あらすじ
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ゴーギャンなどの画家、ジャリやアポリネールらの詩人、そしてシュルレアリストたちに見出された画家ルソー。死後ますます評価の高まるその幻視のリアルティは、彼の絵をみた者に忘れがたい強烈な印象を残す。美術史が位置づける素朴派という軛から解放し、世の無理解にあい不遇のうちに逝った天才の謎にみちた生涯と作品の秘密に迫る傑作評伝。
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Posted by ブクログ
ルソーは圧倒的に変おじさん!
この本はルソーの生涯をたどっている伝記的な本で、ルソーの奇妙な絵の秘密に一歩迫れる研究書でもある。そして分かりやすい。
いわゆる芸術家って感じの奇行や言動によってではなく、むしろ善良さや、税関に勤めていた経歴やきっちりした絵から連想されるように真面目さが目立つ人柄だけど、すべてのエピソードがちょっとずつおかしい。
先達の微妙な(チープな)モチーフを使って奇跡的な絵を描く「眠れるジプシー女」。植物園で書いたのに密林体験を偽る一連の密林絵画群。写真を使って書いてもルソーの世界「ジェニエ親父の二輪馬車」。ルソーはどんなものでもルソーの絵にしてしまう。恋に全力で、その絵は嘲笑されたり誤解されてばかりだけど、ホントは誰よりも絵の天才のルソー。生前もっともっと認められて絵が大事に保管されていればよかったのに。断固ルソーを応援してしまう。
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小学生の頃からルソーとダリとモジリアニとベンシャーンが大好きだったのですが、中でもルソーは特別な存在でした。
いま思うと、彼を薄々自分自身の分身であるかのように感じていたのかも知れません。実は私も、世間的には絵が上手な方ではありませんでした。それで、抜群に上手い二人の友達の描いた絵をいつも模写・デフォルメするのを得意としていて、その真似した絵が市長賞や知事賞などを何度も受賞しました。
自分の方がはるかにうまいのに、と彼らは悔しがったものです。この体験の後にルソーと出会います。その時は何も知らずに、ただすぐ好きになりました。
今度はじめて絵以外のルソーについて知ることになって驚きました。
ルソーの秘密、それは私自身となんと酷似していることか。そう、彼も当時の有名画家をそっくり真似して、似て非なるものを描いたのでした。もちろんただの偶然、むこうは天才こちらは気まぐれにすぎませんが。
それより、生前ほとんど一部でしか評価されなかったルソーは、生活費を稼ぐために似顔絵を描いて、渡した先でその絵の価値がわからない人たちが、絵の具を洗い流してキャンバスとしての評価しかしなかった、という件を読んで、不覚にも嗚咽をもらして大泣きしてしまいました。
生きているあいだ大勢の人たちからほとんど無視・嘲笑の的でしかなかったルソーは、でも、ただ一人、自分自身を確信して生きた稀有な存在でした。
アンリー・ルソー・・・そのすばらしい絵と生き方に、きっとあなたも魅了されるはずだと思います。
Posted by ブクログ
世田谷美術館でルソーの絵を見る前に読めばよかった。
ルソーの絵を見ているとものぐるおしい気分になってくるが、どうやらルソーもやや彼岸の人であったことがこの本から窺える。とは言っても、ルソー自身がまったくの無垢な人間だったのではなく、他の人よりも歴史から切り離された上での計算はしてたのだろうとは思う。
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読みやすくて面白かった。
ルソーの絵はもちろん、ルソー自身にも人を惹きつける不思議な魅力があったんだろうなと思った。
ルソーの無垢さが語られていただけに、作品の中に好きな人の旦那さんが戦死している姿を描いたものがある、という話はより恐ろしく、ゾッとする感じがした。
途中で出てきたアルフレッド・ジャリが映画に出てくるキャラクターみたいで存在感があった。この人のことももう少し知りたいと思った。
Posted by ブクログ
この人の絵も好きだけれど、この本を読んで人柄にも興味を持ちました。まさに素朴という言葉が絵だけでなく、その人柄にも当てはまることが、分かります。職人的な面もあり現代の画家とも違う世代であり、才能の自由を認められない時代に生きていたことも解かりました。
Posted by ブクログ
原田マハさん「楽園のカンヴァス 」からの掘り下げ。私的に一言で言うならば、アンリ・ルソーは孤独に強い人間ではないだろうか。
