あらすじ
本質を抉りだす思考のセンス!
『ストーリーとしての競争戦略』の原点がここにある。
──そもそも本書は普通の意味での「書評書」ではない。
書評という形式に仮託して、経営や戦略について
僕が大切だと考えることを全力全開で主張するという内容になっている。
ものごとの本質を抉り出すような本、僕の思考に大きな影響を与えた本を厳選し、
それらとの対話を通じて僕が受けた衝撃や知的興奮、発見や洞察を
読者の方々にお伝えしたい。
僕の個人的なセンスなり趣味嗜好に引きずられた話なので、
好みや体質に合わない方もいるだろう。
その辺、ご満足いただけるかどうかはお約束しかねる。
しかし、本書を読んでも「すぐに役立つビジネス・スキル」が
身につかないということだけはあらかじめお約束しておきたい。(「まえがき」より)
読んでは考え、考えては読む。
本との対話に明け暮れた挙句の果てに立ち上る、極私的普遍の世界。
楠木建の思考のセンスとスタイルが凝縮された1冊。
特別付録・ロングインタビュー「僕の読書スタイル」、付録・「読書録」付き。
【目次】
■序章:時空間縦横無尽の疑似体験
『ストーリーとしての競争戦略』 楠木建著
■第1章:疾走するセンス
『元祖テレビ屋大奮戦!』 井原高忠著
■第2章:当然ですけど。当たり前ですけど」
『一勝九敗』 柳井正著
■第3章:持続的競争優位の最強論理
『「バカな」と「なるほど」』 吉原英樹著
■第4章:日本の「持ち味」を再考する
『日本の半導体40年』 菊池誠著
■第5章:情報は少なめに、注意はたっぷりと
『スパークする思考』 内田和成著
■第6章:「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の戦略思考
『最終戦争論』 石原莞爾著
■第7章:経営人材を創る経営
『「日本の経営」を創る』 三枝匡、伊丹敬之著
■第8章:暴走するセンス
『おそめ』 石井妙子著
■第9章:殿堂入りの戦略ストーリー
『Hot Pepper ミラクル・ストーリー』 平尾勇司著
■第10章:身も蓋もないがキレがある
『ストラテジストにさよならを』 広木隆著
■第11章:並列から直列へ
『レコーディング・ダイエット 決定版』 岡田斗司夫著
■第12章:俺の目を見ろ、何にも言うな
『プロフェッショナルマネジャー』 ハロルド・ジェニーン著
■第13章:過剰に強烈な経営者との脳内対話
『成功はゴミ箱の中に』 レイ・クロック著
■第14章:普遍にして不変の骨法
『映画はやくざなり』 笠原和夫著
…他、全21章
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Posted by ブクログ
きっかけ
興味のある戦略×本の紹介となっていて次の読書の参考にもなるなと思って読んだ本
内容
経営戦略を得意とする著者がその目線で見た千差万別の本の紹介?説明をしている
感想
読み始めはボリュームが多く全然読み進まないと思っていたが、内容が軒並み面白くて寝る前の読書の楽しみにまでなっていた。
戦略とはいいつつも、概要の説明のために著者の趣味や体型や本の読み方など人柄も知れて、それこそ本文中にあるトリップ(著者との対話や追体験)に入り込めて読みながら読書の楽しさを再認識することができた。
特に読みたいなと思ったのは「直球勝負の会社」と「一勝九敗」、どちらも日本の起業家の本だけどその他にも紹介されてる本の幅が多く、タイトル確認するために目次見直しただけでもこれも読んでみたいな〜!ってワクワクした。
あとロングインタビューにあった「読書の合間に読書をする」という概念がやったことあったけど、何故できたのか何がどういう仕組みだったのかを言語化してくれてて会得したって感じがした。
Posted by ブクログ
本書は 楠木建の前作「ストーリーとしての競争戦略」の内容を書評で具体化するというコンセプトです。文章はゴツゴツしているけれども、内容はとても良かったです。
本人が面白がっていること。自分で心底面白くなければ、人がついてくるわけがない。ただし、誰もが喜ぶということは、本当に喜ぶ人は誰もいないのと同じこと。優秀な人というのは面白がる才能の持ち主だ。面白がる才能は人間の能力の本質のど真ん中といってもよい。時間をかけてでもそうした才能を開発できるかどうか、ここに本質的な分かれ目がある。自分が好きなこと、面白いと思うことを仕事にする。面白いからのめりこめる。普通の人にはできないような努力を投入できる。好きこそものの上手なれで優れた成果が生まれる。だから世の中と人の役に立つ、やりがいを感じる、ますます仕事が面白くなる。
