【感想・ネタバレ】海の帝国 アジアをどう考えるかのレビュー

あらすじ

「海のアジア」、それは外に広がる、交易ネットワークで結ばれたアジアだ。その中心は中国、英国、日本と移ったが、海で結ばれた有機的なシステムとして機能してきた。世界秩序が変貌しつつある今、日本はこのシステムとどうかかわっていくべきか。二世紀にわたる立体的歴史景観のなかにアジアを捉え、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイを比較史的に考察する。第一回読売・吉野作造賞受賞。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

東南アジアの国家の成り立ちから20世紀末のアジア通貨危機を経た現在(執筆時)までの流れを考察した本。とても面白かった。もとは中央公論連載ということで、読みやすかった。しかし、著者自身の研究と他の研究もベースにして、時代の流れに沿って整然とまとめられている。

自分にとってこの本の魅力は、ぼんやり知っていた歴史の流れに、納得のいく原因の説明と、(西洋本位の歴史観により隠されていた)意味が明らかにされたことにある。なんとなくモヤモヤしていたところが明確になったと目が覚める気がした。

各時代ごとにインドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシアなどの違いと原因をきちんと説明している点がさらに良い点であった。東南アジア十把一絡げみたいな説明ではない。

従来は著者の言う通り、東南アジアの専門家など存在せず、一国の専門家が東南アジア専門家と名乗っているだけだったので、一国ずつの歴史しか読めなかった。本書のように概観することは学術書では難しく、入門書ではツッコミが足りないことが多いので、この本に出会って本当に良かった。

本書の出版より四半世紀たっているので、東南アジアの事情も研究の状況も大きく変わっているだろう。
新しい良書に出会いたい。

以下、我流解釈によるメモ。(本書に書かれたままではない)
・イギリス流民族分断によるコントロール手法:さまざまな人が中国、インド、アラブ、ボルネオ、セレベスその他から来ている。オランダ語を話せない混血オランダ子女も。まったく〇〇人という自覚のない人々は、上からの国家形成によって〇〇人の枠に分けられた。例えばシンガポールで民族ごとに住む区画を決められ、移動させられた。これにより民族ごとの統計を取ることが可能になり、格差が目に見えるようになった。もともとなかったマレー人というカテゴリが規定され、これがマレー人優遇政策の始まりとなっていく。
・中国人は苦力も多いが長く土着して繁栄する者、ヤクザのようなネットワークを持ち本国と太く繋がっている者もいる。英国がこの地で儲かるシステムは主に中国人のアヘン取引に依っていた。中国系の人々がいなければ成り立たなかったようである。マレー人はアヘンを売られることで搾取されていた。
・英国とオランダによる東南アジア支配は日本の占領により解体された。
・各国が独立したあとの政治は「開発独裁」であった。実際に覇権を握っていたのは米国である。日本は二番手として援助資金を注入し、開発独裁を支えた。国民の国民としての意識は低く、民主主義は正常に機能しない。統治する側の身内びいきや腐敗により国民の期待を集めることもない。
・米国は留学生を招きテクノクラートに育てて政府に入れた。留学は自分たちと思考方法・価値観を同じくする人間を作るのに大変有効である。
・アメリカ主義。アメリカナイズは文化だけでなく政治も握る。

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2024年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
「海のアジア」、それは外に広がる、交易ネットワークで結ばれたアジアだ。
その中心は中国、英国、日本と移ったが、海で結ばれた有機的なシステムとして機能してきた。
世界秩序が変貌しつつある今、日本はこのシステムとどうかかわっていくべきか。
二世紀にわたる立体的歴史景観のなかにアジアを捉え、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイを比較史的に考察する。
第一回読売・吉野作造賞受賞。

[ 目次 ]
第1章 ラッフルズの夢
第2章 ブギス人の海
第3章 よちよち歩きのリヴァイアサン
第4章 複合社会の形成
第5章 文明化の論理
第6章 新しい帝国秩序
第7章 上からの国民国家建設
第8章 アジアをどう考えるか

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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2011年04月03日

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