化、その価値観でしか成立しない意外性
部外者には理解できない、内なる人だからこその理由
そして連作短編集たらしめている繋がり
完成度高いなぁ
Posted by ブクログ
おもしろかった。「凍れるルーシー」では、明確な解明がされなかったのが残念。すべて説明がつくような話だと期待してしまった。
ストーリーが短く次々読める。最終話だけは予想が当たった。
Posted by ブクログ
ジャーナリストである主人公が、取材に赴いた世界各国で遭遇する謎を描いた連作短編集。
梓崎優さんのデビュー作です。
ミステリ要素のみに着目すれば、少々物足りなさを感じてしまうかもしれません。
でも、その土地に根ざした文化や価値観が、謎と深く関わっているところに、他のミステリ作品とは一線を画する斬新さがあるように思います。
それに加えて、風景描写と情景描写の巧みさは新人離れした印象で、他の国々を舞台にした作品も読んでみたくなりました。
10年以上前の作品とのことで、今更シリーズ化するのも難しいかもしれませんが、物語としての整合性の高さと、ミステリの新たな可能性を感じる一冊だと思います。
Posted by ブクログ
サハラ砂漠、スペインの風車、ロシアの修道院、南米の密林など、世界中を旅しているかのような感覚になった。
その土地の空気感まで伝わってくるようだった。
5つの短編小説のうち、最初のサハラ砂漠とロシアの修道院が面白かった。
Posted by ブクログ
何かすっかりお馴染みとなった書き出し(^ ^;
「一応ミステリに分類したけど」(^ ^;
一冊通して、何とも「高貴な」印象を受けた。
テーマ、ストーリー、推理、人間模様、
そして文体や繊細な感性がにじみ出る表現。
すべてが「俗」を超え、神々しく光っている。
一応殺人事件が起きたりもするし、
「探偵役」による「謎解き」もきちんとある。
が、それは決して物語の主流ではない。
日本人には馴染みの薄い、海外の特殊な環境の中、
価値観やものの考え方がまったく違う人々との邂逅と齟齬
みたいなものが大きなテーマかと。
高貴な文体ながら、ハンマーで頭を殴られるような
インパクトの強い内容が次々と現れる。
謎解きが済んだらすっきりおしまい、というような
凡百のミステリとは一線を画す作品となっている。
一応は「連絡短編集」であるが、一話ごとの関連性は
ほとんど無い、と言える。
それが最終話で「環が閉じる」ようにつながってきて。
読者が「あ、そういうことだったのか」と気づくも、
本文中に「あからさまな答合わせ」を書かない。
それもまた「粋」である、と思った。
ミステリの形態を取りつつ、純文学であり、
私小説的でもあり、またある意味詩的な側面も持つ。
読み手の力量を試されるかのような重厚な一冊。
これがデビュー作とは、本当に末恐ろしい(^ ^;
ちなみに、初めて読んだこの作者の作品は、
高校の同窓会を舞台とした全く毛色の違う一作で(^ ^;
もっと軽くて「読みやすい」感じではあったが、
意外な展開に驚かされ、再読してみると
周到な伏線に気づくという秀作で(^ ^
何という奥行きの深い人であろうか。
これからも是非追いかけ続けたいと思います(^ ^
Posted by ブクログ
5章立ての短編集で、同じ主人公を持つ以外、物語間のつながりは殆どなし。で、舞台となる国もそれぞれが異なる。更には、その文化に住まう人間ならではの事件が用意されていて、設定の巧みさに舌を巻く。さりげない情景描写も美しくて、無理なその世界観にいざなってくれる。最終章で、主人公自身が救われる祈りも素敵。うち3章では殺人も起こるし、広義のミステリであるには違いないけど、文学性の高いものだと感じました。
Posted by ブクログ
世界をまたにかける語学堪能なジャーナリスト。まぁたいがい日本人でバリバリ外国語をしゃべるって時点でなんかイラッとしますね。何故なのか。やはり日本人なら日本人英語をしゃべるべきではないか、という謎の先入観があるからでしょうなぁ。まさに出る釘を打つという日本人の精神。