自分にとって切実なものは何か、理屈抜きの自分の血の騒ぎは何なのか、そういう自問自答が戦略ストーリーの起点にあり、終点になければならない。自分にとって切実なもの、それが戦略の原点であり、頂点である。
自分でよくわかっていることしか書いていないということ。中途半端にしか理解していないことは書いていない。
情報の豊かさは注意の貧困をつくる。情報は、集めるな・整理するな・覚えるな。情報のインプットを増やしていけば、自然とアウトプットが豊かになるということは絶対にない。
物事の順番にこだわる。
勉強の王道読書。読書はコストパフォーマンスが最強。もう現代社会の奇跡といっていい。現代社会の到達した豊かさは読書に象徴されている。
勉強の面白さは、ひとえに知識の質に関係している。上質な知識とは何か。それは論理。論理化されていればことさらに新しい知識を外から取り入れなくても、自分の中にある知識が知識を生むという好循環が起きる。
知的活動とは、ようするに抽象と具体の把握だと僕は考えている。抽象と具体の往復の幅広さと頻度とスピードを指していることが多いと思う。具体をいったん抽象化して、抽象化によって本質をつかみそこから得られた洞察を再び具体的なモノなり活動に反映していく。
長所と短所はまったく同じもの(その人の個性)。長所を伸ばして、短所を直すという考え方は、そもそもありえないと思っています
人間として最上の美徳は素直さであること。実績や経歴や能力よりも素直さ。
深い洞察からくる信念に根差した哲学があれば思考と行動がぶれない。だから意思決定も早くなる。自分の持ち場で、一所懸命に生きることがいちばん自然な形。こちらがブレなければ相手が勝手にブレてくれる。
どんな仕事であれまずセンスありき。自分のセンスをつかみ、芸風を意識的に育て、それにフィットするように仕事をすることは決定的に重要だ。スタイルが決めて。芸風はただ一つ。仕事でプロとして生きていくことは、そもそも自分の芸風と心中するということだ。
Posted by ブクログ
書評集、と見せかけて実は戦略論の本。ケーススタディ的な感覚で読むと面白く読める。著者の読書に対するこだわりが垣間見えると同時に、自分がいかに読書が足りないかを痛感させられる。
Posted by ブクログ
読書は、経営のセンスを磨き、戦略ストーリーを構想するための筋トレであり、走り込みである。即効性はない。しかし、じわじわ効いてくる。20
日本の持ち味とは。菊池が言うところのアメリカの持ち味は、大きな対象を機能に分化して、それぞれに専門家を充てて、大所高所で計画を立てたうえで実行して事後的に統合するというやり方。日本では、全員が全体を意識して仕事をする。私たちはこれを顧客に提供しますというアウトプットに基軸を置いたコミットメントが自然と前面に出てくること、これはいまも失われていない、日本の持ち味ではないか。60
各科目の平均点が高いというのと綜合力があるというのは、全く別物。経営にはスキルではなく、センスが不可欠で、言い換えれば「因果律のデーターベース」が豊富である事。柳井さんのいう、一つの経験を抽象化して論理レベルで捉える事と同様である。このセンスを磨くには、スモールイズビューティフル。創って作って売るという、開発生産販売を一気通貫で任せるほかない。100
伊藤元重東大教授の話。英語で仕事は三つある。labor、work、play。野球選手をworkerではなく、playerと呼ぶのは、そのためだ。1080
人間の熟成は生活ルーティンの錬成にあるというのが持論。464
読書において大切なのはトリップすること。一つは、書かれている舞台、年代、状況に自分が生きているような感覚を持つこと。もう一つは、対話トリップ。対談に自分が三人目、四人目として呼ばれているような感覚を持つ。474
Posted by ブクログ
