【感想・ネタバレ】村上春樹論  『海辺のカフカ』を精読するのレビュー

あらすじ

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

日本、アメリカ、中国等で大ヒットした『海辺のカフカ』。カフカ少年とナカタさんのパラレルな物語に"癒し"や"救い"を感じた人も少なくなかった。けれども、本当にそういった内容なのだろうか?丁寧なテクスト分析によって、隠された構造が浮かび上がる。暴力が前面に現れつつある「九・一一」後の世界に、記憶と言葉の大切さを訴える、渾身の村上春樹論。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

これだけ精読するのだから、ホメるのかと思うと批判する方に向かっていくのでびっくり。出てくる小説の内容がどう「カフカ」と関係してくるのか参考になるのはいいけれど、なんか理屈が重なりすぎてこじつけ的批判って気もしてくる。

0
2009年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 小森陽一氏の村上春樹論である。『海辺のカフカ』を再読した後、この本を読んでみようと思い立ち、再読をして今回読み終えた。
 自分自身の研究のアプローチに役立った点がある。自分が援用しようとする理論を十分に説明した後で、それを作品の解釈に当てはめていく点である。まあ当然のこととはいえ、これをやることが必要なのだなと改めて感じた。
 小森氏はこの『海辺のカフカ』において村上春樹を痛烈に批判する。そして文学の貶めるものだという。だが、かくいう小森氏の文学観はどこから来ているのだろうか。どうもそれが十分に説明されているとはいいがたい。その文学観はアプリオリに設定されていて、自明のもの、そしてそれしかないもののように扱われている。そしてそれに、『海辺のカフカ』は反している、と批判しているのだ。
 その批判の論旨はそれなりに説得力がある。『海辺のカフカ』における「入り口の石」の意味など、新たに理解できるものもある。だが、氏が批判する『海辺のカフカ』に示された諸々のものを読者に提示するということも、また文学の意味合いであり、働きなのではないだろうか。
 私には、村上春樹が『海辺のカフカ』で提示したことそのものこそが、現代日本の姿であり、現代という社会のありようなのだと思う。そうした中で我々は生きざるを得ないのであり、その中にあってわずかな希望を、ラストシーンで田村カフカ君が示しているのではないか。
 無論、私は筋金入りの村上春樹ファンである。よって、批判意見はあまり賛成できないというバイアスがかかっている。それを認めた上でも、やはり小森氏の批判もまたある種のバイアスがかかっているように思う。

0
2012年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こじつけとしか考えられない箇所が多いにも関わらず堂々と批判していらっしゃいました。でも、目のつけどころが良いといいますか、自分では(当たり前ですが)気づけないポイントに視点を合わせて説明なさっていて、この人頭いいな、と思いました。笑。たくさん読み込んでるんでしょう。単なる解説本よりはるかに面白かったです。TVタックルだと大人しめなのにね。

0
2014年08月19日

Posted by ブクログ

村上春樹著「海辺のカフカ」の専門的な解釈を知りたくて、手に取った本。

著者は「海辺のカフカ」の読者の大半が、その作品に対して「恐怖」を感じることはなく、「救い」や「癒し」を感じたことに危機感を抱く。
そして、村上春樹が作品内に散りばめた文学作品を引き合いに出しながら、著者の解釈論が展開される。
体的にかなり強引な印象は受けたが、「オイディプス神話」等を解説しながらの論述は、その解釈は別として、新しい村上春樹の読み方を提示してくれた。

村上春樹を自分なりに深く理解するために、他の文学作品にも精通したい。

0
2010年12月30日

Posted by ブクログ

姉のような存在であるさくらさんに対する創造上の「レイプ」−。「「従軍慰安婦」の問題の根っ子にあったのは、記憶と歴史認識の問題です。しかもそれは、近代国家によって人為的に遂行された侵略戦争、植民地支配を拡大していくための帝国主義的戦争の中で、暴力を行使する軍隊という男性たちの組織に、密接不可能に組み込まれた戦争における性暴力、強姦=「レイプ」の組織的日常化の問題でした。pp.256-257」「ハルモニたちは、最も抑圧された女性の側から「記憶の証言」の声を上げていったのです。彼女たちの運動は、ホロコーストをめぐる「記憶の証言」や、植民地における虐殺や暴力の「記憶の証言」とともに、1990年代の「歴史」から「記憶」へ、という世界的な大きな流れをつくる、とても大切な力になっていったのです。p.262」「「文学」という2字熟語は、漢字で書かれた死者たちの言葉すべてについての学問のことです。p.277」

0
2009年10月04日

「小説」ランキング