しかしこの出木杉君みたいな男の行くところ行くところ、事件が起きる!コナンや金田一ばりのトラブルメーカーなわけですね。というか死神です。こういういけすかないやつには酷い運命が待っている、という神様はちゃんと見てるんだな、とほっとしますね。でもそんなひどい目にあってもイチイチ哲学臭いというか、あれですな、中二病?的な難しい話をすぐ持ち出すから、やっぱあいつは鼻持ちならないなって言われるわけですよ。
でもまぁ読書家たるもの、これくらいの御託を並べている本の方が読んだ感があって良いのです。
Posted by ブクログ
このミスベスト10、2011年版3位、本屋大賞2011年6位。良質の小説。独自性の高いテーマ、意外性のあるストーリー、高尚な文学的表現、工夫を凝らした構成。連作短編集だけど全体が一つのストーリで構成されてる。お話も面白く飽きさせない工夫があるのですが、自分にとっては少しリズム感に乏しく、一気読みといった感じではない。こんなのが好きっていう人もいると思うけど、若干難解で読みにくい。読んでるときに意識を失ってしまうこともたびたび。村上春樹とかも毎年文学賞候補なるぐらい文学的だと思うんだけど文章はとても読み易いですよね。もう少し平易な文章で文学的な香りを出してもらえるとありがたい。まあ、こういった丁寧に作られた本は、読む方ももう少し落ち着いてきちんと正対して読めばまた異なる感想になったかも。細切れの隙間時間にバタバタと消費するような読み方ではもったいなさすぎるのかも。特に最近は何かとバタついてたし。
Posted by ブクログ
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、
スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦。
一人の青年・斉木が世界各国で遭遇する数々の異様な謎。
連作となっている短編集で非常に読み応えがあった。
舞台が世界各国に飛ぶので想像が壮大となり、
目に浮かぶ情景も知っている景色ではないのでそういう意味では新鮮。
スペイン編『白い巨人』はそのオチに驚かされた。
なるほど、そういうことか!という喜び。
まさに叙述トリックの最たるものであった。
これがデビュー作とは、末恐ろしい作家の誕生ではないだろうか。
Posted by ブクログ
世界各地で起こる事件を5編集めた連作短編集。
異国の地では我々日本人の常識とは別の異世界の論理で殺人事件が起こるということを認識させられる。
「砂漠を走る船の道」「凍れるルーシー」「叫び」が素晴らしい!
Posted by ブクログ
世界各国を舞台にした短編集。
それぞれの土地で起きる殺人が日本人ジャーナリストの斉木の視点で描かれる。
解明される動機が各地の文化や感性に根ざしたものであるのが新鮮。
Posted by ブクログ
学園ミステリアンソロジー『放課後探偵団』の「スプリング・ハズ・カム」がよかったのでこちらの短編集にも自ずと手が伸びる。
「砂漠を走る船の道」や「叫び」における限界状況におけるホワイダニットという切り口、視点というのはなかなかに面白いが、前者の解に感じた痺れるような切れ味が後者には感じられず、物足りなさがある。「砂漠を」のクオリティを期待していたが、ほかがもうひとつだったかな。「砂漠を」も、動機の部分はおもしろかったが、倒叙トリック的なものは不完全燃焼感が察せられてしまったこともあるけどそれを差し引いても今一つおもしろさに繋がっていないような。全体的に現実離れしているように思える異国の地を舞台にして幻想的かつ旅愁を誘う雰囲気は味わいがあるだけに期待値が高くなってしまった感がある。
Posted by ブクログ
・砂漠を走る船の道
んんん、これはどうなんだろう。
意外性はあった、けれど。
最初の出だしが素敵だっただけに、残念な気持ちの方が大きいかもしれない。
・白い巨人
んんん!本当に素敵な文章!先が気になる話の進め方、雰囲気大好きなのに!
