【感想・ネタバレ】異常に非ずのレビュー

あらすじ

昭和54年大阪、猟銃を持って銀行に侵入し、四人を殺害して立て籠もった花川清史は香川からヘリで駆け付けた母の説得を拒絶し、射殺された。事件解決後、新聞記者は犯人の生涯を掘り起こし、母は問い直し、愛人は振り返る。『ホテルローヤル』『家族じまい』などで親子、愛憎を描いてきた著者がその究極に迫る長篇小説。

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Posted by ブクログ

直木賞受賞作「ホテルローヤル」を読んで、文章は上手いが文体と湿った行間は肌にあわない感じがして敬遠していたが、梅川昭美の三菱銀行人質事件が題材なら話は別。絶対に面白そうだと思ったので拝読し、やはり期待を裏切らない傑作だった。梅川本人を描くために、悲惨な家庭環境と、母と元カノの関係性と梅川との関わり方を、如何にもな桜木ウェット感で見事に描写している。また大阪で1強の読売新聞社会部に一矢報いるかたちでの毎日新聞社会部の奮闘を、梅川と同い年の北海道出身記者の全く違う生い立ちでありながら、団塊世代特有の閉塞感の体感を通しての視点で、デスクに鍛えれながら読み解いていくことで梅川の人生に迫る。事件そのものではなく、事件背景を時代と生育環境と女性関係性から深く考察している。桜木氏に一番あった題材だと思った。できれば読書前に、こちらもノンフィクションの傑作「破滅::梅川昭美の三十年」を読んでおくと理解が深まる。

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2026年07月25日

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桜木市の小説はいつもなぜかせつない風が吹いている今回の作品は何か希望の持てる作品であったような気がする。今まで私が読んだ彼女の作品の中では、星5つ

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2026年07月21日

Posted by ブクログ

久しぶりの桜木作品。
発売日のサイン会で桜木紫乃先生にお会いできた。
少しだけお話できる時間をとってくださった。
わたしは緊張しすぎて上手く話せず、大好きな作品「ブルース」の影山博人に惚れました。といきなり言った。それでも先生は優しく、「いつもだらしない男ばかり書いてたから、たまにはいい男を書いてみたかったのよ」とおっしゃった。またあんな過激なものが好きなのねとも。おだやかで気さくな方だった。
異常に非ず、、淡々と語られる犯罪に至るまでの日々。良いことが一つもない人生を生きた親子の哀しみなのか寂しさなのか諦めか、何とも言えない空気が全編にわたって感じられる。すべてをなくし何もない男は、大きな事を成し遂げるために5人も殺さなければならなかったのか。わたしも播磨町の交差点に立ち、思いを馳せてみたいと思う。

