あらすじ
聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な〈娼婦=聖女〉が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。図像資料多数収載。
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Posted by ブクログ
福音書に記述がないにも関わらず、
娼婦・宮廷婦人・修道女etcとして
イヴと聖母マリアの橋渡しとなってきた
マグダラのマリア。
模範でも警鐘でもあった彼女の図像は振り幅が大きい。
悔悛というテーマを内包した結果、
メランコリーやウァニタスとイメージが重なったり、
修隠生活を描いたものが異教的な画面になったりと、
あらゆる思想の受け皿になっていたのが印象的。
絵画を通じてなんとなく知っていた
マグダラのマリアのイメージと
違うものを知ることができて良かった。
モノクロではあるものの図版多数で嬉しい。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
聖母マリアやエヴァと並んで、マグダラのマリアは、西洋世界で最もポピュラーな女性である。
娼婦であった彼女は、悔悛して、キリストの磔刑、埋葬、復活に立ち会い、「使徒のなかの使徒」と呼ばれた。
両極端ともいえる体験をもつため、その後の芸術表現において、多様な解釈や表象を与えられてきた。
貞節にして淫ら、美しくてしかも神聖な、“娼婦=聖女”が辿った数奇な運命を芸術作品から読み解く。
図像資料多数収載。
[ 目次 ]
第1章 揺らぐアイデンティティ(福音書のなかのマグダラのマリア;外典のなかのマグダラのマリア;「罪深い女」=マルタの姉妹ベタニアのマリア=マグダラのマリア;隠修士としてのマグダラ;『黄金伝説』のなかのマグダラ)
第2章 マグダラに倣って(イミタティオ・マグダレナエ)(フランチェスコ修道会;ドミニコ修道会;信者会(コンフラッテルニタ)とマグダラ 聖女たちの規範としてのマグダラ サヴォナローナとマグダラ)
第3章 娼婦たちのアイドル(一四世紀のナポリ;一五世紀のフィレンツェ;16世紀のローマ;17世紀のローマ)
第4章 襤褸をまとったヴィーナス(「この上なく美しいが、またできるだけ涙にくれている」;「何と美しいことか、見なければよかったほどだ」;「たとえ深く傷ついた人でも、なおも美しいということはありうるだろう」;エヴァと聖母マリアのあいだ;ジョヴァンニ・バッティスタ・マリーノの詩)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
キリスト教には二人のマリアが存在する。聖母マリアと罪深きマグラダのマリアである。西洋世界におけるマリア信仰の歴史についての本を読み、マグラダのマリアに興味を持った。原田マハの小説に「まぐらだ屋のマリア」と言う題名のものがある。原田さんの作品の代表作の一つと思っているが、何故この題名なのかと思っていたが、マグラダのマリアの話を題材としている意味が今回改めて理解でき再読しようと思った。
マグラダのマリアは聖女でもあり、娼婦でもある。正しく言えば自らの罪を回心し、聖女になったということである。聖女マリアは言うまでもなく聖なる存在、人々を疫病、災い等から救済する、あたかもキリストのように。一方で、罪深きマリアは罪を悔い、キリストに仕え、聖なるマリアよりもキリストにキリストに近い存在として聖書等に伝えられている。西洋絵画でマグラダのマリアは多くの作品の題材とされているがとても矛盾した要素を含んでいる。貞節と淫ら、美しさと官能。聖女マリアがより神に近い存在であるに比して、マグラダのマリアは人間に近く、人の罪深さを象徴していると感じた。多くの宗教が人間は本来罪深い存在とするところから始まるが、人はいつまでも罪深いものであり、罪から逃れられないのではないだろうか。