田舎の商売で成功した酒屋が、江戸に出ようとした。しかし江戸の商売はそんなに甘いものではない。鴻池、池田、伊丹など老舗の酒屋とは勝負にならない。男はあれよあれよともち金をすって、落ちぶれてしばった。男が江戸にでてきたのは、田舎と比べて市場が大きく、お客さんの懐が豊で魅力的な市場にみえたからだ。 市場の規模と成長率だけ考えて参入すると痛い目にあう。
どこか、インドやベトナムに出ようとしている日本企業に通じるものがある。
Posted by ブクログ
間違いなく、今年最も刺激的だった一冊のひとつ。
様々なジャンルの名著を下敷きに、戦略と経営についての本質を読み解いている。繰り返し主張される「スキルとセンスの違い」、「抽象と具体との行ったり来たりの中で見出す論理」などなど。どの話をとっても、365日脳裏に刻み付けておきたい話ばかり。
個人的には、楠木先生の本の中で最も勉強になった。御馳走さまでした。
Posted by ブクログ
相変わらずの楠木節炸裂といったところでしょうか。著者の作品を読むのは3冊目、ようやく気がつきました。芸風が合うんだなと。
携帯電話の契約手続きの超煩雑さという、供給側視点サービスへの不満とった部分だけでなく、理論(セオリー)よりも論理(ロジック)を好み、学問的な部分よりも実際の思考探求を好む事。それはスキルとセンスを分けて考えた場合のセンスに大きく依存する。さらに、スキルを身に付けましょう、とフォーカスされがちな昨今は、センスの議論があまりに少ない事。そして成功した経営者や著名人、歴史上の人物にはやはりスキルもセンスも両方優れていたわけで。
私はHow To本が溢れる書店の一角だ大嫌いなのだが、まあそういう事ですね。読書とは何か?と友人に聞かれ、人の人生に出会う事だと答えていた20代前半の私であるが、著者の読書の中では、同じストーリーかそこには流れている(=トリップ)と感じ、嬉しくなった次第。
ちなみに、宣教師が報告した日本人の長所と短所を内容を読んだとき、目頭が熱くなる想いが・・・。日本人として、当然ですけど。
Posted by ブクログ
様々な書籍を通じて著者が感じたことを綴った本
一見、経営と関係のない本を題材に経営に関するエッセンスを抽出過程が非情に面白く、思考プロセスの追体験が心地よい
自分が本を読む際に、具体的な内容の理解だけでなく、その核となるメッセージを一段昇華させる参考になる
Posted by ブクログ
内容は忘れましたが、「仕事としてのインプットなら、アウトプットを前提としましょう。ただ読むだけなら、趣味です」って感じの主張。情報量が多いと注意が散漫になるから、情報収集の量とアウトプットの質は反比例する。
「評価は相手が決めること」というのも印象的。
Posted by ブクログ
スキルではなくセンス。まさにその通りで、読書を軸に論理的な文脈を探るということも納得。門戸を閉ざさずに学ぶということが大切。研究に対するスタンスも好感が持てる。確かに社会に対するインパクトをみすえて社会の役に立つことをするのが社会科学分野の研究に求められること。
Posted by ブクログ
自分の読書のスタイルとか感想がいかにチープかと思い知らされる。たぶん読書をしている限り自分でも読んだ本から何かを感じたり考えさせられたり関心が深まっていることは確実にあるとは思うけど、それを言葉にする能力に圧倒的な差があることを突きつけられる。しかし言語化能力の差はつまりは感じる力とか考える力の差なのかとも思う。
でもそんなことは抜きにしても、やっぱり読書はとてつもなく有意義だということが強く共感できて、自分なりに読むことを続けていこうというモチベーションが上がったというか、読書が好きでよかったと思った。
読書の効果を大きくするためにも、読んだ本について書くことをしていかないとなとも思った。
Posted by ブクログ
6章の石原莞爾についての考察が特に良かった。石原はナポレオンとフリードリヒ大王を思考の「極」として捉え自らの立ち位置、ひいては大日本帝国の立ち位置を模索する。ヘーゲルの弁証法やポーターのマトリクス分析等を思わせる石原の発想と行動力に感動。
Posted by ブクログ
何冊もの本を読み説いている。ところどころ関心が薄い章は飛ばしながらだったが面白かった。ストーリーとしての競争戦略はまだ読んでいなかったが、この後読もうと思う。
Posted by ブクログ
0を1にするのがセンス
1を作りあげるのがスキル
