あらすじ
ミステリ界の大御所が、秩父の山荘で10年ぶりの新作執筆に取りかかっていた。タイトルは『螺旋館の殺人』、本格推理ものだ。ある日、作家志望の若い女性が自らの作品を手に訪ねて来る。その後の原稿紛失、盗作疑惑……奇妙な事件の果てに待つものは? 折原ミステリの原点である精緻な多重トリックが冴えに冴える!
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Posted by ブクログ
寡作で知られ、現在はほとんど山奥の山荘で隠棲している大御所作家の田宮は、現在は作品がほとんど書けなくなり、評論活動に軸を置いていたが、ミステリー創作講座の講師の経験をきっかけに、ふたたび創作に取り掛かることになった。月刊推理社の新刊シリーズのラインナップのひとりとして加わることになった田宮は、『螺旋館の殺人』というタイトルで……。
ということで、本作は著者の初期作品のひとつ。第二部の章題を見て、にやり、としてしまうひとも多いのではないかと思います。自分自身も含めて、あらゆるものを使って、読者を翻弄していく。いつもながらその大胆で、鮮やかな技巧に惚れ惚れとしてしまう一冊でした。そのぶん、感想はとても書きにくいのですが……。
Posted by ブクログ
これ読んだことあるっけ?とデジャヴュが沸き起こるのがこの作者の特徴で、発行年月を見たら読んだことないのがようやくわかった。
最後の最後変なオチに持って行ってしまい、普通に締めてよかった気がする。仕掛けそのものは毎度のごとく気をはらっているため、満足するものだった。
Posted by ブクログ
「螺旋館」というタイトルだから普段の折原作品とは違い、館モノなのかと思ったが、やはりそこは折原作品、そんなわけはない。
あまり期待しすぎるとつまらなく感じてしまうかもしれないが、長さもちょうど良く、楽しめる作品。
それにしても201号室は清水真弓、202号室は戸塚健一、203号室は山本安雄、そして田宮竜之助...
狂ってるアパートだな...
Posted by ブクログ
折原さんの物語を読んでいるといつも途中で考えてしまうことがある。
私はもう折原さんの仕掛けにハマってしまってるのではないか?
いまはこんなふうに見えている物語も、最後にはまったく違う光景に見えてきてしまうのでは?と。
最初から懐疑的な見方をして読むのはどうかと思うけれど、折原作品に対してだけは条件反射のように探りながら前に進んでいく感じだ。
十年間も新作を書いていない作家が再び執筆活動へ戻ることを決意する。
だが、プロットは編集者にけなされすっかりやる気を失ってしまう。
突然現れた作家志望の女性は、いかにもな雰囲気をまとっている。
想定内のトリックは、意外にも第一部のみで一応の決着をみる。
問題は第二部だった。
折原さんのわりには少し緩い感じはしたが、重なり合っていく倒錯の世界が堪能できる物語だった。
「覆面作家」もそうだったけれど、重要な登場人物の職業が作家であることがたびたびある。
作家ならではの心理に絡めた展開は読む側としても面白い。
Posted by ブクログ
折原一らしく,叙述トリックが仕込まれているが,入り組んだ真相というほどではなく,比較的分かりやすい構成になっている。第一部として書かれている「螺旋館の殺人」も、第二部として書かれている「盗作のロンド」のいずれも,若い頃に小説家を目指した田宮老人が自費出版として出した本の内容だという構成。最後の最後に,折原一がこの作品を同人名義で発表したというオチが用意してある。
第二部では,作中で沢木という編集者が田宮になりすますという構成になっている。このあたりだけが,折原一らしい複雑さだったが,それ以外の部分は,第一部の原稿すり替えのトリックも含め,やや平凡なデキ。読みやすい,軽い文体や,軽いキャラクターなど,エンターテイメントとしては十分楽しめるので★3で。