最後が残念すぎる。泣いてたから気づかなかったはさすがにない。
サクラの発想は素敵。ブルーのサングラスのせいか、斉木が妙にかっこよく感じる。
・凍れるルーシー、叫び
これは面白かった。いい意味でぞわぞわする。
・祈り
んんー。どういう状況なんだ?と先が気になって読み進めたけれど、最終的に特に驚くことはない。
全体的に世界観、描写、雰囲気は素敵すぎる。かなり独創的であるところはとても好き。
だけれど、ミステリーとしてはどうなんだろう。凍れるルーシーと叫び以外は、途中までが面白いが故に、結末に物足りなさがあった。
Posted by ブクログ
短編ですが、どの話も重厚で文章が綺麗です。
どれから読んでも大丈夫ですが「祈り」だけは最後に読みましょう。
個人的には「白い巨人」がおすすめです。
Posted by ブクログ
作者のデビュー作らしく、表現が固く描写に技巧を使い過ぎ、非常に読み難く場面をイメージしにくい。5作とも舞台が世界中の各地(中東、スペイン、ロシア、ブラジル、)となっており、余計知らない世界の描写のためイメージできない。
ただ第5回ミステリーズ!新人賞を受賞し、綾辻行人や有栖川有栖から激賞されたという一番最初の『砂漠を走る船の道』や『白い巨人(ギガンテ·ブランコ)』は、読んでいて自分が勝手に思い込んでいた想定を見事にひっくり返され、やられた感はあった。
また最後の『祈り』は、前4作に登場する斉木が精神病院(?)で、自分が世界中で経験したジャーナリストとしての体験を失われた記憶として記録したものと言う意味でまとめているようだが、やっぱりよく分からない。
Posted by ブクログ
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人を始めスペインの風車の丘、ロシアの修道院などひとりの青年が世界各国で遭遇する数々の異様な謎を解き明かしていく。
なんとも不思議な雰囲気の話。
最初の「砂漠を走る船の道」はミステリーとしてとても面白かったが他は微妙。
謎解きというより異国文化を描いた作品。
Posted by ブクログ
結局は最初の引用文に尽きるのかな。
"だいじなのは、お話の裏にこめられた意味なんだよ"
まず連作とは知らずに読み始めたので、「砂漠を走る船の道」の舞台に感動して、重厚な話であるといいと期待して臨んだら、割と早くに終わってしまい、気持ちがちょっと萎んだ。
メチャボも犯人も手がかりをたくさんくれていたので「!!」となることはなく、とにかく読後の印象はラクダと砂漠である。それは凄くいい。もっと読みたかった。
「白い巨人」のサクラもあからさまだし、彼女が生きてるのもかなり示唆してくれてたし、何よりフェイクの話で冒頭の引用文の存在感が増した。わかりやすいのはデコイで裏があるのかな、と。
「凍れるルーシー」「叫び」からタイトルが気になりだして「祈り」で森野が出てきてヨースケなんだろうなと思ったときに、いよいよわからされてる感がして、洞窟クイズのように現実は正解がなく、フェイクに動機がどうの解明にあーだこーだと言ってることへの皮肉なのかな?と思ったけれど、よくわからなかった。
情景の描写が綺麗で連作もきれいに纏めた印象だけれど、結局裏の意味は私にはわからなかった。
「叫びと祈り」は斉木の心情ではなく作者さんの心情なのかな。
時を置いてまた読めばわかるかな?
Posted by ブクログ
連作集。最初の仕掛けは面白い。これもある種の密室、そしてミスリード!しかしその後、ちょっと雰囲気に凝りすぎて、ミステリの部分はむしろ意味不明、読後モヤモヤする話が続く。最終話に少し揺り戻しがあり、紀行ものとしてファンタジーを楽しんだことにする。
Posted by ブクログ
先の気になるストーリーも相まって、とても読みやすい。
日本ではないどこかの、文化や風土に基づいた謎解きということで、
非常に面白く読んだ。
しかし、最終章”祈り”の位置づけは、とあるサイトの解説を読まないと理解できなかった。
この1冊が、最初は探偵役であった主人公が、自分の理解できない何者の存在に心情を打ち砕かれていく
という構成だったとのことで納得。
Posted by ブクログ
「斉木」という青年が世界各国で遭遇する異様な謎について書かれた4つの短編と、その後日談が書かれた短編集。文章が詩的であり、好きな人にはたまらないんだろうけど、あまり肌に合わなかった。
「砂漠を走る船の道」、「凍れるルーシー」及び「叫び」は、動機に焦点が当てられた作品。いずれもその異様な動機は、心に残る。「白い巨人」は、日常の謎風のミステリだが、スペインが舞台であり、叙述トリックにより主人公がスペイン人であることが伏せられている。「白い巨人」は、サクラと表記されているスペイン人男性とアヤコという日本人女性の恋の話で、読後感が良い秀作。
白眉は、「凍れるルーシー」。生ける聖人だった修道院長であれば死体となっても腐らないと考えて殺害したという動機も驚愕だが、聖人リザヴェータの腐らない死体が消失したのは、聖人リザヴェータが復活したという真相がなんとも…。ジョン・ディクスン・カーの『火刑法廷』を思わせるラストが秀逸。
ただ、5作目の「祈り」がイマイチ。読解力があれば名作なのかもしれないが、詩的な文体の読みにくさも相まって、何が言いたいのか分かりにくく、楽しめなかった。トータルでは★3かな。