あらすじ
核戦争後の放射能汚染は、火星の人間たちを地下の空洞都市へ閉じ込め、アンドロイドに地上で自由を謳歌する権利を与えた。だが、繁栄をきわめる有機アンドロイドたちにはひとつの伝説があった。破壊神エンズビルが現われ、すべてを破壊しつくすという……。人間対アンドロイドの緊張たかまる火星を描く傑作長篇
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Posted by ブクログ
うおっ、これは!!他人にジャック・インするとこなんて、サイバーパンクじゃんか。どっちが先なんだろう。誠元が夢を見るところが、彼がアンドロイドであることの伏線になってるところなんて、うまいよなあ。アンチが、実は現実の人間(我々)のメタファーになってるんじゃないかと思われる瞬間もドキドキもの。ずっと火星に住んでいると思わせといて、実は地球だったというのにもびっくり(だけど、意味はわからん。なんで破沙の人間はここが火星だと思ってたんだろう)。アメリカ人にとっての自由の女神が、日本人だと大和になるわけね。
ただ、堂本貴義とか堂本和子とかがなんで登場してるのか、ちょっと作者の意図がわからん。破沙の生活にリアリティを出すためなんだろうか(エンズビルが来たあと、W管理組合ってどうなるんだろう)?確かに、メグにこいつらがこてんぱんに罵られるところはスカッとしたけど、メグだってアンチをおもしろ半分に殺してるぶん、かなりやばい奴なんだけど。
けど、こういう話のわりに、里司が駅で待ってるところとか、妙に感情移入しちゃうんだよな。舞がトラプシンで猫に変わるシーンなんて、ここしばらく味わったことのないほど感動しちゃったし。
確かにどういう話なのか説明するのは難しい。でもまぎれもない傑作。
Posted by ブクログ
人間が地下で生活するその上、地上ではアンドロイドが自由を謳歌していた。
人間のように暮らし、自由に生きて、死ぬアンドロイド。
死んだように地下でひっそりと生かされて、死ぬ人間。
一体なんのために生きるのか。
そしてエンズビルは一体なにをもたらすのか。
エンズビルが降り立った部分からおもしろかった。
里司の役目とアンドロイドの役目。
そして未来を見る人間と過去を見るアンドロイド。
確かにアンドロイドは人間の生み出したものなのだと。
いかんせん、字が小さいので読み終えるのになかなか骨が折れた。
Posted by ブクログ
構成が緻密ですごく計算されてると思った。最初は、未来の火星の安部公房風な群像劇が結構長めに書かれてて、ちょっと冗長かな~とか思っていたんだけど、気になるのはなぜかアンドロイドが全然出てこないこと。それがなんだかとても不気味な雰囲気を漂わせていて、後でアンドロイドが出てきたときのインパクトがすごいことに。
最後に主人公(?)の誠元(って描いてミツヨシと読む、途中まで気付かずマサモトだと思ってた!)が自身にまつわるとんでもない事実を知るのだけど、そこに至るまでがすごい! 気づいてないのは本人だけで、読者はとっくに気付いてる、その気付かせるための伏線、意外にさりげないその回収と、誠元が気付くまでの間のぞわぞわする感じが絶妙。イタイとも言うのか。
本来人間のために作られた機械が、そのうち人間を凌駕して……というのは割とありふれているのだけど、未来を予知できるのは人間だけ、っていうのがすごくいいなぁと思った。
しかしなんで完全食製造のシステムをそんなことにしたんですか。そこはつっこまずにはいられなかった……(笑)