【感想・ネタバレ】ともぐい(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

明治後期、北海道の山中で一匹の犬を相棒に狩猟に生きる男・熊爪。人里に馴染めず山を縄張りとする彼は、冬眠を逃し徘徊する凶暴な熊「穴持たず」に対峙する。穴待たずとの死闘、そして盲目の少女・陽子との運命的な出会い。獣と人間との境界を超えた理屈のない命の応酬の果て、熊爪が見たものとは。「生きる」とは何か、という問いに真っ向から挑んだ、圧巻の直木賞受賞作。(解説・角幡唯介)

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ネタバレ

読みながら頭の中に情景が浮かび続ける。かなり生々しい描写も多く、こんなにリアルに読者に想像させるのはすごいと思った。熊と人の対峙がテーマだと思っていたが実際はそれだけではなく、人間の内面や生き方について考えさせる小説。ラストは全く想像していなかった展開で、なぜそうなったのかとずっと考えている…。
爪は自身が熊になりきれない事を悟った。
人間になろうとしたがそれもなりきれなかった。
『殺されなきゃ死ねないんだし、あんたは』という陽子の言葉は、熊など野生の生き物にも当てはまる言葉。陽子は熊爪を熊と認識したんだろう。
熊爪が兎を殺す所を見ていたのも殺す決意を固める伏線だったのか。
熊同士。人同士が殺し合った。
そういう意味でこの『ともぐい』というタイトルなのかなと。

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2026年08月25日

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生と死 自然界の生き方について

『ともぐい』を読み終えて、まず強く残ったのは、フィクションなのにノンフィクションのような生々しさだった。熊と人間が生きる山の世界があまりにも現実的に感じられ、物語を読んでいるというより、実際にそこで生きている人間を見ているような感覚になった。

特に印象に残ったのは、自然界の本質や、生と死について描かれているところ。
食べるために殺し、殺したものを食べて生きる。人間も動物も、結局は自然の循環の中にいる一つの生き物にすぎない。そうしたことを、綺麗にまとめるのではなく、生々しいまま描いているのがよかった。

その中でも熊爪は、とてもいいキャラクターだった。
人間社会の善悪や常識よりも、「どう生きるのか」という本質だけを見ているような人物で、熊爪の生き方そのものが作品のテーマを体現しているように感じた。

死ぬこと自体は、なんとなく最初から予想していた。だからこそ、最後まで気になったのは、「熊爪がどのように生きるのか」だった。
途中では自分なりに先の展開を予想しながら読んでいたが、良い意味で予想とは違う進展もあり、最後まで楽しめた。

最後に陽子とのストーリーも展開や結末が良かった。熊爪が最後まで熊爪として生きた、その生き方の延長にあの結末があるように感じた。

そして、何より犬が可愛かった。
ただ、熊爪自身が犬を人間的な意味で「愛している」というより、犬を犬として、狩りをする上での存在として見ているところも含めて、熊爪らしい関係だったと思う。

読み終わったあとには、中孝介の「サンサーラ」が頭の中でずっと流れていた。
生きること、食べること、殺すこと、死ぬこと。そしてまた別の生命へつながっていくこと。『ともぐい』の読後感と、あの曲の持つ「生きる」という感覚がすごく重なった。

今回は何の下調べもせずに読んだので、先の展開を自分なりに予想しながら読めたのもよかった。
何年か経って、自分自身の感じ方が変わった頃に、もう一度熊爪の生き方を読み返してみたいと思える作品だった。

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2026年08月22日

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山でひとつの生き物として生きる男の体温、体臭、汗、血を感じる迫力ある物語。
それを山の静の部分を織り交ぜて装飾なく伝える筆力も素晴らしく、短文で織りなす文体も潔い。
結末は何を暗示しているのか。
母性の凄まじさか、男の居場所が無い時代の変化か。それとも、生の意味からの解放か、はたまた地球上に根付く望みは無いヒトの異質さか。
筆者の他作品にも俄然興味がわきました。

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2026年08月18日

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明治後期の北海道。猟師として自然の中で生きる熊爪は、一頭の熊との因縁や人との出会いを通して、生と死、人と自然の境界に向き合っていく。圧倒的な自然描写と命のやり取りが胸を打つ、直木賞受賞作。

