あらすじ
このささやかな成功がいつまでも続いて欲しい。自分だけがいつも他人からちやほやされ、一流の仕事を山のように持っていたい――。不安と野心が交錯する売れっ子スタイリスト・見村ヒロミは初めて体験した「浄霊」に興味をもち、除々に新興宗教「久慈尊光教」に深入りしていく。心の平安、生活の安泰を求める私たちにとって、神の役割りとはなんなのだろう。「宗教」と現代人の心の接点を細やかに描き、新境地を切り開いた傑作長編小説。
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Posted by ブクログ
好き嫌いのわかれる作家さんだと思いますが、私はよく読みます。
ちょっと小難しく読み進めるのに時間が掛る本が続いたあと、テンポよく読みたい時です。
また、その時代の流行や時事を素早く取り入れていると思います。
そして作品の中に必ずひとつ、ぐさっと突き刺さる鋭い文章があります。
今回の「紫色の場所」では、『彼らは普通の人間よりも野心を持ってしまったのだ。そして野心というものは、ある程度の制裁あてを加えられるべきだと、この世界の人は思っているに違いない。』です。
若いアシスタントを薄給で使うファッション業界のことですが、どこの業界でもそういう空気が流れているように思います。
新興宗教を流行りのように取り扱うファッション業界の話なのですが、流行りが終わり飽きたらスパッと抜ける。
それはとても冷静な目を持っていました。
この本が発行されたのが昭和61年。
オウム事件が起きたのは10年後位でしょうか。
こういうファッション感覚で入っていって、戻れない深いところにいってしまった人もいるのではないか。
読み終わったあと、そんなことを考えました。