【感想・ネタバレ】帝国の死角 第二部・神々の黄昏のレビュー

あらすじ

鈴木高徳少将の息子・二郎は戦後、日本の出版社に勤めていた。
スイス銀行に秘匿されているという父の遺産20億ドルをめぐり、彼に次々と事件が……。

怪しい新興宗教!
零落した博覧強記の作家!
遺産狙いつきまとう男たち!

そしてすべての事件が解決した後、明らかになるのは……。

戦後ミステリ界の鬼才がワーグナー『ニーベルングの指環』に材をとった、
破格の構成が一読忘れがたい日本推理史上に残る大・怪・作!

〈解説〉新保博久

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Posted by ブクログ

高木彬光『帝国の死角 第二部 神々の黄昏』中公文庫。

高木彬光の代表作の1つに数えられているようだが、数十年前に角川文庫で高木彬光の作品を読んでいた時には全く興味を持っていなかった。

第一部と第二部とで、こういう仕掛けになっていたとは驚いた。第一部を読み終えた時は壮大なスケールの冒険小説だと思ったのだが、第二部は一転、推理小説となっている。それにしても、最後の最後に待ち受けていた裏切られたような結末には心底驚いた。


天皇の密命を帯びてドイツに渡り、終戦後に日本の地を再び踏むことなく、海軍少将の鈴木高徳が亡くなってから20年後。鈴木の息子の二郎は日本の出版社に務めていた。そんな鈴木二郎の元に八光会という新興宗教団体の幹部から団体とは切り離した形で新たに出版社を立ち上げるので、破格の待遇で移籍して欲しいという依頼が入る。

そんな中、7年前に会社の金四千万円を横領し、失踪した兄の健一が二郎の元に現れる。さらに鈴木高徳がドイツで未亡人のレマンとの間に産まれた息子のハチローが来日する。さらには鈴木高徳のスイス銀行口座の二十億ドルという莫大な遺産を巡り、二郎の周囲で次々と事件が起きる。

鈴木高徳に関わった人物たちの怪しげな動きと登場人物たちの不思議な縁とが、日本で普通の生活を送っていた二郎の運命を変えていく。

本体価格1,300円
★★★★★

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2026年07月11日

Posted by ブクログ

第一部では、第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台にナチスドイツとユダヤの人々と日本人のかけ引きが巧みに描かれていた。この第二部は本作品が発表された同時代である昭和四十年代の東京が舞台。第一部の登場人物達の子にあたる人々が次々と登場し、そうか第一部とこういうふうにリンクするのか、と読み進み、いかにも探偵小説な結末にたどりついたあと、「エピローグ」(pp428-443)を読んでひっくり返るという構成。正直いって第一部よりはかなりスケール小さくなった話だなあと感じたので、瀬戸川猛資の「ワーグナーも可哀そうだ」(p447)という酷評には大笑いしながら同意してしまいそうになるのだが、それは、高木があまりにもワーグナーを下敷きとして使いすぎたゆえの解釈な気がする。この作品の真価はそこではなく、メタフィクションであることを露わにする「エピローグ」にあるのだろう。

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2026年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 第1部「天皇の密使」、第2部「神々の黄昏」。第1部は山本五十六の密命で、天皇家がスイス銀行に預けた資金をもとに、ドイツを拠点として秘密裡に軍事戦略物資を集める海軍軍人のインテリジェンスと、その物資と資金を横取りしようとするSS将校との対決が主旋律となる物語。第2部は、その軍人が残したとされる遺産と新興宗教教団内部の跡目争いが絡んでいく、という展開。最後の「エピローグ」で、第1部が作中の小説家による創作だったことが明かされて、2部にわたる物語世界自体が蜃気楼のように消え去っていくという展開は、三島の『豊饒の海』4部作を想起させる。

 第2部はややまだるい感じがするが、第1部のSSとのインテリジェンス対決の物語は読みごたえがあった。山戸という謎めいたスパイのキャラクターも魅力的。ヨーロッパに於ける「8・15」を描いた小説という点でも記録しておきたい(それが作中作で「捏造」と語られてしまうので、これ単独で論じにくくなってしまったのが何とも残念だが)。

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2026年08月06日

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