圧倒的な自然描写と、熊との息詰まる攻防に引き込まれた。しかし、私の心に最も残ったのは熊爪の死生観だった。

熊爪は命を奪うのではなく、「いただく」という感覚で生きているように感じた。必要以上には求めず、自らが与えられた生も、いつかは自然へ返すもの。その循環を受け入れているからこそ、生にも死にも執着しない。彼が見つめていたのは、生き延びることではなく、生と死の均衡を崩さず、自分にふさわしい生を全うすることだったように思う。

便利さや豊かさを追い求め、「もっと」を望みがちな現代だからこそ、「足るを知る」という言葉の意味を改めて考えさせられた。そして、『ともぐい』というタイトルもまた、生と死の均衡という、本作が描こうとしたものを象徴しているように感じた。熊爪の生き様は、読み終えた今も静かに問いを投げかけ続けている。

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2026年08月06日

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河﨑秋子『ともぐい』新潮文庫。

以前から読みたいと思っていた河﨑秋子の第170回直木賞受賞作がようやく文庫化された。

所謂、クマ物である。

古くは苫前三毛別事件を題材にした戸川幸夫の『羆風』に始まり、吉村昭の『羆嵐』『羆』、同じく苫前三毛別事件の詳細を描いた木村盛武のノンフィクション『慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』、吉村龍一『光る牙』、樋口明雄の『約束の地』、北林一光『ファントム・ピークス』、熊谷達也の『ウエンカムイの爪』『邂逅の森』、白土勉の『火の獣』、佐藤友哉の『デンデラ』、久保俊治の『羆撃ち』、増田俊也の『シャトゥーン 〜ヒグマの森〜』と数多くのクマ物を読んで来たが、河﨑秋子の『肉弾』には驚かされた。

そして、この『ともぐい』という作品である。『ともぐい』は単なるクマ物というだけでなく、独り山で暮らす猟師の生を超えた死への渇望と破滅の姿を描いている点で、他のクマ物と少し次元が異なるようだ。

何の疑問を持たず、自分の力だけを頼りに独り山の中に生きる猟師が穴持たずの羆や若羆の赤毛と対峙し、命のやり取りを繰り返す中、何時しか死への渇望に絡め取られていくのだ。


明治後期、北海道東部の山の中の小屋で独りで暮らす熊爪という35歳ほどの男が居た。熊爪は時々、猟で仕留めた鹿や羆を里にある白糠の町に運び、門矢商店に買い取ってもらい、その代金で必要な物を揃え、再び山に戻るという暮らしをしていた。

そんな熊爪の暮らしに興味を持った門矢商店の主人の井之上良輔は熊爪をもてなし、猟の話を聞くことを楽しみにしていた。良輔は何処からか盲目の洋子という少女を引き取り、屋敷に住まわしており、その姿をたまに目にする熊爪には気になる存在になっていた。

ある日、熊爪が山に入ると、羆に襲われたのか瀕死の状態で倒れている太一という男を見付け、自分の小屋に連れ帰る。太一の話によれば、阿寒湖から穴持たずの羆を追い掛けて、この山に来たのだが、狡猾な穴持たずの止め足に引っ掛かり、手負いにしたものの、激しい攻撃を受けてしまったのだと言う。

熊爪は太一に出来るだけの手当てをし、体力が回復するのを待って、門矢商店の良輔の元に連れて行き、医者に診てもらった。

熊爪は自分の縄張りの山に迷い込んだ穴持たずを仕留めるべく山に入ると、穴持たずとこの山に暮らす若羆の赤毛が争っている場面に出食わす。すると、熊爪を目に留めた穴持たずが襲い掛かり、銃を発砲するも急所を外してしまう。

さらに襲い掛かる穴持たずの攻撃を躱すうちに、熊爪は崖下に転落してしまう。転落で背中を痛めて悶絶する熊爪の上に崖を降りて来た穴持たずがのしかかって来たが、赤毛の穴持たずへの攻撃により熊爪は絶体絶命の状況から逃れることが出来た。しかし、熊爪は骨盤を骨折したのか、激しい痛みに襲われ、必死の思いで自分の小屋へと戻る。

本体価格710円
★★★★★

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2026年08月01日

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読み終わった感想はとにかく迫力のある作品だったと思う。前半は息を呑む様な緊迫感で読み進めた。
また一つ知らない世界を知れたような独特の世界観だった。
でも好き嫌いが分かれそうな作品。
私はかなり好きだった。