40歳までは税官吏として働いた。妻も子もいた。独学で絵を描き、当時の公募展に出品する。が世間からの酷評を浴びる。子どもの描く絵と罵られ笑われ馬鹿にされた。され続けた。それでも平然と淡々と絵を描き続け、描き続け、描き続けた画家。けれど、後にこの画家から「僕がこれまで受けてきた侮辱」と言うセリフが度々出てくる。この画家はどんな気持ちで絵を描き出品し、嘲笑や罵詈に絶え、それでも描き続けたのか。また情熱的に恋をして2度結婚もするが、なんとなく孤独感が否めない。彼の心は本当はどこにあったのか。「樹木の画家」と呼ばれるこの画家のジャングルシリーズの絵は細かく、すごい。息を呑み、見入ってしまう。生きる時代を間違えたんだろうなと感じてしまう。素朴で情熱的な、素直で騙されやすいこの画家はどんな気持ちで絵筆を握っていたのか。
この画家の絵も実物を見に行かなくては。
Posted by ブクログ
ルソーについては作品しか知らなかったが、ルソーの人生を知ることが出来て、作品を見方が変わった気がする。原田マハさんが「楽園のカンヴス」で、ルソーがバイオリンを弾いたり、ボンボンを売ったりする話を入れたのは史実だったかと思った。
Posted by ブクログ
謎の多い、画家ルソーの評伝。
「楽園のカンヴァス」を読み、ルソーについて知りたかったので読んだ。
ルソーという人は、捉えどころのない不思議な人物である。
また、とてもお人好しで純粋である。
その純粋さは、常人には理解し難いほどである。
そして、物事に対してだけでなく女性に対してもとても情熱的である。
純粋で情熱的なその彼が、片思いの恋人に宛てた手紙はなんだかとても切なかった。
ルソーが描く子供は、笑っておらず、大人たちが可愛いと思うような表情はしていない。
子供を可愛いと思うのは、著者の言うように「子供に対する優越感から生まれた大人の偏見」かもしれない。
ルソーはその点において、「子供に対して決して優越感を持たない。彼は、子供と同じ平面で向かい合う」という著者の考察は、ルソーの性格から考えても、なるほどと頷ける。
そして、「子供だけでなく、自然の風景や静物も含めて、ルソーはすべてのモデルに対して優越感を持たない」という部分は、ルソーの純粋で実直な性格の一端を言い得ている。
そして、ルソーのその性格が遠近法になじめなかった所以ではないかと著者はいう。
また、肖像画を描くときはその人物の寸法を隈なく測るという彼のやり方は、現実主義者ならではであり、興味深い事実である。
ルソーの人となりが垣間見え、その時代の空気が感じられ面白かった。
Posted by ブクログ
小説「楽園のカンヴァス」を読んでルソーのことが知りたくなったので、参考文献にもなっているこの本を読んでみました。
しかし、私には詳しすぎたようです。
強い願望がいつしか実現したように思い込む性質、恋多き人、自分の中の絵を現実にあらわした人。
実はフリーメーソンに入っていた。
晩年、絵は売れ出してきていたが、そのお金は女性に貢いでいたらしい!とか。
晩年のルソーと描き途中の絵の写真は、興味深いものがありました。
いつかルソーの絵(できれば「夢」)を見てみたいです。
Posted by ブクログ
夢の世界と言われるルソーの楽園の絵。いくつかあるその絵の根源は何であろうか?その問いに、ルソーの生い立ちから整理して、考察する。楽園のカンバスを読んでみると、スローのヤドヴィガに対する恋心が大きなエネルギーとなっていることがテーマになっている。本書では、その彼女の見ている夢を、ルソーが見ているという二重の夢という仮説が面白い。ルソーの絵が持つ、正面性はへたくそではない。密林の絵は夢の中の世界である。その迫りくるリアリズムと、あり得ない構図に、当時は嘲笑の対象であったというのも、絵を見ていると納得できる。確かにのっぺり平面で下手だ。そこから迫りくる感情こそが、ルソーの絵に力を与えているのだという。絵の世界は本当に深い。美術館で絵と対話する時間をとって、じっくりと見たいものです。
Posted by ブクログ
ルソーの絵が好きなので、彼がどういう人間だったかも知りたくなって読んでみたが、著者が自由に書いており、時系列がときどきおかしかったり、ルソーの周りの人のコメントを難しい表現のまま引用していたり、知っていて当たり前なのか解説がなく当たり前のように使われるわからない言葉があったりして、私にはわかりにくかった。
あと、ルソーが描いた絵の解説の際、その絵がなかったりあったとしても違うページにあったりして見にくかった。
もっとレイアウトを工夫してほしいと思う。
ただ、ルソーがとても純粋無垢で、恋愛にまっすぐで、人がよかったことと、それを周りの人間も著者も愛していることが強く伝わってきて、それを知ることができただけでもよかった。
Posted by ブクログ
アンリ・ルソーの描く葉っぱと漆黒が大好きなので。
自分が所有したい、あるいはその中で生きたいと望んだ世界を、誰にも影響されることなくまっすぐに孤独に描き続けた画家。だいぶ変わった人だったんだなぁ。でも、なんだかその「変さ」を支える情熱は、応援したくなる。
描く対象に呪縛された彼を、彼が生きた時代に置いて知ることで、絵を見る際の眼差しがまた一つ豊かになりました。仕上げに当たって、一度に一つの色彩しか使わなかったというのは驚き。
うちの親なんかは「夜中に絵の中から蛇が出てきそうだから家に飾りたいとは思わない」と言ってますが、私はこの、見ていると奥へ奥へと引き込まれそうな絵に、引き続き魅了されます。