【感想・ネタバレ】暴走する脳科学~哲学・倫理学からの批判的検討~のレビュー

あらすじ

脳研究によって、心の動きがわかるようになるのか。そもそも脳イコール心と言えるのか――。“脳の時代”を生きる我々誰しもが持つ疑問に、気鋭の哲学者が明快に答える。

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Posted by ブクログ

「脳トレは本当に効くのか?」という帯の文であまり期待せず買ったけど、脳科学の発展してきた歴史や、哲学・倫理学も絡めた問題提起などがあり非常に良い本。
「ニートは個人の問題じゃなくて社会問題。」
「テクノロジーを使ってまで障害を克服しないといけないのか?それは何のため?」
沢山の引用元の本の紹介もあってそれらの本も読みたくなった。

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2025年02月11日

Posted by ブクログ

人間らしさとは何か。近年流行し始めた生成AIを見ていると、自然言語であたかも誰か人が質問に回答してくれる様に勘違いするレベルまで来ているのに驚き以上に恐怖も感じる。いつか人間は要らなくなってしまうのではないか、仕事は全て無くなるのではないか、人という存在の価値や意味がよくわからなくなってくる。とは言え、スマホ片手にchatGPTと話しているおり、さらに前もってAIと話している認識があるから、どんなに人に近くてもやはり無機質的な機械と遊んでいる感覚は残る。もしそうとは知らずに生成AIと会話していたら、果たして私程度の思い込みの激しい人間なら、まず気づかない気がする。
脳科学は近年メディアにも取り上げられる機会も多く、バライエティ番組でも脳科学者がコメンテーターとして出演するのを頻繁に見かける様になった。脳とは不思議な器官で未だはっきり解明されていないと思うが、その解明や分析は研究者にとって一生をかけて挑む難題であるのは間違いない。冒頭に書いた様に、人間らしさとは何かという問いにも未だ明確な回答やはっきりした定義は出来ない。
人が何か行動を起こしたり、目の前のモノを掴む様な動作を起こす場合も、脳が確実に命令を与えている(反射的な動作もあるだろうが)。だから事故や病気で手足を失ってしまった人の脳に電極をつけてロボットを意識的に動かすといった試みは古くから行われ成果も出している。脳は複雑な器官で一つの部位のみで動作が発生するのではなく、脳を構成する各器官との連動によって動作を成立させている。不幸にも脳の一部が欠損した場合も、周辺の器官がその役割を代替しにかかるという事も判っている。科学的、医学的にも最新技術を駆使すれば脳の機能のどこが反応したり連動するかはわかってきているが、前述した様な欠損を補う仕組み(可塑性)についても徐々に一層クリアになってはいくだろう。
ただ人の行動がどの様にして起こるかについて、その原因や目的をはっきりと「これです」と定義して型にはめることは難しい。何故なら人の意思や行動の背景には様々な因子があって、社会、環境、人そのものの生物としての動機、その瞬間の周囲の状況などあらゆる要因が複雑に絡み合った末の行為であるから、コンピュータ技術が過去の膨大なデータからパターンを導き出したとしても、相当程度に平均化された「人らしい」結果(行動や言葉)をもたらしても、それ以上のスピードで世の中は変わっている、というか動いている。そう考えると、今や生成AIがある社会が現在地点になっており、それを前提とした新しい社会に作り変えていくのも、人の脳が環境適応すべく作り上げていく新しい結果になる。コンピュータの世界が処理能力をいくら上げてもそれを踏まえた脳の存在があり続ける限りAIが脳に追いつく事は無いと思う。
話は逸れたが、本書はそうした脳科学の進歩の過程を紹介しながらも、その危険性とリスクを低減する方法について書かれている。使えるべきところは大いに活用すべきだが、それが本来人の持つ人らしさの破壊に繋がったり、分かりやすく言えば権利の侵害をもたらすリスクは大きく、何らかの防護策(例えば法整備など)の設置が急務であることを教えてくれる。
本書構成は前半に哲学的な記述や、科学の話が多く出てくるので、新書としてさっと読むにはやや難解かと思いきや、筆者の付け加える例えや具体例が非常に分かりやすく、前半である程度の脳科学の前提知識が身についてくる。中盤はいよいよ人の心とはそもそも何かについて様々な論争を挙げて迫っていくが、その明確な回答は読者自身に考えさせる様な親切な(読み手の目的意識にもよるか?)書き方になっている。そして後半の結論部分は自分が急造の脳科学者や哲学者になったかの様な持論を持ちつつ、白熱した議論に参加している様な感覚に陥り、最後のページを閉じた後にはやや興奮気味の自分がいる事に気づく。わからないからこそ知りたい、わからないからこそ面白い。

