あらすじ
つぶれそうな食堂のオリジナル親子丼。涙が止まらない、海の味のスープ。ごはんをお代わりさせる豚キムチ。熱中症を救った牛乳小豆シャーベット。そして、思い出のカラフルゼリー。中森リリーが作る料理には、人の心をつなぎ直す力があふれている。読めばきっと、誰かとごはんを食べたくなる、やさしさに満ちた物語。
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Posted by ブクログ
「傷つかない位置で手を伸ばしたって、何にも届かないよ」
この一文に、ちょっとドキッとしてしまった。
傷つかないように、失敗しないように無理せず生きる。それは、たしかに楽なことのように思えるけど、意外と人って、傷つかない位置にいるだけじゃ満たされないんですよね。安全な場所にとどまることと、ちゃんと生きること。この二つは、案外別物なんだなと立ち止まってしまった。
主人公は愛想がなく、人と深く関わるのが苦手な中森百合(リリー)、26歳。高校卒業後、定職にはつかずアルバイトを転々とし暮らしている。でも、料理はかなりの腕前。たまたま求人アプリで見つけたつぶれかけの食堂「あらき」で働くことになり、リリーの人生の歯車がゆっくりと動き出す。
とにかくリリーが作る料理が、どれも美味しそうだった。簡単な作り方も載っていて、料理上手な人なら再現できてしまうかもしれない。海の味がするスープ、ごはんがすすむ豚キムチ、熱中症で弱った大家さんを救う牛乳小豆シャーベット。読んでいるだけでお腹が鳴る場面が、いくつもある。
でもこの物語で一番心に響いたのは、料理そのものより「誰かのために作る」ことで変化するリリーやまわりの人々の姿。
リリー自身は多くを語らないタイプなのに、彼女が料理するたびに、まわりの人の心がすこしずつほどけていくのがわかって、それが読んでてすごく心地いい。
食べる人のことを精一杯考えて作る、リリーのごはん。食が人を変えるんじゃなくて、食に込めた誰かの想いが、人を変えていくんだなって。すっと腑に落ちた。
料理が苦手な私は、料理=作業(いかに効率よく作るか)な感覚がどこかにあったけど、この本を読んで少し考えが変わった。
やっぱり瀬尾さんの描く物語はとても澄んでいて、最後まで心地よいなと思った。
Posted by ブクログ
「おいしい」が明日の私を連れてくる。
「食べること」は、お腹を満たすだけじゃない。
人と人の距離を縮め、心まで温めてくれる。
そんなことを改めて感じさせてくれる1冊でした。
物語に登場する料理は、どれも本当においしそう!
読みながら、「これが食べたい!」
と想像するのが楽しい!
私もいつか、中森リリーの料理を味わってみたいなぁ…
そして、心に残ったのは中森の発したこの言葉。
「今後、おいしいって言わないやつに作るのやめましょう。」
“おいしい”のひと言は、料理への感謝でもあり、作ってくれた人への思いやりでもある。
当たり前のようで、つい忘れてしまいがちな大切な言葉を、この物語が思い出させてくれました。
読み終えた頃には、誰かと食卓を囲みたくなる。
暑い夏には、物語に登場するひんやりとしたゼリーが恋しくなること間違いなし。
心までやさしく満たされる、夏にぴったりの1冊。