あらすじ
地方自治体は膨大な財政赤字を抱え、地方の都市は均一化して特色を失い、公共事業以外に雇用がない……。地域社会は生活の場としても労働の場としても魅力を失い荒廃している。本書ではその再生に成功したヨーロッパの事例を紹介しながら、中心的な産業や重視する公共サービスなどがそれぞれ異なる、めざすべき将来像を提示する。そして日本型の生活重視スタイルを財政・政策面からどのように構築するかを提言する。
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Posted by ブクログ
[ 内容 ]
地方自治体は膨大な財政赤字を抱え、地方の都市は均一化して特色を失い、公共事業以外に雇用がない…。
地域社会は生活の場としても労働の場としても魅力を失い荒廃している。
本書ではその再生に成功したヨーロッパの事例を紹介しながら、中心的な産業や重視する公共サービスなどがそれぞれ異なる、めざすべき将来像を提示する。
そして日本型の生活重視スタイルを財政・政策面からどのように構築するかを提言する。
[ 目次 ]
序章 人間生活を問い直す
第1章 工業社会の苦悩
第2章 市場社会の限界
第3章 財政の意味
第4章 日本の地域社会の崩壊
第5章 財政から再生させる地域社会
第6章 税制改革のシナリオ
第7章 知識社会に向けた地域再生
終章 地域社会は再生できるか
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
財政学が専門の教授の本ということで、財政学色の強い本だった。
財政学についての、教養はもちろん、基礎的な知識や概念を押さえることもでき、さらに財政学の重要性をわかった上で、日本において、どのように地域再生をすべきかを学ぶことができた。
財政力とは、財政需要と課税力で決まること、地方自治体は、出入りが自由なために、所得再分配を実施するのは、出入りが不自由な国家(中央政府)となること、などが財政学の基本的な知識として役に立った。
とりわけ、「公共財を民営化すれば、市場で供給することになる。つまり、そのサービスは購買力に応じて分配されることになってしまう。したがって、民営化するか否かは、それが欲望かニーズかが決定の基準となる。」(158頁より抜粋)
これは、公共団体がいかに市民に寄り添うべきかを明確に示しているとともに、公共財、民営化が如何なるものかを表すまとまった明快な文章だと思う。
地域の自然(環境)と文化の再生を軸にした、ボトムアップ型の地域社会再生の成功例として、フランスのストラスブールや、スペインのビルバオ、スウェーデン、高知市、札幌市、掛川市(静岡県)、湯布院町(大分県)などを取り上げており、その有用性と可能性を知った。上の成功例の都市に、ぜひこの本の内容を踏まえて、足を運びたいと思う。特に、ストラスブールの最新鋭の路面電車(LRT)は目を引くもので、軌道は芝生と共にいきている。ストラスブールでは、鉄道でさえ、緑と寄り添っているのだ。
また、筆者は、地域再生は地方自治体が財政の自己決定権を持つ重要性を説いており、集権的分散システムから分権的分散システムに改めるべきだとも主張している。わかりやすい表現だ。
地域で生活を完結できないから、地域は廃退していくとも書いていたが、本当にその通りだ。
ヨーロッパの元工業都市における、地域再生の過程は、日本でも応用ができる現実的かつ健全なものであった。
そして、ヨーロッパの地域再生、もっと言うなら、本書において、はずせないキーワードには、「サステイナブル・シティ」というものがあった。ヨーロッパでは、持続可能な地域社会は、市場メカニズムに依存しない、(自己決定権を持った)市民の共同経済によって創ろうとしているのだ。そこでは、「補完性の原理」も徹底されている。それは、「個人ができないことは家族が、家族ができないことは市町村が、市町村ができないことは県が、県ができないことは国が、国ができないことはEU(欧州連合)が」(本書107頁より抜粋)というものである。
つまり、「公的部門が担うべき責務は、原則として、最も市民に身近な公共団体が優先的にこれを執行するものとする」(本書107頁より抜粋)のだ。実際に、ヨーロッパで地域再生が成功している地域の自治体は、財政の自己決定権を持つ。住民に一番近い団体が、ニーズに答えてくれるため、住民の福祉水準も高い。
色々、書いたが、細かい理屈よりも、ヨーロッパの都市に習って、地域の環境に配慮をし、もっと地域の文化や、自然といった、地域のアイデンティティー(自己同一性)を振興して行かなければ、愛する地元は死んでしまうということをよく考えてみないといけないと思う。
地域再生に関心がある人には、ぜひ読んで頂きたい。
Posted by ブクログ
地方再生に対してヨーロッパの社会経済的手法を参考に述べられている。
これからのインフラは教育・福祉・医療が中心になっていくがそれを地方財源での公共サービスにしていく必要がある。また、高度情報化により人の移動が必要なくなるため継続的な人間関係が描かれるためコミュニティ機能はますます重要になってくるとのこと。
コミュニティは確かに大事だが、情報化社会により継続的な人間関係を描くという仮定はどうだろうか。一度に多数の、世界中の人にアクセスできるような仕組みができた今、継続的でクローズドな人間関係が希薄になっていく可能性は高い。
税制度に対するアレルギーを再認識できたので、地方財源に対する理解を深めたいところ。