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2026年08月28日

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明治時代になったばかり、北海道東部の山の中に村田銃で狩りをしながら熊爪は生活していた。仕留めた動物は、肉にして人里へ売りに出る。人とは最小限にしか関わらず、しかし熊爪はその生活に満足していた。山に春が来ると、熊が冬眠から目覚める。しかし、山にやってきたのは隣の山の熊「穴持たず」であった。穴持たずは冬眠もせずに人里などを荒らし、食い物を求めて凶暴化しながら熊爪の山にやってきた。熊爪は自分の山に入ってきた穴持たずに憤慨し、狩ることを決心する。一人と一匹の戦いはどちらが勝つのか…

初読み作家さんだったけど、描写がすごい。息遣いが聞こえそうになるほど、情景がありありと浮かび、すぐに読んでしまった。静かな山と狩りの緊張感の様子がとても印象に残った。熊爪は赤毛に同族意識を持っていたのではないか。初めて尊敬できる、そして自分と対等の戦いができる、自分のことを理解してくれている熊。その熊が、熊爪に「孤独」を教え、そして最後は…変わってしまった時点で熊爪は詰んでいたのだと思う。食うか食われるかの世界の緊張感が、常に呼んでいる間に付き纏って面白かった。

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2026年08月17日

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◼️ 河﨑秋子「ともぐい」

繰り返されるのかなと。既視感。熊ものは好きだけど、乗り切れなかった。直木賞。

熊、熊猟の書きもの、好きで良く読みます。星野道夫のアラスカの熊、吉村昭「羆嵐」、最近でいえば西村武重「ヒグマとの戦い ある老狩猟家の手記」。ほかもろもろ。で、インパクトがあった作品といえば熊谷達也「邂逅の森」です。自分の本懐、本当の姿は熊猟師だと信じた男の話。

この作品も似ているところがあります。思うに、熊猟という題材は日本の国に根付いているもので、猛獣の怖さ、命を賭した猟の迫力と命を守るための専門性、荒っぽさ、命と向き合うこと、自然への畏怖と理解、など何かを訴える力があるのではと思います。なので、手法やテーマを変えて取り上げられるのではないかと。

熊爪は北海道・白糠の町から歩いて1日ほどの山小屋に住む猟師。熊の肝や獣の毛皮、肉、山菜などを町で売って金を稼ぎ銃弾や必要なものを買う。大きな商家の主人・良輔は熊爪を快く迎え入れていたが、家には不穏な空気が漂っていた。熊爪はその家に住む盲目の少女・陽子と出逢う。やがて冬にも冬眠しない"穴持たず"の熊を狩ろうとして、大怪我を負ってしまうー。

予想外の展開。目の前で繰り広げられた野生に救われる主人公。そして宿願を果たす寸前で外される。

「ともぐい」というタイトルのテーマは盛り込まれていると思う。予想外の展開も好みだ。

猟師であることにひたすら徹し、人間界のことは煩わしいと思う熊爪。粗く、研ぎ澄まされる。だから感じ方も違うし、人に媚びない。孤独なぞものともしない。逆に言えば、新鮮さを生み出すためのキャラクター設定だと思う。

本読みをしていると、肯定するタームと、否定するターム、あれこれ気に入らない時期がある。最近ちょっと後者の気がある。

うまく作ろうとしているのが見える気がする。取材したものを提示したいという気配がする。この題材に既視感があるからか、物足りない。描写が足りず、簡単に済んでいるとこがあるようだと、なんか受容するのをためらっている自分がいる。自分は熊ものを知っている、と奢っているのもあるだろう。失って、そのままで、なぜか分かんないような最期を遂げて、エピローグもさらっと。

熊も熊猟も、自然への畏怖を読むのも、詳しい動植物の知識も大いにそそられ、楽しかった。しかし物語的には、集中して読んだわりに、もうひとつ、もうふたつ、私には満足感の欠ける作品だったかな。

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2026年08月23日

Posted by ブクログ

うーん、なんか私には難しかったですね。
生と死の描写が生々しいので、生と死について描きたかったのか?
と思うが、読んでいて生と死を感じられたかというとそうでもないし
ストーリーも猟師と熊の戦いがメインかと言われるとそうでもない感じだし
あと登場人物に共感もできず…
まぁ私には合わなかったな

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2026年08月22日

Posted by ブクログ

個人的にはめちゃくちゃ引き込まれる内容だったか?と問うと微妙なところ。結局最後の結末に関してなぜ??というのが大きい。

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2026年08月15日

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