【感想・ネタバレ】ともぐい(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

明治後期、北海道の山中で一匹の犬を相棒に狩猟に生きる男・熊爪。人里に馴染めず山を縄張りとする彼は、冬眠を逃し徘徊する凶暴な熊「穴持たず」に対峙する。穴待たずとの死闘、そして盲目の少女・陽子との運命的な出会い。獣と人間との境界を超えた理屈のない命の応酬の果て、熊爪が見たものとは。「生きる」とは何か、という問いに真っ向から挑んだ、圧巻の直木賞受賞作。(解説・角幡唯介)

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Posted by ブクログ

明治後期の北海道。猟師として自然の中で生きる熊爪は、一頭の熊との因縁や人との出会いを通して、生と死、人と自然の境界に向き合っていく。圧倒的な自然描写と命のやり取りが胸を打つ、直木賞受賞作。

圧倒的な自然描写と、熊との息詰まる攻防に引き込まれた。しかし、私の心に最も残ったのは熊爪の死生観だった。

熊爪は命を奪うのではなく、「いただく」という感覚で生きているように感じた。必要以上には求めず、自らが与えられた生も、いつかは自然へ返すもの。その循環を受け入れているからこそ、生にも死にも執着しない。彼が見つめていたのは、生き延びることではなく、生と死の均衡を崩さず、自分にふさわしい生を全うすることだったように思う。

便利さや豊かさを追い求め、「もっと」を望みがちな現代だからこそ、「足るを知る」という言葉の意味を改めて考えさせられた。そして、『ともぐい』というタイトルもまた、生と死の均衡という、本作が描こうとしたものを象徴しているように感じた。熊爪の生き様は、読み終えた今も静かに問いを投げかけ続けている。

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2026年08月06日

Posted by ブクログ

河﨑秋子『ともぐい』新潮文庫。

以前から読みたいと思っていた河﨑秋子の第170回直木賞受賞作がようやく文庫化された。

所謂、クマ物である。

古くは苫前三毛別事件を題材にした戸川幸夫の『羆風』に始まり、吉村昭の『羆嵐』『羆』、同じく苫前三毛別事件の詳細を描いた木村盛武のノンフィクション『慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』、吉村龍一『光る牙』、樋口明雄の『約束の地』、北林一光『ファントム・ピークス』、熊谷達也の『ウエンカムイの爪』『邂逅の森』、白土勉の『火の獣』、佐藤友哉の『デンデラ』、久保俊治の『羆撃ち』、増田俊也の『シャトゥーン 〜ヒグマの森〜』と数多くのクマ物を読んで来たが、河﨑秋子の『肉弾』には驚かされた。

そして、この『ともぐい』という作品である。『ともぐい』は単なるクマ物というだけでなく、独り山で暮らす猟師の生を超えた死への渇望と破滅の姿を描いている点で、他のクマ物と少し次元が異なるようだ。

何の疑問を持たず、自分の力だけを頼りに独り山の中に生きる猟師が穴持たずの羆や若羆の赤毛と対峙し、命のやり取りを繰り返す中、何時しか死への渇望に絡め取られていくのだ。


明治後期、北海道東部の山の中の小屋で独りで暮らす熊爪という35歳ほどの男が居た。熊爪は時々、猟で仕留めた鹿や羆を里にある白糠の町に運び、門矢商店に買い取ってもらい、その代金で必要な物を揃え、再び山に戻るという暮らしをしていた。

そんな熊爪の暮らしに興味を持った門矢商店の主人の井之上良輔は熊爪をもてなし、猟の話を聞くことを楽しみにしていた。良輔は何処からか盲目の洋子という少女を引き取り、屋敷に住まわしており、その姿をたまに目にする熊爪には気になる存在になっていた。

ある日、熊爪が山に入ると、羆に襲われたのか瀕死の状態で倒れている太一という男を見付け、自分の小屋に連れ帰る。太一の話によれば、阿寒湖から穴持たずの羆を追い掛けて、この山に来たのだが、狡猾な穴持たずの止め足に引っ掛かり、手負いにしたものの、激しい攻撃を受けてしまったのだと言う。

熊爪は太一に出来るだけの手当てをし、体力が回復するのを待って、門矢商店の良輔の元に連れて行き、医者に診てもらった。

熊爪は自分の縄張りの山に迷い込んだ穴持たずを仕留めるべく山に入ると、穴持たずとこの山に暮らす若羆の赤毛が争っている場面に出食わす。すると、熊爪を目に留めた穴持たずが襲い掛かり、銃を発砲するも急所を外してしまう。

さらに襲い掛かる穴持たずの攻撃を躱すうちに、熊爪は崖下に転落してしまう。転落で背中を痛めて悶絶する熊爪の上に崖を降りて来た穴持たずがのしかかって来たが、赤毛の穴持たずへの攻撃により熊爪は絶体絶命の状況から逃れることが出来た。しかし、熊爪は骨盤を骨折したのか、激しい痛みに襲われ、必死の思いで自分の小屋へと戻る。

本体価格710円
★★★★★

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2026年08月01日

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