あらすじ
「あなたの人生を円グラフで表現してください」大学院生の僕は、エントリーシートを書くのをやめて、小説というフィクションを書き始める。青山の占い師、80億円を運用する自称凄腕トレーダー、偽ロレックスを腕に巻く漫画家。小説家・小川哲が遭遇する怪しげな人物たちの末路……。成功への渇望と満たされぬ承認欲求の果ての嘘と真実を描いた、傑作連作短編集。後日譚「革命前夜」を収録。(解説・大森時生)
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Posted by ブクログ
面白かったです!
小川哲さんの本は初めて読みました。前情報なく読み始めたので、プロローグから「これは私小説?」となったけど、『三月十日』なんかは「え?ミステリーなの?」とか、いろいろ想像しながら読んでました。
帯に書かれていた「承認欲求のなれの果て」を読み終わった後に見て、「あぁなるほど!」と。
誰かに認められたくて虚構を作り出し、その虚構に盲信する信者がさらなる虚構を作り出す。『サピエンス全史(上)』の認知革命でサピエンスは虚構によって考えられない数のサピエンスが協力できるようになったとあったけど、まさに人間だけの営みだなと感じました。
『革命前夜』では、純真無垢な子どもたちが洗脳されていく様子は恐怖を感じた。
とにかく面白くて一気読みでした!!
Posted by ブクログ
表題作も好みだが小説家の鏡(占いの話)が個人的には好き。占いとは誰でも当てはまるようなことを相手に問いかけ、相手が引き出した本心をあたかも占いの結果と見せかけることで過去現在未来を予言したと錯覚させる。ある程度の手法があれば誰でもできると筆者は言う。友人の妻が占いの予言を完全に信用し、仕事を辞めて小説家になろうとしていたことに対して、その友人と筆者は止めに入るために、占いが偽りであることを証明するべく、予想される占いの手法を逆手に取って策を練って占いを受ける。占いの手法が予想通りだったものの、友人も筆者も占いを一瞬信用しかける。手口を知っていながらこうなったのは、占いで得られる結論は未来予言などではなく結局は本人の意思の具現化であり、友人の妻も結局はそうなりたかったという意思がそうさせたのだと気づく。
そう言われると占いに行ってみたくなる。
Posted by ブクログ
人の本質というか、生きていれば誰しもあるような経験を、包み隠さず書いている。
感想は難しいが、投資家の話と、デイトナ、学校の先生の話が印象に残った。
この作者は、とても頭がいいんだろうと思う。
Posted by ブクログ
一人称目線で、同級生や今の仕事関係の人たちといった他者を見つめることで自分を見つめ直す話のように感じた。他者の捉え方が共感できることが多く、淡々と進むけど一気に読み進められた。悪事は悪事だけど、その人の全てを表していないとか。当たり前なんだけど、直接関わりがあって感情的になってしまうとそうは思えないよなーとも思ったり。
過去のことが知らないうちに記憶違いになっていたりとか、記憶に残っていない日があることを改めて思い返してみたりというエピソードは好きだった。記憶違いのことは結構経験があって、自分ではこうだったとか実際にあったと思ってたことが他の人の記憶では違っていたり全くないものだったりして。でもそれはどっちが正しいのかどちらも正しくないのか真実を突き止めることは不可能だから、いつも不思議な気持ちになりながら話が終わっていた。だからこの本にそのことが書かれていて普通に誰にでもあることなんだとほっとしたり。
前半は特に内省的な内容が多かったように思う。ちょっと違うかもしれないが、村上春樹の風の歌を聞けを思い出した。雰囲気的なものが似ていたのか。
Posted by ブクログ
朝井リョウさんのラジオで度々話題になる小川哲さんの有名小説と聞いて。
小川哲さんが気になりすぎてYouTube見て、雰囲気や、哲学すきな点に惹かれ、なんかわからないけどこの人を理解したい、という強い想いに駆られて読んだので、若干フィルターはあるかも。
小川哲という小説家が主人公の、フィクション短編連作集。本人名ということと、直木賞受賞の話とあり、ノンフィクションなのでは?と何回も疑いながら読みきった。
彼女と結婚をするために就活をしようとする話。東日本大震災の前日(3.10)に何をしていたのか考える話。偽物のブランド品を身に付けながら他人の話をネタにして漫画を書いている人の話。自分の才能を認めてもらうためにポンジスキームに手を出し逮捕された同級生の話。ホメホメカードで破綻していたクラスを見事にまとめ上げ、もはや宗教的な才能でクラスを支配下においたクラス担当教員の話。とか、複数の短編が絶妙に、「虚構」というキーワードで繋がっている。
どの作品にも「嘘」が存在しており、その嘘の大きさは様々だが、ストーリーが進むにつれて、その嘘がどんどん大きくなって、現実と虚構の世界線が薄れていくなような感覚になる本だった。
「なかったことにしている」記憶がいったいどれくらい存在しているのか、それを証明する手立てもないなかで、自分が今生きている世界が真実であることの確信が揺らぐよね。
文章は地味。でもエッセイと小説の間を彷徨うな書き方含めてよかった