あらすじ
あらかじめプログラムされた音をくりかえし送りだす自動機械のプレイヤー・ピアノさながらに、すべての生産手段が自動化され、すべての人間の運命がパンチ・カードによって決定される世界・・・・・・アメリカ文学の巨匠が、優しさに満ち、かつ醒めた視線で現代文明の行方をブラックな笑いのうちにつづった傑作処女長篇。
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Posted by ブクログ
1952年に書かれた近未来小説。
現代を言い当てているようなところだとか、
現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。
全体としてはレトロな未来ですけどね。
たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、
半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。
駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)
で人間を負かすための機械がつくられたり、
機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、
格差のある階級社会になっていたり、
21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。
内容そのものもとてもおもしろいです。
また、
AとBという対立があって、
たとえば作者はAの意見に同調しているとすれば
Aの意見をいうひとの描写やセリフはかきやすいのだろうけど、
ヴォネガットくらいになるとBの描写やセリフも卓越している。
敏腕弁護士以上に、
いろいろな立場や主張を理解してくみあげて表現する力があるよなあ、
と思いました。
この時代であっても、
機械に仕事を取って代わられないことが大事なんだよ、
という見抜きがあります。
社会に参加して役に立つ喜びややりがいは、
これからAIや機械が発達しても、
人間からむしりとられるべきではないのでしょうね。
作中にありましたが、ひとは、
二流の機械になるか、
機械の被保護者になるかの二者択一におちいるべきではないのです。
今後どういう形で機械が発達していくかわかりませんが、
そういうところは押さえないとおけませんね。
MITなんかじゃ、デジタルの次はバイオだ、と
もっと遠くを展望して未来を見透かしていたりするようですが、
いやはや、どうなることやら。
非常におもしろく読めました。
Posted by ブクログ
機械が高度に発達し、コンピュータEPICACによりIQと適性を認められた極小数の管理者と技術者が支配する未来のアメリカ。大多数の人間は職を失い、自尊心をも失いかけていた。
第三次世界大戦中に人手不足のため機械への依存が高まると、機械は飛躍的に進歩し、EPICACと呼ばれるコンピュータにより全てが決定されることとなった。この組織を作り、発展させたジョージ・プロテュース博士の息子、ポール・プロテュース博士は高い地位にあったが、このような世界を徐々に疑問に感じ始めた。ポールより出世が早かったがその地位を投げ打った旧友フィナティー、夫を出世させることにしか頭に無く、何事に関しても口出しする妻のアニータ、人生のすべてを競争だととらえ行動する部下のシェパード、そして、彼らとは別視点から、この機械に支配された世界を眺めるブラトプールの国王(シャー)と通訳のハシュドラール・ミアズマと合衆国国務省のハリヤード博士。
ポールは会社をやめ、妻のアニータと共に農業を営んで暮らすことを決意した。しかし、アニータ猛反対した。ポールはアニータと別居したあと、フィナティーが参加する幽霊シャツ党と呼ばれる機械の支配を脱し、人間の尊厳を恢復するための革命の盟主に祭り上げられた。しかし、この革命は失敗し、幽霊シャツ党の幹部が警察へ出頭するところで終わる。