あらすじ
東京都墨田区Y町。つまみ簪(かんざし)職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが――。弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居し、ひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!
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Posted by ブクログ
*東京都墨田区Y町。弟子の徹平と賑やかに暮らすつまみ簪職人源。妻子と別居しひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良い幼馴染コンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚! *
昭和の人情あり、卓越したユーモアあり、テンポも内容も文句なし面白いです。
それに加えて、どうにもならない他人の心の機微はそのままに、無理に収束させないところがいい。
こんな風な距離感で人と関われたら…と思わずにはいられない、心が温かくなる素敵な一冊。
Posted by ブクログ
仲が良かったりすぐにケンカしたりの源二郎と国政。こんな良い友人がいたら、老後も退屈はしないだろうなと羨ましく思いました。なんだかんだで心が通じあっている二人を見ているととても心地よいです。
家族を蔑ろにして愛想を尽かされた国政ですが、昭和の時代はそれが当たり前だったのかも?最後は奥さんと話ができて、ハッピーエンドでした。
Posted by ブクログ
目次
・政と源
・幼なじみ無線
・象を見た日
・花も嵐も
・平成無責任男
・Y町の永遠
『三匹のおっさん』に続いて、またおっさんもの。
けれど悪をやっつけて痛快な気持ちになるのは最初だけ。
元銀行員の国政は、妻に出ていかれて一人暮らし。
どう考えても自分に落ち度はないはずなのに、なぜ妻も娘たちも自分から離れていくのかわからない。
誠実に勤勉に勤め上げた銀行時代の人間関係も、73歳ともなればもう残ってはいない。
死んだら何一つ残らないだろう自分の人生に、何か意味はあったのだろうか、と思うこの頃。
国政の幼馴染み、つまみかんざし職人の源は、物事を深く考えずやりたい放題。
愛妻に死なれ独り暮らしだが、慕ってくれる弟子がいて、その彼女とも仲が良く、近所の人たちともうまくやっている。
そこんところが国政にはちょっと面白くない。
そんな彼らの日常を、ふたりの掛け合いの妙でクスッと笑わせながら、夫婦のあり方を考えさせる話だった。
もしかすると作者の思うテーマは別だったのかもしれない。
でも、政と奥さんの掛け違ってしまった思いにことのほか私は考えさせられたのだ。
仕事にかまけて家庭を顧みない夫。
作中にそうとは明記されていないけれど、男はいざという時に出ていけばいいんだという甘えの中で、家族の中に出ていくタイミングを逸してしまった。
残念ながらこれはよくある話だと思う。
だけど政の奥さんは、5年前に「娘のところに行ってきます」と行ったきり帰ってこないのだ。
政は、奥さんが出て行ったことにもしばらく気づかないくらい自然に。
うじうじ思い悩んだり、源たちの楽しそうな様子に僻んだりしながらも、面子が邪魔をして奥さんに向かい合うこともできない。
電話もない、孫の七五三についての案内もない、印刷しただけの年賀状が送られてくるだけの5年。
50年も共に暮らしてきて、夫婦の楽しい思い出が奥さんにはなかったのだろうか。
泣いて恨みを伝えるほどの気持ももはや残っていないのだろうか。
奥さんの気持を慮りながら読んだ。
だから、本当ならもっと、源の破天荒な行動や髪の色について楽しむべきところだったのだけれど。
いや、結構笑いながら読んでたんですけどね。
でも、源と奥さんの夫婦のあり方、徹平とマミのラブラブっぷりと比べて、政夫婦のあり方にやきもきし過ぎました。
ただ、別居=夫婦の破綻ではないと思うし、政夫婦は実はこれからなのでは、っていう感じに受け取りましたよ。
年をとっても、悩みは尽きないなあ。
Posted by ブクログ
面白かったです。
御年73歳、合わせて146歳の老人、政と源コンビ。
肩が凝らず、楽しく読めました。
特にいいなと思ったのは別居している妻になんとか結婚式のお願いをしようとする、政の手紙です。
自分が幸せになってほしいと思う人はとても少ない、しかし、その中の一人が君であることは、自分の幸せだ、と。
稚拙な表現になってしまいますが、とても素敵な手紙だと思います。
奥さんとの別居は解消されず、よりが戻ることはありませんでしたが、爽快なエンディングでした。