あらすじ
屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカ――脈絡なく繋げられた不気味な挿話から、作家中田と女たちとの危うい日常生活が鮮明に浮かび上る。性の様々な構図と官能の世界を描いて、性の本質を解剖し、深層の孤独を抽出した吉行文学の真骨頂。「暗い部屋」の扉の向こうに在るものは……。
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Posted by ブクログ
これまで読んできた吉行淳之介はあと一歩理解が追いつかず、というより読み方を得ていなかったが、今回は素直におもしろいと思えた。読んだときの感触は相変わらず一緒なような気もしたのだけど、これは誰かにすすめたいなあと思える。
章ごとにはっきりとした繋がりがないところにたまらなく魅力を感じる。とくにある学者の逸話として語られる白痴の子供たちの住む屋根裏の話は物語といちばん関係ないようで、いちばん核みたいなものに僕を近づけてくれた気がする。
「最初無関係に散乱していたように見えたモザイクの一つ一つが、すべて、ある秩序にしたがって配列されているのだと諒解されてくるのである。」という解説の川村二郎の文章がしっくりとくる。
吉行淳之介の眼を通した性をこれからも読んでいきたい。