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2026年07月12日

Posted by ブクログ

1979年1月、大阪の三菱銀行の支店に男が侵入し、強盗を試みた末に警官2人と行員2人を猟銃で射殺して立てこもる事件が起きた。犯人の梅川昭美(30)は42時間の籠城の後、警察に射殺された。日本犯罪史上に残る極めて重大な事件だった。
この事件を題材にした作家の桜木紫乃さんの最新作「異常に非(あら)ず」が新潮社から4月に刊行された。
 桜木さんはかつて事件を取材した元毎日新聞記者との話が、本書を書くきっかけになったという。毎日新聞は事件後、梅川の生い立ちから籠城、射殺までを追った連載記事「破滅」を載せた。その連載をもとに全文をあらたに書き下ろした「破滅 梅川昭美の三十年」(毎日新聞大阪社会部編、1979年、晩聲社)が出版されている。
 私は「異常に非ず」をより深く理解するためには、桜木さんが参考文献に挙げたこの本を読む必要があると感じ、ネットで古本を手に入れて読んだ。
 第1部「破滅-梅川昭美の三十年」と第2部「密室-梅川昭美の四十二時間」で構成する。毎日新聞は梅川の犯罪を異常な人間の異常な行為で片付けるのでなく、犯罪が個人の暗い部分に根ざし、時代と社会のゆがみを反映するものとして、梅川の30年と、その30年が最後の42時間に凝縮されている、と考えたとしている。
 同書は、梅川の人生と事件の全体像を知る、まさに新聞社の力を結集した大変な力作であり、資料的な価値も高い。梅川は死亡し本人は何も語らない中で、その心の闇に挑んだ。今読んでも全く古びておらず、逆に新鮮さすら覚える。
 梅川がどのような人物で、なぜ凶行に至ったのか。「異常な犯罪者」で終わらせるのではなく、梅川と周囲の人間の心の深層に、小説の形で迫ったのが、桜木さんの「異常に非ず」である。
 梅川がモデルの花川清史、花川の母のカヨ、愛人だった亜紀、毎報新聞のベテラン記者の近藤と若手の海原を主な登場人物に設定。特に花川とカヨの母子関係を基軸に据え、花川と亜紀の男女関係、花川の犯行動機を追う新聞記者の迷いや執着などを、小説的な想像力と創造力を駆使して物語に結晶させた。それぞれが語る会話の構築力は実に巧みで素晴らしい。
 両書で鍵を握るのが、梅川が残した自分を語る言葉である。
<オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや>
 「破滅 梅川昭美の三十年」も「異常に非ず」も、この言葉の深い意味を探り当てるために書かれたともいえるだろう。
 桜木さんは最近のあるインタビューで、こう答えている。
 <罪自体は断罪されるものだし、誰かに憎まれて当然のことですが、小説は断罪するものでも、裁くための道具でもない。ジャーナリストは丹念に取材して「実」を積み上げ、真相にたどり着こうとする。小説家は「こうかもしれない」という「虚」を積み上げた先に何があるのかを確かめに物語へ入ってゆく。積み上げた「虚」と「実」が、似たような形をしていればいいなといつも思うんです>
 「虚」と「実」の相克と共存。
 「異常に非ず」を、梅川の事件を題材にしつつ犯罪者や周囲の人物の“心という謎”に迫る物語とリードで紹介した山陽新聞文化面の記事(4月30日付)にはこうある。
<小説とは人の道を説く道具ではない。読者が「共感」できなくても構わない。「このようにしか生きられなかったという人がいるんです。そういう人を書いていきたい>
 梅川が書かせたこれらの2冊が、事件から半世紀近くを経て、私に新たな読書体験をもたらしてくれた。

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2026年07月11日

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「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや。」
実際に起きた昭和54年の三菱銀行人質事件をモチーフとした小説。

射殺された犯人の生い立ちを取材する新聞記者たち。四国の実母、前の愛人。
同世代の記者が自分と同じような生い立ち、時代背景からオーバーラップしていく犯人の人生。事件そのものより、犯人の周りの人物の描写がほとんど。

「あいつは異常やない。事件の芽になるもんを突き止めなかったら、ブンヤの看板が泣くで」
骨のある取材をする新聞記者がまだ存在した時代への壮大なオマージュ。

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2026年07月08日

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ネタバレ

昭和54年の銀行立てこもり事件をモチーフにした作品。凶悪な犯人の男に焦点を当てつつ、その母親と、男の元交際相手の女の人生をたんねんにつづったフィクションだ。四十路でうまれた念願の男児がどんどん粗暴に、荒れていくさまをどうしようもなくなすがままにせざるを得なかった母親。男は重大な犯罪をおかした後に親元をはなれた。大阪へ出て女に会う。母親、女の人生を狂わせながら破滅する男。男の振る舞いにときに目をそむけたくなる。著者の筆致、関西弁の巧みさでぐいぐい読ませる。舞台回しは記者たち。いい味を出していた。

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2026年06月22日

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さすが直木賞作家 うまい!の一言 随所に散りばめられる心に沁みる感情表現 そう来たか! 読みながら 筋書きを追いながら ついメモをしたくなる箇所あり
社会の底辺に生きる人々たち どうやっても這い上がれないと悟った時 人はどう生きるのだろうか 深く考えさせられた本だ

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2026年06月07日

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ネタバレ

1979年「三菱銀行人質事件」主犯の花川清史、当時30歳。母カヨは73歳、戦前生まれ身売りされる時代に育った事で体は丈夫だが無学、と繰り返す。花川清史と暮らしていた亜紀はカヨをちっさいおかあさんと慕う。二人とも暴力ヒモ男から縁を切れない共通点を持つから、だけではない結びつきを感じた。事件も、カヨの人生も、亜紀の人生も、ブンヤの近藤、清史と同い年の海原将志も。誰一人幸せな人がいない本を書くには、桜木紫乃以外にはいない。今回の作品はずっしりキツイ読書時間だったがさすが!の素晴らしい作品。破滅-梅川昭美の三十年も読む予定。

