【感想・ネタバレ】灘中奇跡の国語教室 橋本武の超スロー・リーディングのレビュー

あらすじ

橋本武の伝説の授業は、中勘助『銀の匙』一冊を中学3年間かけて読み込む。遠藤周作、東大総長、多くの医師などを育て、灘校の「東大合格日本一」に貢献。教え子が教育の本質を問う。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「灘中 奇跡の国語教室」
橋本武の伝説の授業は、中勘助「銀の匙」一冊を中学3年間かけて読み込む。


遠藤周作、東大総長、多くの医師などを育てたこと、灘の東大合格日本一に貢献したこと、この2つだけでも十分に凄いし、単純にただただ尊敬の念。しかし、この2つ以上にインパクトが大きいのは、橋本氏の教育への情熱と姿勢です。


例えば、授業の本質を含みながら、現在注目されているような「楽しみながら授業を行う」ということを「銀の匙」1冊を用いて、数10年前から実施していたこと、それを灘という日本No.1の中学校で貫いたことも勿論だけど、ガリ版での教材作製(草仮名もつくっちゃうw)に関しては、本当に凄いし、著者の黒岩氏も述べているけど、それはそれは感動するだろうと思います。一体どれだけの時間と労力を要することか・・・。


現代の教師からすれば、どうして受験に関係ないガリ版刷りの草仮名教材を作ったりしたのか、理解出来ないかも知れないし、それは無駄なことに思えるかも知れない。そんな無駄なことに対して、黒岩氏は次のように述べています。


「草仮名の読む方は忘れても、自分の趣味だと言いながら先生が鬼気迫る勢いでガリ版刷りに明け暮れたその思いは、私の記憶の中に残り、自分の血となっている。「銀の匙研究ノート」を始めとするガリ版刷り教材にかけた天文学的な先生の熱情は、今の私の中である種のエネルギーに形を変えて燃え続けている」


つまり、黒岩氏にとっては、橋本先生の授業は無駄なものでは無かったということ。また、忘れてはならないことは、橋本先生の授業が、初めて東大合格数日本一を達成するという最大限の結果を出したということです。王道というか一般的な教育の本道からそれた橋本流で結果が出たことで、結果を出すには、必ずしも本道に沿わなくても良いと分かった、周りが認め出した。何より橋本流は、横道にそれているようでも、日本の教育の本質を抑えている、それが受験に勝つことに繋がる可能性があると分かった。この2つは、橋本流の授業が灘中で続く上でとても大きかったのではないかと思いました。


でも、一番は、橋本先生の授業を通じて、生徒達が国語の楽しみを知ったこと。教育の本質は、常に如何に楽しむかかも知れません。現在も日本一にいる灘で、橋本流の国語授業が行われて来たことは、とても大きく、教育を考える良い機会ではないでしょうか。


近年、橋本先生が行った授業に参加出来た生徒達は、ラッキーですよね。

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2013年01月04日

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