あらすじ
住んでいるアパートに修繕が必要となり、しばらくの間、実家で生活することになった田村。
そこで高齢者の父に免許返納をさせたいという、古長(こちょう)からの相談を受けることに。
しかし、当人は生活に欠かせないものと主張し、頑なに免許を手放そうとしない。
そんな状況の中、古長(父)は立て続けに事故を起こしてしまう。
人的被害こそなかったものの、古長の危機感は最高潮に達し、強引にでも免許を取り上げようと試みるが――。
思いやるがゆえ、親子の絆が崩壊寸前!
危機的状況に田村は打開策を見出せるか!?
そして、この一件を見守っていた大野事務所のボス・大野が、田村につきつけた衝撃の「宣告」とは・・・。
『カバチタレ!』、『特上カバチ!!』、そして本作と、23年にわたる長期シリーズが感動の大団円!!!
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見届けた
かつて法律のほの字も知らないとき、働いていた北海道の個人経営の牧場で、突然言い渡されたことがあった。
「君が住み込んでる部屋、息子が帰ってくるから出ていってくれ。猶予は三日やる」
北海道の牧場というのも深い事情があってのことだった。
実家のある岩手県から北海道に飛んで働いていたので、北海道の道東、遠い地である。「帰りの飛行機代金はだしてやるから」と言われたものの、徐々に惜しくなって来たのか「電車にするか?電車の方がいいだろ」と言われるようになったが「ふざけるな。いきなり出ていけと言われて交通費まで値切る気かよ」と言いはしなかったが、飛行機代は履行は確保した。
とはいえ、何もいいことはない。帰りの釧路空港とか、中標津だっただろうか。飛行機の待ち時間を空港で失意の中、過ごしていた。
書籍コーナーで本を適当に手に取りながら、これからどうすればいいのか、途方に暮れた。
一冊の本を手にした。どこかで目にしたことのある独特のタッチの漫画。読むと、主人公が冒頭に勤務先の清掃会社を解雇されている。登場人物の男から「これを郵便局に出しんさい」と言われ、出すと会社からそれなりの額の金が主人公に届く。
自分に似ている、と思った。その主人公は「行政書士ってこんな人の役に立てるんだ」「ぼくは行政書士になりたいんです」私は本を一度閉じてタイトルを見た。
作品名は「カバチタレ!」といった。
あとを追うように私も法律を学び始めた。主人公田村は行政書士事務所に入ったが、それは現実には困難。独学を続けるうち、田村は行政書士資格を取り、ついに行政書士になった。
遅れたものの、ついに私も行政書士試験に合格。しかし事務所を開くにはまとまった金がいる。それを稼いでいるうちになんと、田村は所長に就いてしまった。
私は開業のチャンスがあり、遅れて開業した。仕事はそうあるものではなかった。それでも友人や知人が仕事を紹介してくれるようになった。「口約束で10万円支払う約束だったが、大金を請求されて困っている」「ストーカー被害に遭ったのに、警察が相手にしてくれない」困っている人はたくさんいた。私は田村勝弘のようになりたかった。
行政書士の業界ではカバチタレはファンタジーの世界と言われる。事件性が高いためだ。でもADRとして認められつつある。カバチタレは私の未来を示してくれた。
見届けられて感慨深い。