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2023年10月07日

Posted by ブクログ

脳科学の産業応用の本を読むと同時に、脳科学のの倫理的考察を行うこの著書を読めたのは、実にタイミングが良かった。最新の脳科学の動向を、哲学の視点からじっくり整理している点も素晴らしいが、将来現実になる脳科学応用に向けた倫理のあり方、引いては、著者が考える人間観まで感じられる点に感銘した。

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2013年06月26日

Posted by ブクログ

書かれている内容は納得する点が多かったものの、これを読んだだけでは「暴走している」とまで言えるかは疑わしいと感じた。

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2013年05月26日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
脳研究によって、心の動きがわかるようになるのか。
そもそも脳イコール心と言えるのか。
脳を調べることで心の状態を読むことは可能か。
人間の行動は脳によって決定され、自由などは幻想に過ぎないのか。
脳研究が医療や教育、犯罪捜査、裁判などに応用されることは、どのような社会的インパクトを持ち、どのような倫理的問題が生じるだろうか。-“脳の時代”を生きる我々誰しもが持つ疑問に、気鋭の哲学者が明快に答える。
現代人必読の“脳科学リテラシー”入門書。

[ 目次 ]
第1章 脳の時代と哲学
第2章 脳と拡張とした心
第3章 マインド・リーディングは可能か
第4章 社会的存在としての心
第5章 脳研究は自由意志を否定するか
第6章 脳神経倫理

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月09日

Posted by ブクログ

脳科学が進むにつれ、哲学や経済学、マーケティングや美術など、思いもよらなかった分野との融合が起こっている。本書の内容は、哲学者から見た脳科学で、題名にもあるように、脳科学を実社会に応用する際の倫理について述べることが一つの柱になっている。それとは別に、この人が考えているフレームワークともいうべき「拡張した心」の説明がよい。ギブソンのアフォーダンスについて、これまではどこが優れた理論なのかよく分からなかったが、本書ですっと腑に落ちたような。。。心身問題の歴史についての概説も分かりやすい。「心」は内面的なものではあるが、脳の内部に限局するものではない。環境や社会を含めたものであるという。例えば、5桁の掛け算を計算する場合、その心的作業は脳内のみで行なわれるのではなく、紙と鉛筆など外部環境を含む形で行なわれる。また、心的状態は社会的にも規定される。「記憶」という行為は無文字社会ではおそらく必要がない行為だろう。文字を使い、記録するという正確さが要求される社会でのみ意味がある。より高次の心的機能についても同様で、すなわち、「心は環境へと広がったシステムであり、脳はその一部を担っている。しかし、そのシステムは社会的環境へも広がっており、システムは社会に適応することで、社会からの規範的な規定を受ける」

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2011年08月07日

Posted by ブクログ

CTやMRIなどの脳を扱う技術の進展に伴って、人の心を弄ぶような現象を心配し、脳科学における倫理学や考え方を整理しようという主張と思われる。
決して、脳科学の進展(暴走)を批判しているわけでは無い。
脳研究は、心全体の研究とはなり得ない。
心と呼ばれるシステムにおいて脳活動がどのような位置付けを持ち、脳内の変化がどのようにシステム全体に影響を及ぼすのか、脳研究とはこれらについて研究する分野として理解されるべき。
心は環境へと広がったシステムであり、脳はその一部を担っている。