なのかなと思う。戦略を作る能力はセンス。そんな話を書評と共に語るのがこの本なのかなという理解です。書評なのか、著者の独り言なのか、よく分からないところもありますが、まあ面白いです。インタビューで運動嫌いとか、インドア派とかのくだりが超共感出来た。
その他気になったところ。
>根っからの興行屋の井原は 、参謀本部では力が発揮できない 。もちろん管理職としても客観的には有能だっただろうが 、少なくとも本人は向いていないと感じていた 。
現場から離れたら力が発揮出来ないと自分で判断して、管理職に抜擢された後に辞めたという話。ピーターの法則に逆らう動きが面白い。
>リ ーダ ーとはようするに 「スト ーリ ーを語る人 」だ 、と平尾さんは言い切る 。
ストーリー=ビジョンの話なのかなと思う。
>知的活動とは 、ようするに 「抽象と具体の振幅 」だと僕は考えている 。
抽象はセンス、具体はスキルではないでしょうか。
>早く帰って仕事以外の好きなことをやりたいものだから 、なるべく早く終わるように 、一つひとつの仕事について 「この仕事の本筋は何か 。どうやったらきちんと早く終わるのか 」をまず考える 。考えてから手をつける 。そうこうしているうちに 、 「会社の仕事というのは 、すべて単純で合理的なものである 」という事実に出口さんは気づく 。
プロセス全体をマニュアル化するのではなく、この本筋のみをまとめるのが良いのかなと思う。
>もし 「市場価値を高める 」という理由でスキルアップを目指すのなら 、今市場で必要とされているスキルよりも 、自分の芸風についてもっと真剣に考えたほうがいい 。
芸風=本能的な執着ってことみたいですが、人や周りがどうこうよりも、やっぱり自分が何したいか、どうなりたいかが重要ってことですよね。
Posted by ブクログ
・ストーリーとしての競争戦略
・元祖テレビ屋大奮戦
・一勝九敗
・バカなとなるほど
模倣障壁
・日本の半導体40年
mentaltemperature
ソニーのトランジスタラジオ
・スパークする思考
・最終戦争論
・日本の経営をつくる
アーリーウィン
・おそめ
・HotPepperミラクルストーリー
・ストラテジストにさよならを
・レコーディングダイエット
・プロフェッショナルマネジャー
・成功はゴミ箱の中に
・映画はヤクザなり
・市場と企業組織
SECIモデル:流れを経営する
イノベーターのジレンマ
非合理の合理性
取引コスト(限定合理性、機会主義、複雑性、少数性、雰囲気、技術的分離可能性)
・生産システムの進化論
・日本永代蔵
・10宅論
・直球勝負の会社
・クアトロラガッツィ
・日本の喜劇人
Posted by ブクログ
○引用
「私は、可能な限り仕事本来の目的だけを考えようと努めました。それに、どんな小さな仕事であっても、純粋にその仕事の目的だけを考えて工夫すれば、達成感があり、とても楽しいということもわかりました。」
「川の流れに身を任せて淡々と生きているように見えて、江口さんのように素晴らしい見識と人格を持った人がこの世の中にはまだまだたくさんいる、ということだ」
「自己の芸風を確立するえでは、誰もが注目する成功事例の存在は時として障害となる。成功の巨大さゆえに、その背後にあるストーリーの時間的な奥行きを無視して、表面をなぞりたくなる誘惑に駆られる。見える部分だけ真似をすれば、自身の芸風に破綻をきたす。」
「人間の成熟は生活ルーティンの錬成にある」
「知識や対象そのものよりも、その背後にある論理にむしろ関心がある」
「世の中に生きている人間が織りなしているロジックみないなものを、追っていくのが好き」
Posted by ブクログ
本の紹介を通じて、
著者の考え方と紹介された本の考え方が
両方得られて、興味深くよんだ
しかも、文体が読みやすく
話を聞いているようにすらすら入ってきた
著者は、
知的活動を「抽象と具体の往復」
と考えているが、そう考えてこの本を
読むと、納得することが多々あった
特に、隈研吾さんの10宅論についての
書評がすばらしい
著者自身が、「抽象と具体の往復」を
しながら隈氏のすごさの本質を見抜いて
いるところが、特に印象に残った
柳井氏の「当然ですけど、当たり前ですけど」と、出口氏の「当たり前大作戦」も、
頭の良い人ほど、
シンプルな考え方をされていることが
