【感想・ネタバレ】サマー/タイム/トラベラー1のレビュー

あらすじ

あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼なじみの悠有はたった三秒だけ未来へ跳んだ。〈お山〉のお嬢様学校に幽閉された饗子の号令一下、コージンと涼とぼく、そして悠有の高校生五人組は、〈時空間跳躍少女開発プロジェクト〉を開始した。それが、悠有と過ごす最後の夏になるとも知らずに──。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 人は自分の気分次第で壊せるものをそれぞれ持っている
 お前はそれが人よりデカい
 それだけだ。

 という玄海師範の言葉がなんでかずっと刻まれている。

 壊せるもの、の中に玩具やペットから始まり、
 恋人とか家庭とかの人間関係が含まれているのがいかにも富樫さんっぽいけれど
 要するにこれは誰に甘えるかという話なのかなって。


 考えるべきことを考えないのも甘え、だし。
 大切なものが大切なまま、側にあり続けると思うことだってもしかしたら、甘えだし。


 なんとなく、解った気がする。
 オレは取り残されたいんだね。いつだって。
 取り残されて、それでもそうしている自分を、悪くないって思いたいんだろう。
 もう、いい大人だから。
 悪い大人だからか?



 予感。いまだからこれを読まなければという。
 むしろ必然なのかとすら思える。こういうとき、こういう時代だから、この一冊がこうやって、オレのところに届くくらいには日の目を浴びて。
 そう考えると、いま、ここ、に導いてくれた日本SFの臨界点、は恐るべきものなんじゃないだろうか。
 仕事してるぜほんとに…
 懐かしい話をしているな、と思ったら2005年、という年号に、あれそんなに最近だったっけ? と思わされてそも、2005年を最近、と認識していることに粟立った。
 その上で、作中の批評的な未来予想図を、ともすればあぁそんなことあったよね、と思いながら読んでしまいそうになる、この現実感。
 リアル・フィクション? なんて云いかたでピンとくるのだろうか?
 事実は小説より奇なり、とはよく云うけれど、緻密に組み上げられた物語が、現実と区別が付かなくなる?
 否、もう少し。
 そう、ぽん、と何かの拍子に、
 現実の一歩先に辿り着いてしまう瞬間というのが、確かにある。


 各所にちりばめられたSF論や、特にタイムトラベルの分類と体系化をしている部分は、カーの密室の講義と似た資料的価値もあると思う。まぁこれまるっと飲み込もうとしたらもう一回半生をやりなおすくらいのことになりそうだけど。
 それこそタイムトラベルでもしないと、追い付けないよ。


 ☆4です。それも、これからもっと上がっていきそうな。
 くそう。

0
2020年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

SFというよりは2000年前後のラノベだなぁと感じるスノッビーな語り口が読みづらい。その手の会話や語りに意味がないとは思わないが、さすがに1ページに何度も比喩や回りくどい表現を入れてくるのはちょっと多いかなと。なんだか時代を感じる。

全体的な評価は下巻を読まねば下せないが、今のところはやや微妙。

0
2017年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作は1・2作からなる長編SFとなっております。
この1作目なんですけど、後半にタイムトラベル作品をまとめた座標がありまして、一見の価値ありとなっております。

作者は、タイムトラベルストーリーのファンなんでしょうね。
作中に正式な名前を持たない猫がいるんですが、時折ピートと呼ばれたりしてます。タイムトラベルストーリーファンへのサービスだと思います。

0
2013年03月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一巻を読んだとき、これは好みが分かれる小説だな、と思った。作品中に言及されるタイムトラベルもののSFは、知っている人から見れば思わずニヤリとしてしまう楽しさがある。でもSFをあんまり知らないって人にとっては、内輪じみた内容に疎外感を覚えるんじゃないかな。かといって全体としてはハードなSFではなくて、どっちかといえば青春小説としての比重が高い感じ。
おまけに舞台背景に時事ネタ多い。アフガンでの戦争だとか、9・11のテロ事件だとか、ソニンの「カレーライスの女」だとか、「茄子 アンダルシアの夏」とかの話題とか。


私の最初の感想は、「こんな高校生は嫌だ!」

自称も他称も「頭がいい」
実際IQが高い。
年間150冊ぐらい本を読んでいると豪語。
漫画や雑誌じゃない本を読まない人を見下している。
いきなり「ナッシュ均衡」とか「遺伝子工学の未来と、親を選ぶ権利の発生」とかについて語りだす。
妙に冷めているというか、冷めていると見せかけようとしているというか。
自分達には未来がない、と冷笑する。
自分は何も信じていない、と訴える。
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読んで

"
「このホールデンってキャラ、なんだかとっても莫迦に思えてしょうがないのよ」
響子によれば大半の人間は莫迦か鈍感になる。という経験則をさっ引いても、彼女の主張にはそれなりに説得力があった。
「度胸がないし、映画が好きなんだか嫌いなんだか分からないし、何でもかんでもit depressed me かit killed meって、読書家っていうわりには文章が下手で語彙が少ないし。(略)」
"

とのたまく。まあ、同意するけどね。

語り手である主人公に感情移入も共感もできない。むしろやっかみとか反感とか敵対心とか覚えてしまう。おまけに気を引こうとしてわざと時系列を無視する語り方にどうも好感が持てない。

それでも意外と後味が悪くないのは、エピローグで話がきれいに落ち着いたからだろうか。読んでよかった、とさえ思える。読中と読後のこのギャップに戸惑うな。

0
2023年03月08日

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