あらすじ
昭和54年大阪、猟銃を持って銀行に侵入し、四人を殺害して立て籠もった花川清史は香川からヘリで駆け付けた母の説得を拒絶し、射殺された。事件解決後、新聞記者は犯人の生涯を掘り起こし、母は問い直し、愛人は振り返る。『ホテルローヤル』『家族じまい』などで親子、愛憎を描いてきた著者がその究極に迫る長篇小説。
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Posted by ブクログ
銀行人質立て籠り事件の詳細が描かれているものと思っていたが、事件そのものについては全くと言っていいほど触れられておらず、犯人、その母、その愛人、事件の背景を追う記者達とその家族が複合的かつ丹念に描かれた力作。
章立てがなされていないのは、若干読みにくい。
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読み終わったあとでこれが実際に起こった事件をモチーフにしていると知った。
事件自体よりも、清史の生きにくさがすごく痛々しかった。遅くに生み目の中に入れても痛くないほど可愛がった母親の苦悩や、8年一緒に過ごした亜紀の追い詰められた感じが、読後もどんよりと頭の中に残る。
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実際に起きた三菱銀行人質事件の犯人梅川昭美を題材にしているので、小説というよりも脚色あるノンフィクションの趣のある小説だった。
「他人の痛みに無頓着で、いま自分がどう見えるかばかり気にしている」という花川清史を表す言葉が犯人像として印象に強く残る。
直接的に犯人を描かず、母親と愛人から犯人清史の渇望や焦燥感を浮かび上がらせ、それぞれに息詰まった厳しさに逃げ道を失わせる。
桜木紫乃作品としてはかなりハードな内容ではあるが、犯罪者の母親と愛人という女性の描き方が秀逸である。
また、新聞記者の近藤も良かった。
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文中の近藤こと近藤勝重さん。懐かしい名前が巻末の著書の献辞にあった。いまは無い名物番組TBSラジオ「荒川強啓デイ・キァッチ!」のコメンテーターや川柳選者として大好きな人物であった。あの近藤さんの大阪時代がいきいきと活写されていて、主題と合わせて感慨深く読んだ。
Posted by ブクログ
大変な労作で面白かった。
あの異常犯罪の犯人の「真実」の物語ではない。もちろんノンフィクションを下敷きにしたフィクションなので「真実」には辿り着けない(辿り着かない)のは当然ではあるが、主人公は犯人の母と、情人と、取材する記者たち。
社会に媚びる生き方しかできなかった人間が社会に復讐をする、という大きな骨組みの上にに、母の情、愛人としての情、そしてその情にこそ真実が隠れていると迫る記者の思いが物語として語られる。
息も継がせぬ勢いで様々にゴツい情念が次から次へと現れて、それを書き切った筆者の凄さに感服するとともに、作者の世界観を顕現させるのに「良いネタ」を見つけたなあ、と思ったのが正直なところだった。
星五つをつけられないのは、犯人の動機は掘り下げられているが、犯行に至る最後の理由が全く書かれていないところ。まあ描けないでしょうね。
1に至る部分は推測できても、1に飛躍するところはこの人には書けないな、と思った。
個人的には、正解なんぞハナから求めていないだけに、作家なりの飛躍の部分が欲しかった。
Posted by ブクログ
桜木紫乃氏、「ホテルローヤル」「蛇行する月」を読み、筆力のある作家、と思っていました。さて税込2,750円の長編、どんな本に仕上がっているのか…
題材は、昭和54年、1979年に起きた、銀行人質立てこもり事件。当時私は高校生か…この事件、テレビ中継や新聞報道で内容を知ったはず。Focus、Fridayが創刊するのは1980年以降で当時はまだ存在していない。
本書では事件そのものにほとんど触れない。焦点は、犯人の花川清史の母、内縁の妻、の目線を主に、なぜこの男が犯行に至ったのかをゆっくりと描き出す。
作中、描き出す側としてこの事件のノンフィクションをまとめる記者とその上司も重要な登場人物でこの作品に軸を通す存在として描かれる。犯人花川の心理を周囲の人間を描くことで浮かび上がらせる…のだが、犯人花川の実母、内縁の妻、記者、その上司、と視点が散ってしまった感がある。私の読みが浅いのか。
作品最後段で、花川の母が骨壺をあけ、頭の骨を出すシーン。骨に銃撃された穴が開いているのを観るところ。事件後も内縁の妻が花川の母に何度か会いに行くところなど、著者の筆力を感じるシーン多数。
こんな長編、いつの間に?と思って奥付をみたら、週刊新潮連載だった。週刊新潮、毎週読んでたのに。
Posted by ブクログ
昭和54年、大阪の銀行内で4人を殺して立てこもった事件を題材に彼を駆り立てたのは何だったのか?を当時の記者目線で、フィクションとして描いたもの。
どこまでが、実際に遭ったことなのかがあやふやになってしまったのだが、確かにその時代に事件はあり、薄っすらと覚えている。
だが、当時はまだ学生であり、四国に住んでいたせいで土地感がなかったのだが、今大阪に住んでいるとその場所がはっきりとわかるので、恐ろしくなってくる。
『破滅ー梅川昭美の三十年』毎日新聞社会部編では、ノンフィクションとして出版されているが未読である。
この小説では、銀行立て籠り犯である花川清史が、何故、このような事件を起こしたのかを語るときに、先ずはどういった生い立ちで育ったのか⁈であり、やはり母がどう影響したのか、していないのか…。
時代や環境にも左右されたのかもしれないが、それだけでこのような事件を起こすのか…
納得できる言葉もなく、過去の出来事が綴られていく。
母や一緒に住んでいた女の本音は、最後まで隠されていたように思えた。