あらすじ
カオスやフラクタルという物理の理論が経済分析にも応用できることが証明され、新たな学問が誕生した。経済物理学の第一人者が、その最先端の研究成果を中間報告する。
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Posted by ブクログ
古典的な経済学に対する批判の一つとして、線形理論に留まっている、というものがある。つまり、通貨量を増やせば通貨安に動くなど、単純な関係性しか理論に織り込まれていないという批判だ。これに対する回答の一つが、経済学に非線形性を導入する経済物理学だろう。
本書では、日本の経済物理学の最前線を走る著者が、世界の経済物理学の歴史を語っている。まだまだ日本は世界レベルに追い付いていないようなので、がんばって追いつき追いぬいて欲しい。
経済物理学の誕生に至る著者の活躍の話から、経済物理学という分野、特に著者の周辺で行われている研究を紹介している啓蒙書。相場の変動幅が正規分布ではなくべき分布に従うと仮定すると実際の為替相場の現象が良く説明できるという話や、短期間の市場価格の変動の理論を繰り込みによって粗視化するとハイパーインフレが説明できるという話などが、数式をほとんど用いず説明されている。
上位5%の変動で市場全体の挙動がほぼトレースできたり、マクロ経済学へ自然に拡張できるという理論自体はとても面白いと思うのだが、場の理論を知らないとなかなか理解しづらく、この本を読んだだけで経済物理学を知れるかというと難しいのではないか。
ただそれでも結論として興味深いのは、土地価格を基準にして分析すると日本経済はバブル期前から停滞していたことが分かる、ということだろう。給与水準が上昇していたように見えたのは地価が上昇していたためで、地価が下落すると給与水準も下落するという性質があるらしい。だから、デフレだから人工的にインフレにすればいいというのは、これまでの経済史を見ない素人の発言だ、とバッサリ切る。
一方で、日本は兵器産業に手を出していないから繁栄した、と根拠を示さずに持論を展開しているのだが、日本経済は停滞期にあるがアメリカやイギリスの経済は未だ成長期にある、という研究成果と矛盾しており、理想主義者的な著者の一面も見れてちょっぴり面白い。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
混迷を極める世界の中で、私たちはどこへ進んでいくのか。
経済物理学はカオスやフラクタルといった物理学の手法と概念を活用して、データに基づいて実証的に現実の経済現象に立ち向かう、まったく新しい科学の分野である。
まだ誕生して10年にも満たないほどの若い研究分野だが、これまでの経済学の常識を覆す発見や斬新なアイディアが次から次へと報告されている。
複雑で不安定なお金の世界にも、ものの世界と同じような自然法則が成立している。
―エコノフィジックスという新しい地図を手に入れ、これから進むべき未来のお金の世界をいっしょに探検してみよう。
[ 目次 ]
1章 エコノフィジックスの誕生
2章 エコノフィジックスのツール
3章 市場原理
4章 市場の臨界的性質
5章 所得の変動と分布
6章 お金の特性
7章 企業通貨システム
8章 今後の展望
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
科学的な思考を持った人には、経済物理学って普通のアプローチじゃないのか???
部分に分解したり、単純化したり、それをまた積み上げたり。
それって普通の科学的手法でしょう?
ではいわゆる普通の経済学っていったい何をしているの?
エコノフィジックスって新しい分野か?
物理学って名札をつけた人が、経済について論じたらそれがエコノフィジックス?
経済学の名札をつけた人が近い手法をとったらそれは何?
いろんな現象解析の道具が経済現象にも適用できるということは分かった。
そして、その結果が有益なことも。
経済現象にべき乗則がでるのは面白いと思う。
しかし、法則が明らかになれば、それによって法則の方が変わっていくのは間違いなかろう。
ブラック・ショールズモデルによって、逆に市場が作られているように。
ならば、それは真理探究にはいつまでたってもならない。
物理学のように近似の精度を上げていくのとは違うから。
わかったことだけ示せばいいのに、いろいろ提言しているのはノイズだ。
素人っぽい提言をされても、、、
また、お金の額面と価値が線形でないとあったが、ならば立証しろっと思った。
定性的な議論だけだな、批判しているいままでの経済学と変わらない。