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2026年05月29日

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 銀行人質立て籠り事件の詳細が描かれているものと思っていたが、事件そのものについては全くと言っていいほど触れられておらず、犯人、その母、その愛人、事件の背景を追う記者達とその家族が複合的かつ丹念に描かれた力作。
 章立てがなされていないのは、若干読みにくい。

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2026年05月21日

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読み終わったあとでこれが実際に起こった事件をモチーフにしていると知った。
事件自体よりも、清史の生きにくさがすごく痛々しかった。遅くに生み目の中に入れても痛くないほど可愛がった母親の苦悩や、8年一緒に過ごした亜紀の追い詰められた感じが、読後もどんよりと頭の中に残る。

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2026年05月20日

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実際に起きた三菱銀行人質事件の犯人梅川昭美を題材にしているので、小説というよりも脚色あるノンフィクションの趣のある小説だった。

「他人の痛みに無頓着で、いま自分がどう見えるかばかり気にしている」という花川清史を表す言葉が犯人像として印象に強く残る。
直接的に犯人を描かず、母親と愛人から犯人清史の渇望や焦燥感を浮かび上がらせ、それぞれに息詰まった厳しさに逃げ道を失わせる。

桜木紫乃作品としてはかなりハードな内容ではあるが、犯罪者の母親と愛人という女性の描き方が秀逸である。
また、新聞記者の近藤も良かった。

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2026年05月20日

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文中の近藤こと近藤勝重さん。懐かしい名前が巻末の著書の献辞にあった。いまは無い名物番組TBSラジオ「荒川強啓デイ・キァッチ!」のコメンテーターや川柳選者として大好きな人物であった。あの近藤さんの大阪時代がいきいきと活写されていて、主題と合わせて感慨深く読んだ。

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2026年05月16日

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義弟は良い人だろー。悪いひととは書かれてないけど。人殺しのお葬式仕切ってくれただけでも偉いぞ。感想そこ?

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2026年06月12日

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実話をベースにした461頁の長編を3日掛けてじっくり読み終えた。

昭和54年の『三菱銀行人質事件』を元に描かれた本作。

銀行に立て籠もった犯人は当時30歳。
4人を殺害し説得に駆けつけた母との対話を拒んだまま射殺された男は、なぜ凶行へと向かったのか。

母と元恋人、二人の証言から少しずつ浮かび上がるのは、無学な母、絶えずつきまとう貧困、逃れようのない生育環境の影。

時代のせいだけでは片づけられないが、その歪みはあまりに深い。

理不尽を憎み続けた末に破滅へ向かった彼の人生を追いかけても、胸に残るのはただ虚しさだけだった。

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2026年06月09日

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事件そのものではなく
ひとりの男を
凶悪犯罪へ駆り立てたものは
いったい何だったのか
その背景を地道にたどっていく
新聞記者たちが静かに熱かった。
そして
時代や社会や生まれなど
自分ではどうしようもないことを
言い訳にしなければ
生きられなかった犯人とその母親の
いたたまれなさ、苛立ち、怒り
他人に己を見せられない弱さ…
そんなものを感じた。

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2026年06月09日

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タイトルだけ見たらどんな本なのか全く分からず。この事件を知らなかったが、実際に起きた事件がもとになっているようだ。花川という男とその母の生涯。主人公はむしろ母親かな。こういう史実に基づいた話は好きなので面白かったです。分厚いです、一週間毎晩少しずつ読んで読み終えました。

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2026年05月30日

Posted by ブクログ

昭和54年、銀行で起こった立てこもり事件で4人を殺したのち射殺された男は、自分は異常ではないという言葉を残した。犯人死亡によりその動機も何もわからない事件を掘り下げる取材を行う新聞記者の海原は、犯人の花川と同い年。その世代独特の生きづらさに共感しつつも、なぜ花川が凶行に至ったのかを追求するため、花川の半生を深掘りしていく。重厚な読み心地の作品です。
実際にあった事件を題材にした物語ですが、大きな事件であるにもかかわらず事件自体についてはほぼ語られていません。あくまでも主題は花川の人生であり、しかし彼の動機がいったい何だったのかということも謎のまま。読者の想像に委ねられている印象が強いです。
戦後ベビーブームで、世の中は平和に向かってはいたものの競争が激しかった時代。貧しい家庭環境と怠惰な父、無学の母に怒りを募らせていく花川の人生には、しかし希望がまったくなかったわけでもなく、本当になぜこうなるに至ったのかは理解できないし、また理解したくない気もしました。ただし彼に「異常」のレッテルを貼って終わりにする気にもなりません。何かのきっかけで人はこのように転落してしまう可能性があるのだろうか、という恐ろしさも感じます。