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

言葉や感情を成り立たせているのは社会か、それとも個人か、というあたりは脳科学とはあまり関係ないような気がしてならない。

あらゆる問題の根源を自身の内面に求める心理主義化に陥ってるという指摘は妥当だが、世の中はその後「脳科学化」に陥ってるともいえなくもない。

章が進むにつれて脳科学とは離れていくのだけど、自由意志とリベットの実験についての考察は読む価値はあると思う。

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2019年05月20日

Posted by ブクログ

第2章より。
<1>〜19世紀中
・ヒポクラテス…心は脳にある
・アリストテレス…心は心臓に
・魂は全身の感覚器に散在…ロッツェ、ルイス(19C)
<2>〜19世紀末
1 相互作用説:心身をそれぞれ独立した実体としたうえで因果関係あり、と考える…デカルト:「心の座は脳である」
2 平行論:心身間に対応関係はあるが因果関係はない…マールブランシュ、ライプニッツ
3 唯物論:ホッブズ(17C)、ドルバック、ラ・メトリ(18C)、フォイエルバッハ、マルクス(19C)
4 唯心論:バークリ、ヘーゲル、ベルクソン
<3>1940年代…「行動」に注目して心身二元論を克服する試み
・メルロ=ポンティ「行動の構造」
・ギルバート・ライル「心の概念」
<4>20世紀後半〜
・認知科学、脳科学…古典的計算主義/コネクショニズム
・90年代中ごろ以降→「拡張した心(extended mind)」…心は、脳も含めた身体の内部器官のみならず、その全身の振る舞い、そして人間が作り出した造作物において実現している

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2018年11月18日

Posted by ブクログ

題名につられ読みはじめたが、安易なものではなく、なかなか本格的なもの。新書らしい一冊と言えよう。

脳研究が社会に及ぼす影響への考察など、示唆にとむ。

残念なのは、文章がすんなり頭の中にはいってこない。自分に哲学の素養や科学的基礎知識が欠落してるためだと思うが。
かなり読者を選ぶかもしれない。

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2013年06月09日

Posted by ブクログ

著者は立教大学教育学部教授の哲学者。メルロ・ポンティなどの本を書いている方のようです。2008年初版。本書の副題は”哲学・倫理学からの批判的検討”とのことで、哲学者から見た最近の脳科学に対する見解、といったところでしょうか。最近の脳科学に関する動向がうまくサマライズされているので、脳科学入門として読むのも良いのではないかと思います。

哲学者から見た脳科学の批判的検討としては例えば、”脳と拡張した心”の章で述べられているような、脳が心といってよいのか、といった内容が述べられています。著者は他に”心は体の外にある”といった著作があるように、アフォーダンスといった拡張した心論をよく述べている方。要するに人間や脳を解剖してもこころが見えてくるわけではなく、それを取り巻く環境まで含めないとこころは捉えられるものではない、ということかと思います。

特に印象に残ったのは第五章、”脳研究は自由意志を否定するか”。”自由意志”の問題は脳研究や哲学、心理学のテーマの定番で、特に脳研究では自由意識に関するリベットの実験がお決まりですが、これに対して心の哲学者ダニエル・デメットの”意思的な決断が起こる瞬間が存在するというのは一種の神話であり、医師は時間の幅をもって分布しているのであり、その瞬間を測定できるたぐいのものではない”といった批判的見解を紹介しています。

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2013年06月09日

Posted by ブクログ

脳研究によって、心の動きがわかるようになるのか。そもそも脳イコール心と言えるのか。脳を調べることで心の状態を読むことは可能か。人間の行動は脳によって決定され、自由などは幻想に過ぎないのか。脳研究が医療や教育、犯罪捜査、裁判などに応用されることは、どのような社会的インパクトを持ち、どのような倫理的問題が生じるだろうか。―“脳の時代”を生きる我々誰しもが持つ疑問に、気鋭の哲学者が明快に答える。現代人必読の“脳科学リテラシー”入門書

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2011年07月16日

Posted by ブクログ

最近の脳科学研究や似非研究について書かれていると思いきや、脳研究の前段階の議論(心の話や倫理的なもの)だった。広く浅くの脳科学。脳科学のラベリングが恣意的であるという主張には納得。

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2009年12月11日

Posted by ブクログ

(今の)脳科学で分かること分からないことを取り上げて,脳科学の倫理を考えましょうというおはなし.
どっちつかずで中途半端.哲学的な議論にしては表面的すぎる気がしたし,脳科学の限界を示すならもう少し研究を引用した方が良いと思うのだけど.

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

脳のモジュール化が、ある種の流行になっているが、それがむしろデカルト的な思考の流れであること。
心とは脳の反映ではなく、拡張されたものであること。
全体を通して、目からうろこ的な教示をいただいた。
古い考え方から新しい考え方まで、とてもわかりやすく解説されている。

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2009年10月04日

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