【感想・ネタバレ】現代免疫物語frontier mRNAワクチン、アクテムラ、CAR-T細胞、腸管免疫の最前線のレビュー

あらすじ

人は一度かかった疫病(えきびょう)には二度とかからない。二度目の「疫」病から「免」れる不思議な仕組み「免疫」は今も謎に包まれ、未知の領域が開拓され続けている。ノーベル賞級の成果を輩出する免疫学の世界的権威と、難解な科学を明快に解説する科学ジャーナリストがタッグを組み、知的興奮に満ちた免疫世界の物語を紡ぐ人気シリーズの第4弾!

【カリコのmRNA革命】恐るべきウイルスが世界を変えたあの時、それでも人類は幸運だった。RNAをこよなく愛するカタリン・カリコが同時代に居合わせたからだ。彼女の研究が結実して人類は、新型コロナを制するmRNAワクチンをいちはやく獲得できた。しかし、その道のりは苦闘の連続だった。日本人研究者の知られざる貢献も得て、彼女がノーベル賞に輝くまでの歩み。

【免疫の暴走を封じたアクテムラ】新型コロナ感染症が重くなると、免疫の情報伝達分子サイトカインが嵐のように過剰放出され、激しい炎症反応が生じる。それは呼吸不全や血栓形成、多臓器不全につながり、患者の命を脅かす。この重篤な炎症反応を抑えるため世界の臨床現場で重要な役割を果たしたのが本書著者の一人、岸本忠三のインターロイキン-6発見から生まれた「アクテムラ」だった。関節リウマチの薬はいかにして新型コロナ重症患者を救ったのか。

【がんと戦う「小さなサイボーグ」CAR-T細胞】強力な殺傷能力を備えたT細胞に、敵を探知する高性能センサーを合体させたCAR-T細胞。急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液がんで大きな成果をあげたこの治療は今、「宿敵」固形がん(肺がん、乳がん、胃がん、大腸がんなど)に挑もうとしている。血液がんとは違い臓器の奥に巣をつくる固形がんは免疫細胞を寄せつけにくい。そこにどう入り込み、攻撃するか。CAR-T細胞の次の進化はその難問に向かっている。

【目くるめく迷宮「腸管免疫」の驚異】全身の免疫細胞の約7割が集う腸は「体内最大の免疫の場」だ。そして腸には、天文学的な数の腸内細菌が棲んでいる。両者が至近距離で向かい合う腸は一触即発の緊張の場。しかし戦いが始まり、炎症が起き、激しい腹痛に見舞われることはめったにない。それはいったいなぜだろうか? 鍵を握る「免疫寛容」のからくりをはじめ、人知がおよばない迷宮「腸管」で繰り広げられる免疫世界の不思議さに迫る!

(目次)
第一章 自然免疫の砦に挑んだカリコ mRNA革命の軌跡/第二章 サイトカインの嵐を封じたアクテムラ IL-6研究が導いた新しい治療/第三章がんと戦うCAR-T細胞 進化する「小さなサイボーグ」/第四章 がん個別化治療に向かうmRNA 「わたしだけのワクチン」はつくれるか/第五章 不思議の迷宮、腸管免疫 体内最大の免疫の場で何が起きているのか

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

1918年に起きたスペイン風邪。当時、世界ではインフルエンザはウイルスではなく、病原菌であるインフルエンザ菌によって起こると考えられていた。アメリカでは戦争資金を集めるためのパレードが計画されていたが、政治家や国民から感染症が楽観視され、パレードは決行された。その結果、感染が広がり、多くの死者が出た。菌を使って研究していたため、ウイルスを使わなければ作れないワクチンの開発にもつながらなかった。スペイン風邪の正体がウイルスだと分かったのは、1930年代に電子顕微鏡が発明されて以降のことだった。コロナ禍では、数週間でウイルスが発見され、遺伝子の配列が公表されたのは2日後だった。このスピード感は現代ならではなのだろう。また、昔は無用の長物とみられていた虫垂が、2014年に腸管免疫で重要なIgA抗体を生み出すB細胞を大腸に送り出す役割を果たしていることが突き止められた。虫垂炎では虫垂を切除することもあったが、むやみに取らないほうがいいという判断する人もいる。今知らなかったら、私はずっと切除するもと思い込んでいただろう。著しい勢いで更新されていく医学の知識に合わせて、病気の偏見や常識、価値観も更新していかなければならない。

医学は日進月歩で発展している。昨日までの常識が変わることもあるが、その一つひとつの変化が積み重なり、少しずつ確実に医学を前に進めているのだと思う。

0
2026年08月28日

「学術・語学」ランキング