よくわかり、興味深かった
Posted by ブクログ
・誰でもいいので、まずは自分の周囲のひとでセンスがよさそうな人をよく見る。そして見破る。「見破る」というのは、その背後にある論理をつかむということだ。
→著者曰く、経営は「女にもてる」と同じようなセンスであり、それぞれの方法は個性的なものであって、資格のように学んで取得できるものではない。
多数の著書からその個性と論理を抽出していて、とても面白い。
―元祖テレビ屋大奮戦! 井原高忠
・ここにも彼の戦略家としてのスタンスがみてとれる。「自分が丸ごと全部を動かせるという感覚が戦略を構想するリーダーには不可欠だ。戦略家は常に「全体」の「綜合」をする人でなければならない。
・早くスタジオに入れと言われたタレントが、入ってみたら10分もぼーっと待たされているような状況がしばしばある。「今VTRの頭出しが流れています」とか、「あと何分です」という情報がリアルタイムでわかれば、そこにいる全員が自分がなにをすべきか分かる。小道具が、次に草履を揃えなきゃとか、刀を二本用意しとかなきゃ、といった具合に、それぞれの持ち場で判断して自律的に動ける。
戦略ストーリーとは全体の「動き」「流れ」についての構想である。分業は仕方ないにしても、戦略の実行局面では「分業しているけれども分断されていない状態」を保つ。ここにリーダーの本領がある。サブ・コンからトークバックを全開にして全員に指示を飛ばすというスタイルにはまことに味がある。理想的なリーダーの構えだ。
―一勝九敗 柳井正
・話が具体的な案件になると、具体のレベルで思考がひたすら横滑りする人が多いものだが、柳井さんにはそうしたことがない。どんなに具体的な問題であっても、柳井さんは必ず原理原則の抽象レベルにまで問題を引き上げ、ことの本質を突き詰める。そのうえでもう一度具体的な問題に降りてきて、意見や判断を述べる。急降下爆撃だ。
柳井さんの思考は目の前で起こっている具体的な物事と抽象的な原理原則の体系と常時いったりきたりしている。この具体と抽象の振幅の幅がとんでもなく大きい。振幅の頻度が高く、脳内往復のスピードがきわめて速い。
戦略ストーリーを構築する経営者の能力は、どれだけ大きな幅で、どれだけ高頻度で、どれだけ早いスピードで具体と抽象を行き来できるかで決まる。
・柳井さんの議論のスタイルを観察していると、口癖のように「当然ですけど」という言葉が頻発する。たとえば「われわれの商売は売場でお客様に商品を買ってもらわなければ何も始まらない。だから、つくることよりも売ることのほうが何倍も大切になる。当然ですけど」という調子である。場合によってはその後に「当たり前ですけど」と続いて念押しする。「商売は売場で完結しなければならない。あらゆる仕事が最高の売り場をつくるということに直結していなければならない。当然ですけど。当たり前ですけど」。
→一勝九敗は有名な著なのでどうかと思ったら、著者が柳井さんと一緒に仕事をした実例から切り取られていて新たな発見が多かった。特にその「23条の経営理念」はとても当たり前のことなのだが、「わかる人には万能薬、わからない人にはただの水」で、例えば第一条は「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」なのだが、柳井さんはこれについて何時間でも「つまりこういうことである」という具体論を話すことができるそうだ。
―『バカな』と『なるほど』 吉原英樹
・いつぞやも僕の仕事場にわざわざいらして、唐突に「キミはこういうところがダメだ。このまま行くとダメになる」と割と本質的な批判をして、すーっと帰ってしまった。
・馬車を何台つなげても、蒸気機関車にならない。―シュンペーター
―スパークする思考 内田和成
・内田さん自身は、常に20くらいの引き出しを持っているのだという。引き出しにはそれぞれのテーマがあり、テーマはときどき入れ替わる。20ある「脳内引き出し」にはそれぞれ見出しがついている。これが内田さんの「注意」のフィルターになっている。このフィルターをもって情報のなかに身をおいていると、引っかかる情報は自然と引っかかって引き出しに仕分けされる。引っかからない情報はさしあたって自分には意味のない情報だからどうでもいい。無視するに限る。
―最終戦争論 石原莞爾
