あらすじ
お腹に棒がささった状態から生還した小夜子は、幽霊が見えるようになってしまった。バーに行ったら、カウンターの端に髪の長い女の人がいる。取り壊し寸前のアパートの前を通ると、二階の角部屋でにこにこしている細く小さい女の人がいる。喪った恋人。元通りにならない頭と体。戻ってこない自分の魂。それでも、小夜子は生き続ける。涙あふれる書き下ろし小説。
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Posted by ブクログ
事故に遭い大怪我をし、恋人も失い絶望に思えたけど、それでもありのまま今を受け入れて生きていく上で感じること、むしろ事故があって死にかけたからこそ深く感じられる生きていることの有り難みを教えてくれるお話でした。
普通に考えればどん底に落ちてしまいそうな話だけど、それでも生きていくことを諦めなければ確かにある幸せ、喜び、そういうものに出会えるんだと勇気づけてくれました。
苦しみを超えた先にある、初めて見える世界って本当に確かにあるんだろうなと希望をもらえました。
Posted by ブクログ
もしかしたら生と死の境目は思っているよりも曖昧なものなのかもしれない
そんな感覚になってしまうほど
見えないもの、この世ではない場所での体験が自然に、そして色鮮やかに描かれていたのが印象的だった
恋人の死と自分自身も生死をさまよう経験を経て
そんな自分が好きだと、今の自分の全てを肯定している強さが美しくて
私のことまで肯定してくれているような、そんなあたたかさに体全体が包まれた
「新しく始められる人生の準備をして力をためている感じも好き。ここがなくなったら、そのときの自分はなんとかする、その自分を信じられる感じも好き。」
↑楽観的なのに芯の強さを感じるこの文章がたまらなくすき
Posted by ブクログ
これぞ私の敬愛する吉本ばななの作品なんだよなあ。作品の中で、劇的な何かが起こるわけではない(今回珍しく恋人が亡くなるところから始まるというのはあるかも)。だけど、感情の動き方とか、物事の捉え方とか、日常的なやりとりとか、そういうものがすべて物凄く美しく、少しも悲しくないように表現されてる。悲しくないのに美しくて泣きたくなる。
最近自分自身のプライベートで、とても近い人の病気が分かったということもあって、この本で描かれてることに納得したというか、納得したいなと思った。
そしてあとがきでこの本を書かれたきっかけを知ってまた泣いてしまった。本当に、こういう出来事はすごく身近にあるということを、私たちは普段忘れて生きていたり、敢えて考えないように生きていて、それに向き合うのも向き合わないのも生きるということなんだよね。