【感想・ネタバレ】人間形成の日米比較 かくれたカリキュラムのレビュー

あらすじ

多くの共通点をもち、互いに影響を与えながら、二つの国で「日本人」「アメリカ人」はどう形成されるのか。とりわけ摩擦の一因ともなっている“個と集団”への意識はなぜ異なるのか。子供観の検討、初等教育の比較から、著者は集団への同調行動の二つのモデルを見出す。両国で教育をうけ、カルチャーショックと逆カルチャーショックに交互に見舞われた熱い体験と、初等教育の現場での冷静な観察から生まれた、日米比較への新鮮な視点。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1992年の本であるため文献としてはもはや古いです。
僕が初めてこの本を読んだのは約5年前でした。
その時の衝撃は凄まじくまた驚愕したものですが、再読すると、拍子抜けやら肩透かし…最早色褪せたような感触でしかありませんでした。
乳幼児の子育てに関して、アメリカでは性悪説に則り『甘やかしは堕落へ導いてしまう』と危惧して厳しくしつける。
例えば赤ん坊の夜泣きは親に対する挑戦と捉え、授乳を禁止し泣き止むまで放っておく。
一方で日本では性善説的見地から『かんの虫が強い』と責任転嫁し、赤ん坊はわざと泣いたり迷惑をかけたりしているわけではないとし、寛容な子育てをする。
学校生活(特に小学校)に関して、アメリカでは教師の厳戒な統制が図られ、反発した生徒には厳罰を下す事も辞さない、言わば軍隊のような教徒関係があり、
日本では、生徒を数人の班やグループに分け、その中で協調し、教師は間接的支配者となって運営する。その主な手法は他者の感情に訴える(○○ちゃんの気持ちを考えるといじめは良くない、等)『感情移入』を用いる。
それらが及ぼす影響はどのようなものか。アメリカ人は個人志向で日本人は集団志向という一種のステレオタイプ形成に少なからず関係してくるのではないか。個の違いを前提・尊重するアメリカでは、対人において主に言語を用いて意思の疎通を行うのが当たり前で、日本では上記の感情移入能力が長けているため以心伝心や阿吽の呼吸、つまり前提を共有しているため言語に頼る事が相対的に小さい。

以上が本書のまとめとして、
日本語自体に主眼を置いた森田良行著『日本人の発想、日本語の表現』では、元来日本語には高い場面依存の特性(高コンテクスト)を持っているとし、話者を客体化しない表現として、必然話者依存の語りとなり、忖度しなければならない
(例えば、『ここはどこ?』に対応する英語は『Where am I?』と、
いちいち『私』と言わなくてはならない)。
そう考えると、人間形成は環境に支配されるというよりも寧ろ言語に支配されていると言った方が的を射ているような気がします。そしてそう考えるなら、使用言語によって既に限界が規定されているとも言えます……もちろん拡大解釈ですが。
総じて、まぁ、まぁ面白いです(笑)

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2011年09月07日

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