・石原という人が面白いのは、何かを考えるときに、必ずそれが「何ではないか」を考えているということだ。
・もしも石原莞爾が失脚せず、戦争指導していたらどうなったのか。石原を失脚させた東条英機は、石原よりはるかに格下であり、「担当者」の器量しかない人物だった。冷徹なリアリズムと歴史から抽出された骨太のロジックを併せ持った石原であれば、あのタイミングでは開戦しなかっただろう。開戦を余儀なくされても、機をとらえてすぐに引いただろう。いずれにしても、多くの人が言っているように、東条が石原だったら、歴史は大きく変わっていたはずである。
ただし、それで彼の戦略ストーリーどおりに事が運び、予測したとおりに1970年ぐらいに世界最終戦争が起きていたら、それはそれで最悪ではある。
―『日本の経営』を創る 三枝匡
・経営人材は「育てられない」。だから「育つ」土壌を耕す。
―Hot Pepper ミラクルストーリー 平尾勇司
・ホットペッパーの本質は「特定の狭い地域に限定された消費情報を、今までにない形で流通させ、その地域の消費を喚起する」ことにあると定義された。ひいては「地元の消費を活性化し、地域を元気にする」。これがホットペッパーの目的となった。言葉としては素っ気ないが、「狭域情報ビジネス」は大義をとらえた志の高いコンセプトであった。
面白いことに、このコンセプトはそれまでのリクルートの「勝利の方程式」のことごとく逆をいくものだった。
・「綜合」というとすぐに「シナジー」とか「組み合わせ」という言葉が出てきがちだ。しかし、ストーリーという戦略思考の真髄は、組み合わせよりも「順列」にある。物事の時間的な順番に焦点を合わせるからこそ、因果論理が明確になり、戦略に「動き」が出てくる。「流れ」を持ったストーリーになる。
・僕がもっとも感銘を受けたのは、平尾さんが構想したストーリーがその実行にかかわる人々の気持ちに火をつけ、人々を実行に向けて自然とやる気にさせるものになっているということだ。
―映画はやくざなり 笠原和夫
・データを頭に叩き込むと、「コンセプト」と「テーマ」が一層リアリティを帯び、深みを増してくる。しかし、だからといって、調査や資料の読み込みがコンセプトづくりに先行してはならない。先にあるべきはあくまでも本質を荒括りにするコンセプトとテーマでなくてはならない。
僕が尊敬する経営者の一人に日本マクドナルドの原田泳幸さんがいる。原田さんがよく言う言葉に「リサーチから始まる戦略はモノにならない」というのがある。
・笠原は、「起・承・転・結」のそれぞれの区分のなかで、山場を「序・破・急」のリズムで刻んでいくことを心がけていた。
・この本の最後で「だからといって、骨法などに捉われて、自分の『切実なもの』を衰弱させてはならない」と笠原はクギを刺している。いちばん大切なのは「体の内側から盛り上がってくる熱気と、そして心の奥底に沈んでいる黒い錘りである」。
―市場と企業組織 O・E・ウィリアムソン
・経済取引のガバナンスには二つのメカニズムがある。一つが「市場」、もう一つが「組織」だ。だからタイトルが『市場と企業組織』になっている。市場の反対は組織で、組織の反対が市場だというのがウィリアムソンの考え方だ。
・「満足を呼び起こすような交換関係」といった「雰囲気」は、市場メカニズムでは十分に扱えない。「1リットルいくらで買います」といった具合に血液を必要なときに必要なだけ市場から吸い上げるシステムは理にかなっていないのである。
こうした「雰囲気」にまつわる議論は、本書の中では付随的にしかなされていない。しかし、ここでウィリアムソンがぼんやりとモデルの中に入れている「雰囲気」こそが、僕はこれからの組織のよりどころではないかと考えている。
…ようするに、「濃い組織でなければ、組織として存在する意味がない」というのが僕の仮説だ。なぜ市場がパワーを持つこの時代に「会社」をやっているのか。この問いに明確に答えられる組織でなければ市場メカニズムに侵食されて、会社としての存在理由を失ってしまう。
・初対面で人を判断できないのは底の浅い人間だけである。―オスカー・ワイルド
Posted by ブクログ
貪るように消費する読書の自分は、こういう風に考えながら本を読んでなかったので目からウロコ。まあノンフィクションばかりだから考える論理はあまりないのだけれど。