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2026年05月28日

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1979年、大阪で起きた「三菱銀行人質事件」。犯人は行員・警察官の4人を射殺し、裸にした女子行員を人間バリケードにして42時間立てこもった末、突入した機動隊によって射殺されます。本作は、事件後、犯人像を明らかにすべく新聞社の記者たちが、犯人の生い立ちから犯行に至るまでを調査する姿を描いたフィクションです。
なお、本書のタイトル『異常に非ず』は、犯人が語った「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」という言葉に由来し、作中に登場するノンフィクション本の題名でもあります(実際に出版された書名は『破滅―梅川照美の三十年』)。
どうもこのタイトルに引きずられ、本作の主人公は犯人・花川清史(梅川照美の作中名)であり、その犯行に至る経緯を描いた小説のように思い込んでしまったのですが、そうした視点で読むと、出来はそれほどでもないように感じられます。新聞記者たちによって暴かれる清史像は、よくあるヒモ体質で、かつ「いつかはでかいことを」と夢想するチンピラ的な人物像にとどまり、犯行に至る必然性のようなものもさほど浮かび上がってきません。そのため、「なんだかなあ」といった、どこかぼんやりした印象が残ります。
しかし考えてみれば、それは『破滅』の主題であり、本作はむしろ、犯人・清史、その母カヨ、愛人の亜紀、そして彼らを追う二人の新聞記者(担当の海原将志と上司の近藤)による群像劇なのでしょう。そうした視点で読むと、作品には確かな迫力が感じられます。
極貧の中に生まれ、器量も悪く、読み書きも満足にできないながら働き続けるカヨ。そしてカヨを実の母のように慕う亜紀。調査の過程で亜紀に思いを寄せる近藤、そして単身赴任で別居中の妻との関係に悩む海原将志。それぞれが存在感を持ち、物語を形作っていきます。全体にどこか粘りつくような人間関係が描かれ、その濃密さが作品に独特の迫力を与えています。こうした世界を描かせると、桜木紫乃はやはり強い作家です。
冒頭にも触れたように、舞台は大阪、広島(清史の故郷で、私の隣市でもあり土地勘があります)、香川(カヨが暮らす清史の父の故郷)です。昨年の『情熱』に続き北海道以外が主な舞台となっており、どうやら桜木は本格的に「脱・北海道路線」に向かっているようです(なお、海原将志は北海道出身で、妻は現在も北海道にいるという設定ですが)。

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2026年05月26日

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大変な労作で面白かった。

あの異常犯罪の犯人の「真実」の物語ではない。もちろんノンフィクションを下敷きにしたフィクションなので「真実」には辿り着けない(辿り着かない)のは当然ではあるが、主人公は犯人の母と、情人と、取材する記者たち。
社会に媚びる生き方しかできなかった人間が社会に復讐をする、という大きな骨組みの上にに、母の情、愛人としての情、そしてその情にこそ真実が隠れていると迫る記者の思いが物語として語られる。
息も継がせぬ勢いで様々にゴツい情念が次から次へと現れて、それを書き切った筆者の凄さに感服するとともに、作者の世界観を顕現させるのに「良いネタ」を見つけたなあ、と思ったのが正直なところだった。

星五つをつけられないのは、犯人の動機は掘り下げられているが、犯行に至る最後の理由が全く書かれていないところ。まあ描けないでしょうね。
1に至る部分は推測できても、1に飛躍するところはこの人には書けないな、と思った。
個人的には、正解なんぞハナから求めていないだけに、作家なりの飛躍の部分が欲しかった。

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2026年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 桜木紫乃氏、「ホテルローヤル」「蛇行する月」を読み、筆力のある作家、と思っていました。さて税込2,750円の長編、どんな本に仕上がっているのか…

 題材は、昭和54年、1979年に起きた、銀行人質立てこもり事件。当時私は高校生か…この事件、テレビ中継や新聞報道で内容を知ったはず。Focus、Fridayが創刊するのは1980年以降で当時はまだ存在していない。

