あらすじ
学校の不良と母親が付き合い出し家に入り浸るようになったため生きる希望を失った高校生の正矢。記憶を失い独房に監禁されたうえに拷問を繰り返される謎の兵士。二人の意識がリンクした時、凄絶な運命の幕が開く!
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伏線回収が秀逸だったことと、レビューを先に見ていたので、2つの話が後につながるとわかっていたのに、まさかと思う展開で先が気になり、一気に読んでしまうくらい面白かったです。
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飴村行作品、初読み。
いきなり戦時中、上官に拷問されるおそらく脱走兵の物語で、非常に退屈しましたが、物語が1980年代と戦時中の物語を行き来する構成だとわかると一安心。
心配だったのは、角川ホラー文庫なのに、戦時中の拷問シーンと1980年代の青春物語が続き、一体いつホラーになるのか、でしたが、ちゃんとホラー的な終末を迎えてくれました。
1980年代パートの主人公の小学生時代のエピソードで、周りの子供達がジャンプの漫画を読んでいるのに、手塚治虫の漫画を読んでいた、というのが、まるで自分のことのようで非常に共感できましたね。
この作家さんは自分と同年代だし、読んでいた本や観てきた映画が自分と似ているのではないか、と思うと、作品の内容から夢野久作や小栗虫太郎の小説、丸尾末広や高橋葉介の漫画を連想して、マニア心をくすぐられましたね。
Posted by ブクログ
初『飴村』でした。戦時中と現代の物語…何で交互に書かれているのか…最後に綺麗に繋がって凄いと思いました!
つーか…正矢の母親…嫌いな人種やわー。
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2015年、52冊目は粘膜シリーズ以来の飴村行。
あらすじ:大東亜戦争中、東南アジアで大罪を犯した男が目を覚ます。彼は断片的に記憶を失っていた。記憶を取り戻すため、憲兵による拷問が始まる。一方、17歳の正矢、彼の母は先輩でありワルの崎山との愛欲生活に溺れ、幼なじみの親友の心配を他所に、絶望のうちに高校を中退。やがて夢の中で二人は交流を始めるのだった。
飴村流エンタテインメントの佳作。第15回日本ホラー小説大賞長編賞授賞時に審査員の林真理子を危惧させた、拷問描写。今回はスプラッターな色合いを強めてます。また、粘膜シリーズで見せた絶対的暴力や、人間の暗部も健在。張り巡らされた伏線回収も上手い。
一方で、粘膜シリーズで感じた、強引なまでの文章、展開のドライブ感は大人しい印象。そして、代表作『粘膜蜥蜴』の大オチ(ラスト二行)の素晴らしさには届かなかった。
ソレでも、一晩、一気読みの面白さは充分にあります。
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粘膜シリーズ以外で初となるこの飴村作品は、粘膜シリーズの世界観を保ちつつ、かつ安定の面白さだった。
何かの罪を犯したとして曹長から拷問を受ける兵士の話と、同級生が自分の母親と付き合うようになってしまった高校生の少年の話が交互に進む。時代も異なり、しかもかなりぶっ飛んだこの両方の話が次第に繋がっていくのが見事。驚かされた。
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―ーー高校2年生の正矢は絶望しきっていた。先輩で不良の崎山が23歳も年の離れた自分の母親と付き合い始めたのだ。ついに正矢は学校も退学してしまう。一方、独房に監禁された男が目を覚ました。どうやら大東亜戦争中の東南アジアで「大罪」を犯したらしい。そこへ謎の男が現れ拷問が始まる…。やがて正矢と男は互いの夢に現れるようになるが2人の過去には恐るべき謎が隠されていた!
「粘膜」シリーズの飴村行によるジェットコースター的な疾走感のあるスプラッタホラー
緻密な構成の中を、エログロ全開で突っ走る感じはこの人にしか書けないな。
ただ、終盤にもうひとひねりあると文句はなかったんだが……。そしたら同作者の『粘膜蜥蜴』に届くぐらいの傑作になったのになあ、というのが唯一の心残り
「元気過ぎて死にそうだぜ」
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タイトルの意味を表す、「人間の心の奥底にはね、必ず爛れた闇が潜んでいるんだよ」というのは、登場人物の一人、慧爾先生の台詞。
河童も爬虫人も出て来ないけれど、粘膜シリーズと同じく、人間の中のどろどろとしたものを描いた小説です。
粘膜シリーズの醍醐味は、有り得ない設定を当たり前の事のようにさらりと書いてしまっている所や、人間のどろっどろした内面、派手に飛び散る血飛沫等が描かれ、更に壮絶な拷問が続く・・・と見せかけて、絶妙のタイミングで挿入される笑い、と、思っているのですが、それらが、この作品ではかなりソフトになっている印象なので、粘膜シリーズのファンには少し物足りないかもしれません。
しかし、伏線はきちんと回収されて、うまくオチがついているし、面白いです。
それにしても、『粘膜兄弟』に続き、壮絶な兄弟喧嘩です。
後、水原さんが色々と報われなくてかわいそう・・・と思いましたが、飴村作品の中で報われる人がいる訳ありませんでしたね。
Posted by ブクログ
目覚めると憲兵という腕章を付けた男に拷問されているシーンが繰り返されるパートと先輩で不良の崎山が母親と付き合うことになった高校生の正也の顛末が交互に描かれる。こうした筋であれば、当然両者は繋がるのだが、これが実に飴村行らしい突拍子もない設定と人の業と因果の重なりとなっているのが計算なのか天然なのか。ただ、他の作品と比べるのはどうかと思うが、やってることは粘膜シリーズと似ているが、それと比べると大人しいために、物足りない感じは否めない。振るなら振り切るか、まとめるなら理に落とすかにして欲しかった。