あらすじ
禍々しくも美しい、絶望的世界が凝縮された本格恐怖短篇集。土地の因縁、呪いの伝播、怪異との邂逅……現実が崩れ落ち昏い狂気が立ち上がる。残酷、耽美、暗黒の限りを尽くした現代ゴシックホラーの極致!
◎解説=米光一成
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
単行本 2009 積読にしていた
高原英理恐怖譚集成 2021
文庫化 2026
文庫化に際して異動あり。
「グレー・グレー」 out
「出勤」 in
ただし「平成怪奇小説傑作集 (3)」(創元推理文庫) 2019 に「グレー・グレー」は収録されているので、よし。
一作一作に感想は書かないが、凄まじい一冊であった。
全体を通じて、残酷描写たっぷり。
しかも文体がねちっこく、迂遠なところもあるので、その残酷さがまるでぽわっと、酔いの合間の幻想のように感じられる。
これこそが江戸川乱歩が喝破したところの、残虐への郷愁ではないか。
>神は残虐である。人間の生存そのものが残虐である。そして又、本来の人類が如何に残虐を愛したか。神や王侯の祝祭には、いつも虐殺と犠牲とがつきものであった。社会生活の便宜主義が宗教の力添えによって、残虐への嫌悪と羞恥を生み出してから何千年、残虐はもうゆるぎのないタブーとなっているけれど、戦争と芸術だけが、それぞれ全く違ったやり方で、あからさまに残虐への郷愁を満たすのである。芸術は常にあらゆるタブーの水底をこそ航海する。そして、この世のものならぬまっ赤な巨大な花を開く。芳年の無残絵も、その幻影の花園の小さい可愛らしい一つの花だ。
まさに。
割と昨今のJホラーからの影響もありそうな気もする。
あと、タイトルがあっさりしているからこそ、ドアがふつうだからこそ、室内が落差でエグい、というか。
ポッドキャスト「ちのりのラジオ震夜便」でいくつか言及あり。
■「町の底」
■「呪い田」
■「樹下譚」
■「出勤」
■「影女抄」
■「帰省録」
■「緋の間」
◎解説=米光一成
Posted by ブクログ
読んだことのある短編が多かった気がするが、それもちょうどよく内容を忘れかけて読みごろになっていた。
非常に猟奇的で陰惨な内容ばかりなのだけれど、同時に現実から遊離してどこかなつかしく、文章が素晴らしく読み心地が良い。
結果、グロテスクな内容なのに読んでいると気分がくつろいでくるという不思議なことになる。「出勤」は初めて読んだ気がするが、中央線沿線の感じがあって特に懐かしく感じられた。「影女抄」はとにかく官能的。「呪い田」と「緋の間」は、集合体恐怖でゾワゾワしながら読んだ。
Posted by ブクログ
こんなにタイプの文体でタイプの物語を紡ぐ作家を今まで知らなかったのが悔やまれると思うほど面白かった。「出勤」「影女抄」が特に好きだったかな。グロテスクで官能的。小学生くらいの頃に出会っていたらいろいろと歪められていたかもしれない。
Posted by ブクログ
禍々しい。近づき過ぎると障ってしまうのかな。
『町の底』人の食という欲望が怖い。子供を穴に落とすなんて…!からの結末までに二転三転怖がれる。一番好きかも。
『呪い田』これだけ全て失くしておかしくなった人が怖い話かな?
『樹下譚』全体でみれば美しい話なのに屋敷の座敷牢の記憶等おぞましい怖さがある。
『出勤』全て捨てて逃げた先の世界なのか?最後は自分も…?それでもそこでいいのか?
『帰省録』何を願ってしまったんだろう。
『緋の間』主人公はどうしてこんな目に…。どこまでが実際にあったことなんだ。巻き込まれる系は恐ろしいな。
Posted by ブクログ
町の底・呪い田は良かった。良かったけども呪い田に関してはホラーからくるゾクゾク感ではなく集合体恐怖症からくるゾワゾワ感だった。
残りがなあ…なんていうか、こう終わり方が曖昧、いやホラー系はだいたいが曖昧なんだけど、夢うつつの頭と思考がぼんやりとしたようなそんな綴りと終わり方だった気がして。正直、町の底・呪い田で良ホラーの満足感を得ていたので、後の作品達は物足りない続きだった。
それはさておき、話の文体を象る表現、言葉の並びが普段は使わないような言い表しであったりしつつも小難しいとは思わず、むしろきちんと読めていた。小難しくても文体全体がやわらかくしっとりとしていて、まわりくどいと感じる言い回しが無かったからだ。と思う。
Posted by ブクログ
抒情的って使わないし、あまり見ない。対して叙情的も同じ意味合いで、現代ではこちらが一般的に使われているようだ。
抒情的恐怖ってなんだろう、内面的な感情を詩的・芸術的に表現する・・・
難しく言われても分からないので読んでみる。
7篇あったが、怖いという感じではないけど、猟奇的だったり、惨殺だったりするのはやはりおぞましいという感覚。
「町の底」は話に引き込まれ、「呪い田」は元のおじいちゃんの呪いってなんでそんなに・・?
「樹下譚」は“夢こそまこと”これが抒情的美しさというのだろう。
「影女抄」はまるで官能小説を読んでいる感じ。残虐ではあるが。
結局のところ、それほど怖くはなかったが、おどろおどろしい場面があったりで不快になったりもしたが、恐怖を愉しんだ。
★ 3.8
Posted by ブクログ
研ぎ澄まされ、同時に底なし沼のような語り口。装飾を排して正面から描かれる不可知なものに対する恐れ、或いは憧れ。中毒性のある文体や構成の巧さ、その美学に嵌る。『町の底』『呪い田』『帰省録』と、収録作七篇はどれも魅力的だが、中でも『出勤』の豊かさと完成度に唸る。暖かな狂気、静謐な残酷、日常に佇む異界。余韻。嘆息するしかない。