紹介されてた本をいくつか読んでみて私はどう考えるか試してみたい。
Posted by ブクログ
戦略と経営について、22冊のジャンルの異なる本(建築や芸についてなども)から解き明かしている。非常に濃い内容だった。本題とは異なる箇所でハッとさせられる考え方が多かった。本を読むモチベーションも上がる本。
■印象に残った言葉
・「「やくざ映画のライターという仮面をかぶってやってきた。最初は、生活のために引き受けただけだった」と、笠原(和夫)は名言している。その一方で、「本当に面白いものを書くために、自分が何かしら乗っかれるものを、探す必要があった」。」
・個々の「モノ」の意味が、「モノ」の内側から一意的に決定されるのではなく、「モノ」の置かれた「場所」(すなわち「モノ」の外側)によって決定されている有様を記述すること。そして「モノ」の行う象徴作用が「場所」に深く依存している様相を解き明かすこと。これが本書(「10宅論」)の主題である。
・グローバル化は相手のある話だ。常にこちらから出ていく先の国や市場や人々がいる。自分たちの都合だけで完結できる話ではない。…考えてみれば、鎖国体制の崩壊と開国以来、明治維新を経て現在に至るまで、日本は「グローバル化される」側にあった。
・理論(セオリー)じゃなくて論理(ロジック)を考えるのが僕(著者 楠木建)の仕事だと心得ている。論理というのは因果関係についての洞察。一方の理論とは再現可能で一般性が高い因果関係についての法則を意味している。
Posted by ブクログ
本をいかに自らの思考とリンクさせ、想像力をもって読めるか?
楠木氏はそのセンスをすごく感じられる。
「ストーリーとしての競争戦略」といった読者を引きづり込むような書籍を書くためには大量の読書とそれを自らのスタイルにて消化するセンスが必要であることを感じた次第。
Posted by ブクログ
具体と抽象。センスとスキル。
自分の興味関心と離れた章は読みにくかったけど、この2つのキーワードは今の自分には引っ掛かった。
そして巻末のインタビューが面白かった!論理に触れるのが好きと仰っていて、まさにそんな本だった。
本を重量級、中量級、軽量級で分けて並行して読むのは私もやるなあ。
読みたい本が増えたので、これから読んでいくのが楽しみ!
Posted by ブクログ
書評が本になるというのも面白いですね。
しかも著者が好き勝手に書いているという。。。
いくつか良い内容がありますが一つだけ代表して抜粋。
長所と短所は全く同じもの。
長所を伸ばして短所を直すという考え方はそもそもありえないと思っています。
無邪気にそう考えている人は、トレードオフというものが理解できていないのです。
人はすべて、三角形や四角形であり、長所を伸ばして短所を直そうとすれば、
三角形や四角形の中に収まるちいさな円になってしまうだけではありませんか。
(「直球勝負の会社」出口治明)
Posted by ブクログ
抽象化と具体化
バカなる
完全分業と一貫型の違い
歴史に学ぶ
直列型のシナリオ
冷たい経営
豪放磊落
自分の色
学びを一言で綴っていくとそう言うこと。
プロフェッショナルマネージャーとレイクロックの自伝は読んでみなくてはと思う。
Posted by ブクログ
戦略はセンス
センスを磨くは、人を見破る。
人を見破るとは、事実の本質を見極める。なぜそうなっているのかを突き詰める
ミスミの社長の話が面白かった。
創って作って売る。一気通貫で型の業務に携われることにやはり、感謝した。
担当者では、なく経営者。
事業を進める上であらゆることが起きてくる。
ある機能レベルではうまくいってても、全体から
見たらよくないことがある。全体像が見えていて、指導できる立場にいられるということは、事業を進める上で起きうる文脈を様々体験できる機会だとも捉えられる。
Posted by ブクログ
紹介された22冊の中で、読んだことがある本が1冊だけ。指向性が違うのだろうな、とは覚悟していた。だが本に被せて自分の言いたいことを言う、あるいは言いたいこと、考えたいことを見つける、ということが、本書の愉しさでもあろうし、僕もただのべつまくなし流れよみをするのではなく、考えないとイカンのかなあと少し弱気になるのであった。だが、巻末インタビューでもう一回いつもの自分に戻る。やっぱ脳内だよな…。