 本書では事件そのものにほとんど触れない。焦点は、犯人の花川清史の母、内縁の妻、の目線を主に、なぜこの男が犯行に至ったのかをゆっくりと描き出す。

 作中、描き出す側としてこの事件のノンフィクションをまとめる記者とその上司も重要な登場人物でこの作品に軸を通す存在として描かれる。犯人花川の心理を周囲の人間を描くことで浮かび上がらせる…のだが、犯人花川の実母、内縁の妻、記者、その上司、と視点が散ってしまった感がある。私の読みが浅いのか。

 作品最後段で、花川の母が骨壺をあけ、頭の骨を出すシーン。骨に銃撃された穴が開いているのを観るところ。事件後も内縁の妻が花川の母に何度か会いに行くところなど、著者の筆力を感じるシーン多数。

 こんな長編、いつの間に?と思って奥付をみたら、週刊新潮連載だった。週刊新潮、毎週読んでたのに。 

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2026年05月08日

Posted by ブクログ

世間の受け止め方と本人の思いには天と地ほどの開きが。それを関係者を深掘りして浮き彫りにできるものだろうか。
「最後の欲や見栄は納得するように死ねること」今際の際に、そんなこと考えるゆとりがあるとは思えないが。なんだか切ない。

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2026年07月26日

Posted by ブクログ

昭和54年に起きた実際の事件を題材にした長編

銀行に立て籠り5人を殺害した犯人の30年とはなんだったのか。母親や恋人との関係、当時の社会の貧富の差、貧しさからか屈折した考えや行動を取り続ける犯人自身の人生を追いかけ記事にしていく。
暗く、重い。結末もスッキリとはならないが、生きる事に我慢と苦悩を強いられてきた母と娘の間に生まれた絆だけが唯一の救いの場面だった様に感じる。

章立てがないので、時代や場面の切替わりを整理しながら読み進めねばならなかったが、文体自体は読みやすかった。

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2026年07月20日

Posted by ブクログ

昭和54年1月26日に起きた三菱銀行立てこもり事件を題材にした作品である。とはいうものの、事件そのものを直接描くのではなく、この事件を深く掘り下げた記事を書いた新聞記者の目を通して描くという手法を取っている。これにより間接的に犯人像が構築され、花川清史という男の内面を窺い知ることができた。その一方で視点があちこちに飛び、本筋には関係ない描写も多くなったように思う。
検索すると『破滅 梅川昭美の三十年』(毎日新聞社会部編)という本が見つかった。献辞にある故近藤勝重氏は本書の近藤のモデルだろうか?

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2026年07月14日

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「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや。」

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1979年(昭和54年)
大阪の阪央銀行北畠支店に1月26日、猟銃を持った男が押し入り、支店長ら2人を射殺したうえ、客と行員多数を人質にして立てこもった。通報で駆け付けた警察官2人も射殺された。男は二昼夜にわたって立てこもり、香川から出てきた母親の説得にも応じない。28日午前8時41分、機動隊員が現場に突入して犯人を射殺し事件は解決する。

犯人は無職、花川清史、三十歳。

その後 人質となった行員たちの証言から、犯行の残虐さと異常さが明らかになる。しかし、花川の死亡により犯行の目的や動機は謎のままとなる。

「オレは精神異常やない」
そのひと言を残して花川は死んだ。

たった三十年で五人(花川が十五歳で強盗殺人を犯し捕まっている)の命を奪った男。

この男の三十年とは どんな人生だったのか-。

毎報新聞の遊軍記者である海原将志は、花川の短い生涯を掘り起こす記事を書くよう指示を受ける。

「あいつは異常やない。事件の芽になるもんを突き止めへんかったら、ブンヤの看板が泣くで」

花川と同世代の将志は、自身の三十年と重ね合わせながら、何が花川を犯罪者にさせたのか。花川母への取材と、過去に関係のあった人物からの証言を元に筆を執る。ドキュメント本のタイトルは『異常に非ず』。

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この作品のモチーフとなった「三菱銀行人質事件」を知らず、Wikipediaで調べました。なるほど。酷い。

人質に遺体となった行員の耳を切らせる。女性に服を脱がせ盾にする…。

小説の中では、事件の内容をここまで詳細には語られていないけど、同棲していたホステスに卑劣な暴行を繰り返していた花川も酷い男でした。

さて、花川を非道な犯罪者にした要因とは何なのか…。

わからん。

息子の説得のため呼び出された際、「郵便局へ行く」と嘘をつき、美容院で髪をセットしてくるという謎の行為に出た花川の母親のカヨは、高齢で花川を出産し とことん甘やかして育てた。

