あらすじ
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「兄さん、あの署名、――あれはどう云う意味。自分の名前を記せばいゝのに」。緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏織。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は兄の隠れ処を探して川を遡っていく。
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Posted by ブクログ
再………読。この時期にぴったりの一冊です。しかし久し振りに読んでみて【カンパネルラ】は仲間を探して死に引き摺り込む、幽霊としか見られなくなっていました。がっくり。これを読むと、銀木犀も読みたくなるね!
Posted by ブクログ
硝子の小魚の役割がよく分からなかった。銀木犀が夏織を鳥かごのように抱いていたシーンが頭に残った。柊一が手を伸ばしても、夏織の青白い手のみが残ったのが不思議。何故、手だけが残った?柊一が来るずっと前から、少しずつ少しずつ、夏織はカンパネルラ(=銀木犀?)に取り込まれていってしまっていたような気がした。一体化とは少し違うかな?麻薬に依存するような、一方的な感じ。神隠しのような、幻想的で怖いところがあった。
Posted by ブクログ
約20年ぶりに再読。
長野まゆみ作品を読むこと自体が約15年ぶりくらい。昔ファンでした。
いやぁ耽美ですね!
懐かしいというか、当時は登場人物達に萌えながら読んでいたのだけど、やっぱり久しぶりに読んでも、きょうだいのつれない感じに萌えますね(笑)。
あと自然風景の描写がさすが緻密で美しいのだが、しばらくこの世界から離れていた私には情景を想像するのが難しかったです。当時の私は理解できていたのだろうか。
簡単なあらすじ。
夏、祖父の家で療養している兄・夏織を訪れた弟・柊一。冷たい態度の兄に焦がれる柊一は、お土産の硝子の小魚を渡そうにも渡せない。
常に眠っているイメージの祖父に読み聞かせを兄と交替ですることになった柊一は、本にはさまれた兄が描いた絵を見つける。署名にはなぜか「カンパネルラ」。
兄が午後から川をボートで漕いでどこかへ行くのを気にした柊一は、兄の秘密の隠れ処であろう場所を見つける。
と同時に、兄の描いた絵が変化していく……。
なぜ、カンパネルラと署名したのか?絵にはどんな秘密が隠されているのか? と謎を追いつつ読み進められたのが楽しかった反面、明確に謎が解明されないまま終わりました。
だいたい耽美、幻想的な作風というのは、ストーリーではなく世界観に耽溺するものなので、何がどうなったとハッキリ解明するのも野暮なんですが。
たぶん、夏織は、みんな大好きカンパネルラ(銀河鉄道の夜)その人だったか、もしくは、カンパネルラに惹かれて連れ去られた結果カンパネルラ的存在になったか。つまり、柊一が祖父の家を訪れた時点であの世の人だった、もしくは死後まもない状態だったか。
要するに、兄が天上へ旅立とうとする時の柊一の心情をファンタジックに描いたのがこの作品なのかな。祖父も生きてんだかよくわからない存在だし、河畔の風景も柊一の心の中の風景なのか……、
とか解説しちゃうとなんか、やはり野暮ったくなってしまいましたね。
幻想は幻想のままが良いのですね。
最後は柊一も兄の後を追っちゃうのかな? カンパネルラに呼ばれて、三途の川を渡るのか渡らないのか。
またいろいろと再読したいな〜と思うけど作品数が多いので読破するにはかなりかかりそう。
Posted by ブクログ
夏なので夏っぽい長野まゆみ作品を再読しようキャンペーンそのさん。これも10年ぶり。
これの後に『銀木犀』なんかを読むとごっちゃになる。
緑と透き通った水と、そこに溶けてしまいそうな兄と、(もうすでに溶けてるかもしれない祖父と)謎の少年がいる話。色合いが澄んでてきれいで涼しくなるよ。
柊一が誰かとコミュニケーション取ってる感じがしないのよねこの話。『銀木犀』もそんな印象があったけど(読んだのは10年くらい前やけど)たったひとりで動いてる感じがする。もちろん兄とやりとりしてる描写あるんやけど、顔も見てない憶えてられないていうのはものすごい夢の中感。
カンパネルラは、後書きによると「誰にとっても自由であり、特定されることを拒む少年の名を、描くことのできない少年の代名詞として拝借した」んだそうだ。
そういう存在と、兄との境界が分からんようになったのね。しかも、それがこれまで冷たい、でも心を通わせたい兄に向けて欲しいと思っていた顔と重なっている。
匂いに誘われて植物にくわれる話、萩尾望都にもあったよね。
ところで、後書きの改訂前銀河鉄道の夜の構成がごそっと変わってるという話結構衝撃やぞ。
Posted by ブクログ
耽美だなぁ。とひたすらに思う。それは文章がそうさせるだけでなくて文字列の並びや空白、踊る反復記号やフォントにもそう見せられている気がする。
或る夏の兄弟の物語だけれども、そこにはただの普通の兄弟でない緊張感と期待と異世界の空気が漂う。
最初の場面で既に読者も柊一もこの現世から離れて違う場所へ取り込まれる。そうしてから柊一はひたすらに兄・夏織を捉えようと自分の世界に見出そうとする。
Posted by ブクログ
・12月8日に読みはじめ、10日に読み終えました。
・長野まゆみのつめたくつれない少年、妖しい少年、翻弄される少年…… うれしい。柊一と一緒に夏織を探している気分になった。
・硝子の魚を夏織に渡せていたら、夏織のことを繋ぎ止められていたのかなとかなんとなく思う。夏織の真意は語られないままだったので、全然わかんないけど。夏織も柊一もカンパネルラに手を引かれたのか翻弄されたのか……
・最後に追っていた背中が「兄さん」から「少年」に変わったところ、よかったな。顔も曖昧で存在も危うくなっていた夏織が、ついにほどけてしまった、そんな感覚。
・「文藝」2001年夏号のインタビューを読んでみたら、「木のうろ」ではなく、「木が密になっているところにちょうど人ひとり入れるというもの」とあった。『カンパネルラ』のことではなく『銀木犀』のことっぽいんだけど、どちらも双子のような作品と言っているので同じように思っても良いのかな? 宿り木や冬虫夏草のようなイメージ、とあって、宿り木の少年なんて耽美すぎる…… と思う。木に取り込まれてしまったとか、そういう雰囲気でなんとなく把握していたものが「宿り木」とかしっかりしたことばで言われると、なんかインモラルな感触を覚えてしまうな……
・初期の長野まゆみは耽美に振り切ってるなと思った。書式も相まって…… でも生と死の境目にいるような少年はずっと出てきてるよな~…… 続きなのか、似たような感じのやつなのか、『銀木犀』という作品があることを知ったので、なんとか手に入れたい。新刊書店じゃあまり売ってないんだよなこのへんのは……