父親は女癖の悪い最低な男だった。

八年もの間 生活を共にしていたホステスの亜紀には、暴力のかぎりを尽くした果てに捨てられ自暴自棄になっていた。

親か、女か、逃れられない貧困か、劣等感か、はたまた時代のせいか…。

わからん。

わからんよ。

ただ、同じ女性として、また母親として
花川と自身の半生を語るカヨと亜紀の物語の方がズーーンと重く 興味を持って読めました。

さすが桜木紫乃さんの作品。カヨの人生ってなんて過酷なんだって…。産まれた時から底辺で生きることが決まっていたような。そんでもって 人生の終盤に犯罪者の母になるって…。

とにかく暗い!重い!そんな作品でした!!

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2026年07月10日

Posted by ブクログ

期待値を上げすぎて読んだせいか、題名の「異常に非ず」の意味の切れ味不足に思えてならない。
どこかで、うーん、やられた!と作者に思わされるところがきっとあるだろうと思いつつ読んだのだけど。

花川があまりに魅力的でないせいで、ただのおバカさんに見えてしまう。「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」という言葉が上滑りして、なんやそれ、で?と思ってしまう。
そういうことか!と腑に落ちたかったのだけどね。
この言葉が一人歩きしてる割に、中身を伴ってないと思うのだけどどうでしょう。

力作だとは思うのだけど…。

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2026年07月06日

Posted by ブクログ

昭和54年に大阪で実際に起きた「三菱銀行人質事件」をモデルにした小説。

5人が亡くなり、立てこもり中は裸にした女性行員を自らの前に置いて人間の盾にしたというなかなかショッキングな事件のことはうっすらと覚えているが、この作品は事件そのものではなくその背後にあるものを描き出す。

なぜ男はこんな事件を起こしたのか?事件の本質に迫ろうとする犯人と同年代の新聞記者、息子の説得の前に美容院へ行ったという犯人の母親、そして八年間男と共にいた元同棲相手、それぞれの目線で描かれる犯人の男の三十年の生涯。

男を犯行に駆り立てたものはなんだったのか。
「異常」という理由をつければ私たちは安心できる。だが、異常ではないところを出発点にした事実を辿る旅はどこまでも重く、不安をかき立てる。

時代の空気感や、生まれ育った環境、そんなものをひっくるめて男や母親の行動を理解しようとしていく作業。事件そのものを肯定することは決してないが、その試み自体が批判の対象になりうる中での覚悟の作品のような気もする。特に、記者が犯人と共通する部分を自らの内に見出していくあたり。

母親と元恋人目線で彼女たちの人生を通して事件を解体していく手法は、さまざまな女性の生き様を描いて来た桜木さんらしいな〜と。
そして救いのない物語の中で、母親と元恋人が情を交わしていく姿が唯一の救い。

新聞社の近藤さんも魅力的で、是非とも、ノンフィクションの方も読んでみたいです。

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2026年06月03日

Posted by ブクログ

昭和54年、大阪の銀行内で4人を殺して立てこもった事件を題材に彼を駆り立てたのは何だったのか?を当時の記者目線で、フィクションとして描いたもの。

どこまでが、実際に遭ったことなのかがあやふやになってしまったのだが、確かにその時代に事件はあり、薄っすらと覚えている。
だが、当時はまだ学生であり、四国に住んでいたせいで土地感がなかったのだが、今大阪に住んでいるとその場所がはっきりとわかるので、恐ろしくなってくる。

『破滅ー梅川昭美の三十年』毎日新聞社会部編では、ノンフィクションとして出版されているが未読である。

この小説では、銀行立て籠り犯である花川清史が、何故、このような事件を起こしたのかを語るときに、先ずはどういった生い立ちで育ったのか⁈であり、やはり母がどう影響したのか、していないのか…。

時代や環境にも左右されたのかもしれないが、それだけでこのような事件を起こすのか…
納得できる言葉もなく、過去の出来事が綴られていく。
母や一緒に住んでいた女の本音は、最後まで隠されていたように思えた。




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2026年05月12日

Posted by ブクログ

なんというか フィクションとノンフィクションがごっちゃで 何を読んでいるんだろう?というモヤモヤを抱えながら読み終えた。どの人物も救われないなぁ〜は 桜木紫乃さんなら ありだけど なんか ほんとにもやっとしたまま 終わった感じ。タバコの煙 男たちの汗 夜の女の矜持.......昭和感あふれてた。

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2026年05月09日

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